第3話 見えない訪問者(後編)

玄関のチャイムを鳴らしていたのは誰なのか。

モニターにも映らない。

鳴ってすぐ玄関を開けても誰もいない。

足型も取れない。

犯人は幽霊なのか?

恵美の答えは……

「ヤモリ」

え? 俺は拍子抜けした。


「ヤツデの葉っぱみたいな跡はね、ヤモリの足型。

 足に粉を付けた状態でボタンに触ったんだと思う。

 ヤモリは吸盤でもなくネバネバでもなく、ファンデルワールス力という力で壁にくっついて登るの。

 だから、足に粉がついていても壁を登れるの。

 でね、涼介の家の周りにはコオロギがいっぱいいるでしょ?

 それを食べにヤモリがやってきた。

 玄関には常夜灯があるから虫が集まりやすい。

 ヤモリが玄関の壁を登って、足がチャイムのボタンに触れて鳴らしてしまったというわけ」


メールの着信音が鳴った。

添付された写真にはヤモリが写っている。


「今メール届いたでしょ? 写真のヤモリの足を見てみて」


画像をピンチアウトして見てみると、ヤモリの手足や腹部に白い粉が付いている。


「はい、これが犯人でした。

 でもね、ヤモリは漢字で“家守”って書くこともあるから、基本的には縁起のいい生き物よ。いろんな虫を食べてくれるし」


「……恵美ってさ、ヤモリは苦手だろ?」


「あは、バレた?」


「写真撮る時、青ざめていたからな」


「ふふふ……」


名探偵でもヤモリは苦手なんだな。


「で、チャイムを鳴らされないようにするには、どうしたらいい?」


「ヤモリは爬虫類だから、ヘビ除けのスプレーが効くよ」


なるほど。さっそく実践してみた。


それからは、無人のチャイムは鳴らなくなった。

さすがは名探偵恵美だ。



* * *



そして、月日は流れた。

俺と恵美が下校途中で一緒になるのも相変わらずだ。

恵美との会話は、たわいもないものが多い。


そんなある日の帰り道……

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