第7話 それぞれの生きる理由と結婚

ーー それぞれの生きる理由


ー◇ー

私はドラゴーニュ族のカテーシャ。汚い闇討ちにあい奴隷として売られた。多分同族も同じような目に遭っていることだろう。この前までは復讐心だけが私を生かしていた気がしていたが、今は少し違う。

 我らドラゴーニュ族は強者が絶対と言う考え方をする一族だ。するとレベル差が100以上もあるご主人様の側にいるのは、感情的には安心感がある。

 復習を忘れた訳ではないが所詮私が・・・弱かったのだ。さらに修行をして闇討にも負けない強さを手身入れた時、私の心がどうなっているのか今は分からない。




ー◇ー

私はエルフ族の元王女。元というのはあれからかなり時間が経ったので、家族も私のことは諦めていることだろうと言う意味だ。ただ、あの裏切り者のカレンだけは許さないけど。

 私は手足を切られ、目や喉を焼かれ生きているだけの肉塊にされ生きながらえていたが、それは精霊が私を励ましてくれていたからだ。

『もう少しの辛抱よ、貴方を救う男が現れます』

という言葉だ、それを信じ今日まで生きて来た。

 あの男はこの世界の者ではないと精霊が教えるが、そんな事はどうでもいい。あの裏切り者を見つけ罰を下すまで、男の横で生きながらえてみせる。


ー◇ー

私は・・今は存在しない王国の元王女、信頼していた家臣に国王が裏切られ国から追放された、さらにその国は裏切られこの地上から消された、私はさらに裏切られ奴隷に売られ逃げようとするたびに、手足を折られ、目を潰され、顔を焼かれた。

 もう生きる気力も死ぬ力もなくなり、ただ息をしているだけの毎日だった。

 ご主人様が私の失った髪や顔そして体を元通りにするまでは、今私は過去にけりをつけ新たに生きることを決意した、この人なら王女としてさえ見ることができなかった世界を見せてくれる気がする。



ーー 新たな名前


俺は昨日購入した奴隷達に名前を付けることにした。今までの過去にけりをつけ新たな人生を歩き出すための儀式だ。


5人の女性には、髪の色と瞳の色で

・赤髪は、ルビー     17歳  火魔法

・青髪は、アクア     16歳  水魔法

・シルバーの髪は、パール 18歳  治療魔法と光魔法

・青髪で青い瞳は、スカイ 17歳  緑魔法

・赤髪で黒い瞳は、ナイト 16歳  火魔法と闇魔法

と命名した、残りの3人は

・ドラゴーニュは、アイス 50歳  レベル 150 風魔法と身体強化

・エルフは、ダイアナ   80歳  精霊魔法

・元女王は、ハート    18歳  土魔法

と。すると全員嫌がることもなくその名を口ずさみながら、膝をつくと

「「「この名を持って仕えます。」」」

と言った。これは決まった儀式なのか?俺には分からなかった。


それぞれは髪の色や瞳の色は、それぞれが持つ魔法の属性が現れたりしているようでそれにちなんだ名は、それだけでも強くなる可能性があるらしい。


3人については、生まれやレベルからして俺の側で大事な仕事を振り分けるつもりでいるが、本人達の復讐心もあることだろうからそれについても何処かで、けりをつけさせてやろう。



ーー 新しき家族?でいいのか


ハルト=レイン子爵家の領地が少しばかり広がった。隣の男爵家が誰に頼まれたか俺のプラントの破壊を試みたのだ。当然プラントや重要な物や場所には、数々の防犯機器が設置されているので、そう簡単には侵入できないがそれを知らずか数を揃えて、戦争を仕掛けてきたのだ。

 

