第2話 落ちる

4番よばんの音がして、何事かと振り向いた。


周囲は俺がボールの位置を確認したのかと思ったのか、大丈夫だぞという。


そりゃ、そうだよな。4番のたちばなはすごい奴だ。


ましてや準決勝。

並大抵の相手じゃなかった。


それだけのボールが来れば、打者バッターだって嬉しいし。



さあ、それじゃあ、踏もう。

前を向きなおした。




――ザッ。

また、音がして。


「・・・っ⁉」


今度はあたりが、一気に真っ黒になった。




なんだ?

・・・視界がきかない。


そして、なんだか・・・落ちていく。


このまま突然床があらわれでもしたら背骨が砕けるってくらいに、加速する俺。



「・・・っはぁ⁉」

何がおきている・・・?


そんなことを気にできたことに驚くくらい、俺は動転していたし、驚きすぎて逆に冷静になっていて。


きっと、誰だってそうなると思う。


たっぷり15秒くらい、その状態で落ち続けた俺の視界は。





・・・――不意に、開けた。



フワッ。


「っ?」


そして体が、浮いた。

まるで、エレベーターに乗っている時のように。


「えっ・・・」


なんだ、これ。



「っ、危なかった・・・!」

誰かが叫ぶ。


俺はトンッ、とそのまま地面に降り立った。



・・・まず、自分の姿を確認する。

さっきとかわらないユニフォームにスパイク、帽子。

手の指もちゃんと五本ずつあるし、一本抜いて見てみた髪の毛は黒色。


大丈夫。俺はなにも、変わってない。

ひとまず安心。

ほっと溜息。

これ大事。


「それより、なんだ?ここは・・・」


まわりには人、人、人。

真昼間の、野原だった。

小さなお花がいくつも咲いて・・・って。


さっきまでは動転していて気が付かなかったが・・・ここは、さっきのソフト場とは明らかに違う。



・・・俺は一体、どこに来た。

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