第8話第二章 科学の力〜戦争と病

ーー 新たな人生と科学力の力


この世界に骨を埋める決意をした俺は、いくつかの組織を作ることにした。

・騎士団の新たな立ち上げと強化

・情報収集部署の立ち上げ

・防衛専門部署の立ち上げ

・商品開発と管理の部門の立ち上げ

・領地の管理部門の立ち上げ

である。

今まで基本的に俺一人でやって来たが、流石に忙しすぎるので部下に肩代わりせてもらおうと考え、教育していた子ども達の中から優秀な者を採用して配置した。

 プラントの責任者は今のままルビー達で行く、新たな騎士団はアイスを団長に編成し強化予定、領地経営は妻達を中心にスカウトして来た新たな家臣3名をその下に付けた。


商品開発は基本俺が責任者だが製造管理販売はなじみの商人に声をかけているところだ。


これからこの領地は大きく変貌し周囲に大きな影響を与えることだろう、早めに海を視察に行き船を持ってこよう。



ーー 新たな領地



海を持つ小さな領地に視察に向かった。

嫁がみんな揃っていくというので2億円で購入して来た巨大キャンピングトラックを使うことにした。これはベッドルームが4つあり10人の生活が十分にできる、メイドや侍女用のキャンピングカーも連れての魔道馬車の車列だ。


道行く姿を見た領民や通過途中に出会った商人などは驚きで声が出ないようだった。


子爵領から車で1日の距離で飛び地の領地に着いた通常の馬車なら3日かかるかな。

海に面した領地は大きく深く抉れたような入江と岩山がそれを囲むようにそそり立ち自然の要害となっていた、塩気が強いのか作物はほとんど育たないようで小舟で漁をして生活をしている領民が100人ほど居たが穀物と野菜を望んでいた、どうやら商人もあまり来ないため、食に飢えているようだ。


俺は着任挨拶がてら領民に

・麦 〜 年間に10t

・砂糖〜 年間に1t

・野菜〜 月に一人10kg

・布地〜 年間一人に10反

を約束しその場で一月分を渡すと大喜びした。さらに病人時や怪我人を治してやると拝むようにしだしたので居づらくすぐにその場を後にした。


入江に向かい、港としての改良に手をつける。今回のようなケースを考え

・ブルトーザー

・ユンボ

・クレーン

・鑿岩機

・鉄骨

・溶接機

・発電機

を準備して来た。山に穴を開けたり穴を掘るのは、魔法で出来るが俺一人では限界がある。


建設用の職人も5人ほど連れて来ているので地元の領民を育てながら建設をしてもらおう。


港になる入江は水深が深く大型船でも係留できそうだったので、3日かけて転移で船を持ち込み

・クルーザー 1隻

・漁船    5隻

・潜水艇   1艇

・中古の巡洋艦 1艘

を並べると領民どころか妻達も驚いていた。多分この世界では外海に出られる大型船がほとんでなく安全に航行する技術も機材もないからだろう。


「「「後でいいから船に乗せて」」」

皆にお願いされ頷くしかなかった。


漁師をしている領民を20人ほど漁船の操船を教えると共に、燃料である重油を取り扱う注意点なども厳しく教えた。

5日ほど妻達を乗せて領民に漁の仕方を教えると連日大漁で驚いていたが俺としては当然な結果だと思っていた。


「さあ、今日はあの真っ白いクルーザーで外海に出て遊ぶぞ」

と妻達に声かけると

「やったー。」

と喜んで船に乗り込み始めた。俺は調理人やメイド達を連れて乗船するとエンジンに火を入れ外海へ舵を切った。


クルーザーはそれまで小船しか乗ったことにない人、ましてや船さえ乗ったことにない人からすると空を飛ぶような感動を与えるものです。

「すごーい、水の上を飛ぶように走ってるよ。きゃーっ、水が・・しょっぱい。」

ミラージュがはじけています。他の妻らは船内の装備にウットリしています。

「ここは海の上のホテルだわ」

などと、そこで俺は

「ホテルなら豪華客船と言うのがあるぞ」

と言うと

「「えー、それも乗ってみたい」」

と口を揃えてねだり出した、困ったもんだ。


巡洋艦についてダイアナが

「あの船は全体的に剛鉄造よね、それにあの筒は何か怖い雰囲気がするけど」

と確信をついたことを口ずさむ。


そこで俺が

「この船は国を落とすだけの力があるんだよ」

と言うとミラージュとハートが反応する、

「国崩しの船」

と言うと?俺は、

「この船の攻撃力は海から100kmでも1000kmでも離れていても問題なく城を木っ端微塵にする力があるんだよ。」

と言うと、

「そんな・・・それじゃ逃げ場どころか、攻撃することもできず死を待つだけなんて・・・。」

と恐れ慄いていた。


「人はね、己の力の及ばぬ相手を相対したら、それ以上の力で抵抗しようと考え実現してしまう生き物なんですよ。しかしその力の差があまりにも大きいと抵抗すら考えなくなるのも人なんです。」

