第3話 異世界とは

俺は違う国に来たのか。

それとも、夢の中だったか。


違う。

俺は、異世界に来た。


たった今、説明されていることが証明。


――・・・数分前、俺は「地球」からここへやってきた。


そのとき、落下による加速を抑えて少し俺を浮かばせてくれたのが、今俺の目の前に座っている人・・・らしい。


ずいぶんと洗練された動き。

俺でもわかる上質な服に身を包んだ、「魔術師」。


俺と同い年くらいか・・・?


俺は基本的に小学生の怪談とかも怖がっちゃうタイプだから、かなり信じちゃってる。


っていうかもしこれが夢だとしても、どうせ目覚めるだろ。

それに夢の中だったなら忘れているはずの、ソフトのことを憶えているのが今のところ、何より信じる鍵だ。


ま、とりあえず、そういうことで?


俺は自分の眉間がピキピキいうのを感じながら、魔術師さんに笑いかけた。


「で、魔術師さん。俺たちがなんでこんなに汗かいてるか、わかる?」

「・・・はぁ?」

「俺たちね、さっきまで、ホントについさっきまで、すーっっっ・・・・・・ごく、大切な、ソフトの大会やってたの。・・・あ、ソフトってわかる?」

「・・・?」


あまりにわからなそうな顔をしているので、一応きいてみる。

同じスポーツはないだろうけど。似たようなのはあるかも。

って考えてたら、魔術師さんは首を横に振った。

・・・は?

一気に感じていた怒りがなくなるのを感じる。


「じゃあ、スポーツはわかるだろ?」


「す、ぽーつ・・・って、何?」

「・・・っは、」



ここに「召喚」されたのは俺の他に、橘と桜小路がいた。

二人は今それぞれ、橘はバット、桜小路はちょうどそのときバッテ(バッティング用手袋の略)を探して持っていて、ついてきたいろいろなものについて、周囲の人々に説明をしていた。


・・・好奇心強いなぁ、こっちの人。


あの二人も大変だ。一番最初(といっても3秒くらいの差)に落ちてきた俺は代表として魔術師(俺が落ちてきたときに叫んだのはこの人だったらしい)と話しているが、二人はまわりの人たちに囲まれて出れなくなっている。


でも魔術師はあの二人を抜けださせる気はないようで、俺とだけずっと話していた。


んで、橘と桜小路もソフトについて説明してるけど・・・やっぱり俺同様、わかってもらえてないみたい。


「えーと、すぽーつって・・・なんですか?」

再度きいた魔術師さんの様子からしても、この世界にはそういう言葉自体がないらしい。


なら、他の言葉は・・・ないな。

運動?でもなんか違う。

スポーツってのは、また違うジャンルな気が・・・。


うーん・・・。



「みんなで協力して運動して、相手と闘うもの?って言えばいいのかな」

「協力、運動、たたかう。もしかして、それは相手やみんなの体に触れもの?」

「?・・・もちろん。そうじゃなくて、どうやってやるんだ」


そう言ったとたん、なぜかその魔術師はかたまった。


・・・俺なんか、まずいこと言った?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る