なんでもいいから(ちゃんとした)ソフトがしたい!!

トてら

意味のない召喚

召喚0日目

第1話 中体連準決勝

頬をなでる風が暑い。

空には雲がいくつかとあとは飛行機。


左肩には重さをじんわりと感じるバット。

捕手キャッチャーが身じろぎしたのが伝わる。

何メートルか前にはたった今、投球フォームに入った投手ピッチャー


――ああ、来た。

ついに、ここまで。


最初は体重移動。


ボールを見て。


体を使って。


そして、磨き上げられた感覚と。

走るのは、打ってから。


全てが頭をよぎる。

そう、ちゃんと・・・おぼえている。


ぐっ、と力をいれる。

バットは自然にもってくる。


あとは・・・そう、こうして、


―――バコンッ!



打つ。


――いいバウンドだ。

ちょうど狙ったところにいった。


ここをこえて、俺が一点になれば。


・・・――最高の相手と、試合ができる。





高校三年の夏。

体連、あと一点で決勝の場面。

ランナー3塁、1アウト。


俺のあとに打つのは4番、橘。


三塁まで進んだ俺は、そのまま外野の遥か外に橘のボールが落ちたのを確認して本塁ホームへ走る。


ゆっくりで、いい。

この後への期待を、踏みしめよう。


この一歩で・・・始まる。


ホームベースを踏めば、俺たちの全国大会決勝が。




――・・・その、瞬間だった。


――カンッ!


さっきの4番の、威勢の良い音がした。

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