と言い残し俺は釣りの準備をし始めた、ハートはその言葉に何か考えている風だった。

俺は領地に残った家臣の情報担当部署に、次のものを与えその活用を考えさせていた

・通話可能距離5kmのトランシーバー

・通話可能距離30kmの携帯無線機

・通話可能距離300kmの無線基地局

・暗視メガネ

・双眼鏡

・ビデオカメラ

・集音マイク

などの製品でその活用をどう利用するか考えさせたのだ。


他の部署にも同じように

・銃火器類

・防弾防刃服

・地雷や投擲用爆弾

・スタンガン

・缶詰各種

などを渡し活用方法を考えさせたのだ。


「発達した化学は魔法の如き」

この言葉が似合うよな反応を皆がしていたのが新鮮だった。



ーー 戦車や戦闘機にヘリは、何に見えるのかな



俺はこの世界に破壊兵器を持ち込み戦乱の世にしたり強大な軍事帝国を作るつもりはない。ただ抑止力という21世紀の考え方を持ち込みこの世界で通用するのか確認したいのだ。


現代の地球では金さえあれば、紛争地域で幾らでも武器を購入することができる。恐ろしいことだがそれが現実だ。この世界の魔法は素晴らしいがそれでも現代兵器の火力には個人は全く太刀打ちできない。一部を除いて俺などは戦略核兵器並みの攻撃ができるし防御も出来るので、反乱しても問題なく鎮圧できるが、それ以外の者は無理だろう。


大きな音を立てて、空を飛ぶ戦闘機やヘリを見たらドラゴンやワイバーンと思うのだろうか、戦車なら地竜だろうか。

そう思いながら領内の格納庫に10機ほど格納していたのは誰にも内緒だ。



ーー 地下都市を建設することにしました。



核シェルターを参考に地下100mほどの地下に、1000人規模のシェルターを作ることにした。穴掘り作業は魔法で、鋼鉄に部品を下ろしては溶接し、空気や水のパイプに酸素製造機と水製造機を据えて、基本は完成。


そのシェルターを10機ほど作り間をパイプで繋ぐ、出入りはエレベーターを設置し、商業地区と住居地区を分け浴場や運動区域も作ることで約5000人が十分に生活できるシェルターが完成した。


このシェルターの存在は現在妻達以外には誰にも教えていない、これが必要になることが起こらなければいいと思いながら入り口を埋めるように隠す。



ーー 隣国で内戦が勃発、火の粉が飛んで来た


サイライト王国の南西に位置する隣国ゲシタンク王国は、ここ数年きな臭い。

数年前から国王の容態が思わしくなく、跡目争いで第一王子と第二王子さらには王弟が権力争いを演じており、先日国王が亡くなったことで歯止めが効かなくなったようだ。


海の無いゲシタンク王国は塩が取れず輸入に頼っており、ミザン王国、サイライト王国やラサール王国と交易していたが、それぞれの商人がそれぞれの後継候補に肩入れする形で、物価上昇が起こり内政は破綻寸前になっていた。


