第3話

 気づくと前の夢の世界ではなく、転生後の世界であった。

 先ほどの夢は正史だったのだろうか。

 確かめようがないが、薄々察している。


 きっと、今いる金髪男と銀髪女はそのうち俺に飽きて愛想を尽かすんだろう。なら早めに自立できるようにして自分一人で生きよう。



 

 




 ・・・・・・





 そうこうしているうちにかなりの年月が経った。


 地球で言う10歳になった。


 転生直後に思った通り、ここは魔法がある異世界らしい。

 何より一番驚いたのが「坊っちゃま?魔王様がお呼びです」っと、黒髪メイドが声をかけてきた。

 「後程向かう。」


 そう、どうやら俺が両親だと思っていたのは魔王夫婦で、金髪が魔王らしい。


 魔王。それは最近読むようになった本ではあたかも英雄のように称え褒められているが、前世の記憶が間違っていなければ勇者なんかに打ち滅ぼされるべき悪なのだろう。

 

 なんてことを考えつつ金髪の部屋の元に向かう。

 謁見の間にある玉座は基本的には来客が来た時のみでしか使わないらしい。


 「父上。失礼します」

 控えめにノックし、声を掛ける。


 「おお、入れ」

 扉を開けるとそこには書類の山に囲まれた父の姿があった。


 「それで父上、要件はなんでしょうか」

 ずっと黙ったままこちらを見ているので要件を聞く。


 「ん、ああ。いや何、なんとなく呼び出しただけだ。成人の儀式の日も近いしな。」

 金髪は子煩悩らしい。が、そんなことは心底どうでもいい。

 見てくれだけで判断するほど俺はお人好しじゃない。

 

 金髪の言った成人の儀式の日とは、後2、3日後にある俺の誕生日のことだ。

 ちょうど10歳と言うことで成人と認めるのだ。

 10歳で成人など、早い気もするが種族的に体の成長が早いので地球換算で10歳は20歳に近いほど体が大きくなっている。


 前世の両親も成人が近くなったら、喜んでくれていたのに......と、嫌な記憶も思い出してしまったので、さっさと自室に戻って布団に入り、眠る。


 葬儀の日の夢を見てからは、一度も夢を見ない。












 光陰矢の如しというがすぐに成人儀式の日になった。


 魔王城とも呼ばれる自宅はどこもお祭りモードであった。

 






 あった。そう、過去形なのである。

 

 朝早くに『勇者』が攻めてくるまでは。

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極悪魔王 林雷巣 @habitaemochi

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