披露宴

 今日はとあお得意様のカップルが結婚式を挙げるとのことで、コックの一人が式場で料理を振る舞う予定である。

 もちろん『注文』がかかった料理を、だ。

「やっぱり、過去にやらかした痴情のもつれを清算するためかな?」

 ウエイター同士が世間話で盛り上がる。

「いや、うちのコックが作るのは四人分の料理で、特別にいいメニューらしいぞ。腕によりをかけて忘れさせるとか」

「へぇ、気合い入った注文だな。ならわざわざ友人関係には出さないな」

「しかもフルコース。人一人分の記憶がすっぽりなくなってもおかしくない」

「おいおい、逆に怪しいぞ。よく店長はゴーサイン出したな」

 しかしウエイター達の心配をよそに披露宴は無事お開きとなり、夫婦となった二人は遠くへ引っ越していった。

 数年後、その夫婦がコックに改めて挨拶にやって来た。

「ありがとうございます。あれから双方の両親から無事縁が切れました」

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