そんな時、ラサール王国が軍事侵攻を行ったのだ。

ラサール王国は食糧難に喘ぐ王国で、食糧の多くをゲシタンク王国に頼っていた。その為価格高騰は許せない事態で軍事侵攻し、第二王子の世継ぎを迫ったのだ。


ラサール王国侵攻に待ったをかけたのが第一王子押しの我がサイライト王国で、ラサール王国の目がサイライト王国に向かうのも無理からぬものだった。


軍事侵攻していたラサール王国軍は、進路を北に変えサイライト王国に越境し始めた、その場所がスミス侯爵領の西隣のケアル伯爵領で、スミス侯爵の傘下の貴族である。


ケアル伯爵から援軍要請を受けた侯爵は、直ぐに援軍を出すことにしたが、防衛するだけか反撃攻め込むのかの判断に苦慮していた。


サイライト王国でもその問題は即答できず、侯爵の判断に委ねるという曖昧さだった、そこで侯爵から要請を受けた俺が対応することにした。


丁度滑走路が完成し、戦闘機の試運転と戦車や攻撃用ヘリの効果を確かめたいというのが本音だった。


戦車5両を転移魔法で国境付近に移動し、ヘリで敵状視察すると約1万ほどの兵が越境し野営していた。俺はヘリのマイクを使い深夜野営地に乗り込むと

「ラサール王国軍につぐ、即刻退去しなければ翌朝9時に攻撃を開始する」

と繰り返し広報して帰った。


この戦争は後継者争いの代理戦争的意味合いがあり、勝った方が優位になると思われた。


翌朝、兵士らは昨夜のことにかなり動揺していたが上層部は相手にせず、侵攻続行を決め9時の時点で更なる進行を始めていた。その時空に轟音が響きワイバーンのような怪鳥がものすごい速さで通過すると行軍中の兵士の列が大きな音と共に飛び散った。


「何があったのだ、ドラゴンの攻撃か?」

口々に叫ぶも応えるものはおらずその後に、音もなく兵士が土煙と共に飛び散り出した。

「敵は見えるか!」

指揮官が物見に指示するが

「何も見えません、・・・あれは・・火を吹く地竜です、5体います。」

と伝えて来た、

「今度は地竜だと!総員退却!」

と指揮官が指示した瞬間、指揮官のいた場所は土埃と共に大きな穴に変わっていた。


死に物狂いで退避するラサール王国軍、それども執拗に地竜からの攻撃が来る、逃げ延びたのは半分もいなかったようだ。


その頃、ラサール王国王都に轟音を響かせて飛竜のような物が飛来し、王城を破壊して飛び去っていっていた。


ラサール王国国王は、サイライト王国には守護竜がいて反撃して来たと思ったのか、すぐに使者を出し和平交渉が行われ始めた。ゲシタンク王国はその情報を聞き次は我国かと恐怖し、王弟を幽閉し第一王子が即位すると、使者を出して友好条約を結んだのだった。


その後、王家とスミス侯爵から

「あれは何か」

と問われた俺は、

「召喚獣です」

と真顔で答えたのだった。




ーー 伝染病の蔓延



この世界は人が生きるのに厳しい世界と言うのは以前から話しているが、魔物や食糧事情だけではなく、病気も大きな脅威となっている。


この世界にポーションと言う怪我によく聞く薬のような物があるが病気には効かず、治療魔法師の治癒魔法に頼るか薬師の薬に頼っている。ただ何方も万能でなく高いお金を払っても治らず死んだと言う話は何処にでもある。


その理由は病気の原因を知らないためどこをどう直せばいいか魔法師が知らないことと、弱った内臓に強い薬は逆効果だからだ。


そんな世界に数年から数十年間隔で流行する病気がある、それが今流行し始めている、その症状を聞くと

「ペスト」

だと思われた。確かに地球でも世界中で流行り多くの命を何度も奪っている病気だ。俺はこれこそ科学の力が必要なことだと判断し、「抗菌薬」を大量に準備した。


俺はスミス侯爵を通じて王国に、現在流行の兆しが見える致死率の高い病の治療薬を準備しているので症状が出たものを早急に隔離して、投薬するよう進言した。


しかし、俺の存在が目障りな高位貴族らが猛反対したのだ、俺は自分の手が届く範囲に限定して治療の準備を始めた。


そしてついに病魔が近づいて来た。侯爵領の外れで隣国から逃散した農民が避難して来ていたがその中にペストに罹患した農民がいたのだ。あっという間にその集落はペストが蔓延し、助けを求めることもできない状態に陥った。その集落をたまたま旅商人が訪れ慌てて王都に引き返し報告したのだがその商人も既に発病しており、王都でのパンデミックが始まったにである。


俺は王家や俺に親しい貴族には、十分な抗菌薬を与えてその服用から患者の対応を教えていたため、罹患する者が現れても10日ほどで沈静化し始めた。


しかしそれ以外ではそうもいかない。俺の献策を嘲笑った高位貴族らの関係者が罹患し出すと領地内の患者は激増し、約半数が死亡したと報告があった。


ただ途中で俺の薬の効果に気づいた数家は、頭を下げて薬を貰い大きな被害になる前に沈静化することができ、その後は俺に頭が上がらない状況になった。


他国でも猛威を振るったペスト菌は、約2年の間猛威を振るい元々食糧不足に喘ぐラサール王国は自然に衰退して滅亡していった、同国内の死者は8割に至りほぼ無人の国となった。

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