第6話 いつもの公園
※第4話と第5話が重複しておりましたので修正しました。
第4話の方をミスっております。申し訳ありません。
週末、いつもの公園でランニング後のストレッチをしていると、木崎さんとひびきちゃんに声を掛けられる。
「ゆずはちゃん!」
両手を挙げてひびきちゃんが走り寄ってくる。
その後ろをゆっくり追ってくる木崎さんは、深窓の令嬢がそのまま年を重ねた感じで、母親でSEだなんて絶対思われないだろう。
逆立ちしてもわたしはこうはなれないので羨ましさはある。
「ごめんなさい。トレーニングの邪魔をしてはいけないと思ったんですけど、ひびきが声を掛けるってきかなくて」
「暇だから体を動かしてるくらいなので、大丈夫ですよ。ひびきちゃん、こんにちは」
ひびきちゃんは遊ぼう、と手を引っ張ってくれる。
そのまま追いかけっこをした後で、ひびきちゃんを真ん中にしてベンチに座った。
「すみません、須加さん。ひびきにつき合って頂いて」
ひびきちゃんは買って貰ったジュースにご満悦で、両手で掴んでストローを吸いながら足はぶらぶらさせている。
子供を見慣れてない分、何気ない仕草でも可愛くて口元が綻んでしまう。
「楽しいので気にしないでください。体を動かすのは好きだから、苦にもならないですし」
「須加さんはいいお母さんになりそうですね」
木崎さんはそう言うけど、子供と遊ぶ体力くらいしか、わたしには自信を持てるところがない。
「いい年してですけど、結婚を考えたこともないですよ?」
「それは例の同棲していた恋人のことがあったからですか?」
飲み会でのことを木崎さんは覚えてくれていたらしい。それは否定をしておこうと首を左右に振る。
「いえ。その後に別の人に恋をして、振られたんです。でも、まだ次を積極的に考えられてないだけです」
「須加さん繊細そうですよね」
そんなことを見た目が繊細な木崎さんに言われても肩を竦めるしかない。
「結婚ってした方がいいと木崎さんは思います?」
結婚をした友人はいる。でも、身近にとなるとカウントしていいのかどうかわからない姉と真依だけで、どんなものかの想像がつかない。
「どうなんでしょう。ひびきを産んだことに後悔はないですけど、ワタシは続けられませんでしたから」
緩く笑う存在の笑みの中に、少しだけ落胆が混ざっている。
「離婚されてるんですか?」
「ご存知なかったんですね」
真依はPLだし、休暇の調整もあるので知っているのかもしれない。わたしは子供がいるというところまでしか知らなかった。
「すみません、営業のくせに把握してなくて」
「いえ、言いふらすことでもないですから。それでご迷惑をお掛けしてます」
休みが多い理由がそれで納得ができた。シングルマザーで幼子を抱えていたからなのだ。
でも木崎さんはそんな大変さも見せないから、きっと強い人なんだろう。
「そんなことないです。この前木崎さんがうちの楠元のフォローをしてくれたって聞きました。真依……一瀬さんも木崎さんがいてくれて良かったって言ってましたし、プロジェクトメンバーはいっぱい木崎さんに助けられていると思います。
だから、木崎さんも困ったことがあったら遠慮なく言ってください。プロジェクトメンバーに言い辛かったら、わたしに言ってくれてもいいですから」
その言葉に、木崎さんが笑いを見せる。笑う様すら穏やかで、人を落ち着かせるような雰囲気がある。
笑われるようなことを言っただろうか、と首を傾げると理由を話してくれる。
「一瀬さんが言った通りの人だなって思ったんです。営業なのにまっすぐで周りのために動いてくれる人だって」
真依にそんな風に思われていたなんて、ちょっと照れくさい。
「戦略立てろって、上司にはよく怒られるんですけどね」
「営業としてはそうなのかもしれませんけど、働く方からすれば居心地がいい場所で働きたいですから重要なことですよ」
「じゃあ、頑張ります」
頑張り過ぎないようにして下さいと言葉を貰って、仕事へのやる気が少し上がったのは確かだった。
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