すだち酒と酔っ払いの衝動買い
「じゃあすだち酒でも飲む? すだちの果汁とハチミツを加えた日本酒だから、度数低いし甘くてすっきりしてる。ロックにすると休憩ドリンクになるよ」
「ではそれをいただきますわ。このお店で日本酒なんて、珍しいですわね」
「昨日さ、酔っ払ったまま有楽町の徳島物産展に行ったらしくて。気付いたら買って帰ってた」
「覚えていませんの!?」
「とくしまバーガー食べたのは覚えてるの」
「とくしまバーガー……れんこんとかいろいろ挟みすぎて食べにくいですわよね」
「お店によって全然ちがうけど、食べやすいサイズのもあるよ。はい、すだち酒ロック」
「あら、おいしい。甘味と酸味とアルコール、どれもほどほどなのにしっかり主張してきますわ。それにかどのない、いい香り。ナツさんも一杯どうぞ」
「ありがとう、じゃこ天にすだち絞って食べようか」
「買ったのはお酒だけではなかったのですわね」
「まだまだあるよー。これはフィッシュカツっていうカレー味のすり身フライ」
「BIGカツみたいなものかと思いましたけど、高級なBIGカツみたいなものですわね。おかずというよりおやつ感ありますわ」
「甘いものは鳴門金時のスイートポテトと、うず芋」
「スイートポテトはねっちょりしておいしいですわね。うず芋ってなんですの?」
「見ての通りだけど、蜜に漬けて干した鳴門金時だよ」
「まぁ、甘いものを甘いものに漬けるなんて!」
「それでもこの和三盆の甘さには届かないけどね」
「和三盆ってお砂糖ですわよね? こんなにカラフルで型どりされていると、落雁に見えますわ。菓子折に詰めてますし」
「そのまま食べてもいいし、コーヒーに添えてもお洒落だよ。和三盆はサトウキビの砂糖で、手作業で仕上げた高級品だね」
「こんなに買ってよく無事に帰って来られましたわね。酔っ払っていたのに」
「レシートを見るに、タクシーで帰ってきたみたい。電車もある時間なのにね」
「酔っ払った時の記憶をレシートで思い出すって、切ないですわね……わたくしも自宅で通販しながら酔っ払って、痛い目を見ましたわ」
「それもわかるー。お蝶さんは何買ったの?」
「VRゲーム機ですわ。ソフトは気になっていたホラーゲームを1本だけ」
「あれね、評判いいよね。何がダメだったの?」
「VRでホラーだと、怖くて耐えられませんでしたのよ……30分でギブアップして、箱に戻しましたわね」
「わかるような、もったいないような。でもわたしはVRって苦手だな。両腕を振ると走るとか、腕を酷使するのが慣れなくて。コントローラー握ってる方が集中できる」
「わたくしは足も動きそうになりましたわ。臨場感が増した分、プレイヤーキャラと操作の動きが一致しない部分は気になりますわね……あら、ナツさんもVRゲーム機持ってましたの?」
「先週、赤坂見附の電気屋さんのデモ機で遊んだの。そういやあの日は……その後神社の縁日で一杯引っ掛けて……」
「あら? ナツさん、レシート落としましたわよ……あの、ちょっと、これ……」
「ん~? あれ、このレシート、品名に高級ラスクが書いてあるね」
「謎は全て解けましてよ! あの高級ラスクを買ったのは……」
「それは誰だい、お蝶さん!?」
「VRゲームで遊んで縁日で一杯飲んだ後、結局一杯じゃ終わらずに深酒したお方ですわ!」
「ええっ、そんなだらしない奴がいたの!?」
「あなたのことですわーっ!!」
「まぁ、そういう流れだったよね! いやぁ、お酒って怖いね、あはは」
「まったくですわ……わたくしも今夜はこの辺にしておきますの。ごちそうさまでしたわ」
「お会計だね……ありがとう。まだケーキ屋さんも開いてる時間だけど、うっかり寄らないように気を付けてね」
「余計なお世話ですわっ!?」
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