 王国では私闘はそれぞれの当事者間で解決するものと決められており、当然賊を捕らえた俺に裁く権利があったので

「お家断絶、家財没収」

として領地を接収したのだ。

どうせ産業もない痩せた土地だったので食糧プラントを建て、貧困に喘いでいた領民をその関係の仕事に雇い、十分な給金を払うと

「今度の領主様はえらくお優しい」

と評判になっていた。お陰で寝返った元家臣らが誰の命令で襲ってきたか洗いざらい教えてくれた。


一つ良いことがあった。この新しい領地には温泉の源泉があることが分かったのだ、日本人としては成功すればやっぱり大きな風呂、それも温泉やサウナは絶対でしょう。

マッサージ機や冷蔵庫に牛乳も生ビールも準備しておこう。そうそうこの娯楽施設と言える温泉施設には、俺の別邸や宿泊施設を建てる計画で領民に新たな仕事をあてがった。その施設が出来上がるのに6ヶ月、規模からしたらかなりの短縮工期であるが魔法があるからね。


従業員として、領民と職に溢れた者や孤児などを雇いながら教育するのに同じく6ヶ月。王都で有名な料理店の弟子をスカウトして調理場を任せれば、

「こんな夢のような調理器具を扱わせてもらえるなんて」

と感激していたのは、面白かった。


そんなこんなで奴隷を購入して、1年ほど経ったがそれぞれ俺のやり方に馴染んだようで、5人は各種プラントの責任者として、3人は貴族や商人相手の付き合いや商談に力を発揮し始めた。そして警護としてアイスは片時も俺のそばを離れようとしなかった。


これら8人は俺の新しき家族のような存在となりつつあった。


もちろん奴隷用の首輪や奴隷紋はさせていない。俺が嫌になれば何処にでも行けば良いと言っているが誰も出ようとはしないのだ。これじゃ小姑が8人もいる感じがして少々うざい感じもするのだが・・・。



ーー 嫁取りの話


スミス侯爵様から呼び出しを受けた、侯爵家に向かうと妹君の王妃もいらっしゃった。

「ハルト子爵、貴方も19歳となりそろそろ嫁を貰うべきと、老婆心ながら幾人か良い家のお嬢さんを紹介にきました」

と王妃様が仰った。まあいつかそういう話もきるだろうと、考えてはいたが・・。


すると今度はスミス侯爵夫人が

「ハルト様私も親しくお付き合いのあるお家からお話を持ちかけられております。ここらへんで一人か二人の奥方を娶られた方が、何かと良いかと思いましてよ」

と。


腹を括るしかないかと思いつつ横の騎士然としたアイスを見ながら、

「確かに自分も考えるところはあります。私にも内妻というべき3人の女性がおりますが正式な妻は居りません、そこでお二人に一人ずつ良き女性をご紹介いただきたいのですが、決して断ることはありませんが条件として、私の内妻らを邪険に扱わない心の広い方を望みます。」

と答えると

「分かりました、第一夫人の正妻と第二夫人を紹介します。内妻の方々は第三夫人として一緒にお披露目しましょう。」

と王妃様が快諾してくれた、本当にこの世界に骨を埋めることになった。

と思っていたら横で

「3人の内妻!第三夫人!・・誰?・・ひょっとして・・ええ!」

と呟きが漏れるアイスが面白かった。


その後当然のように話が進み

・正妻は、ミラージュ王女

・第二夫人は、侯爵令嬢クリスティーナ

・第三夫人として、アイス、ダイアナ、ハート

が正式に決まり、3ヶ月後に式となった。


第三夫人となった3人はその旨伝えると、

アイスは、

「本当ですか?こんな無骨な女がご主人の・・妻で」

と感激し、

ダイアナは、

「私が1番であることを思い知らせてみせるわ」

と息巻いていた、

ハートは、

「もう一度、夢が現実になるなんて、一生尽くします」

と深々と頭を下げた。


俺もそこで

「過去を忘れろとは言わぬ、ただ俺との人生は面白いと思うぞ」

とプロポーズ的な言葉を言って、それぞれにネックレスを婚約指輪代わりにかけてやった。



ーー 新居は現代から持ってきました


3ヶ月度に迫った結婚に合わせて、俺は新居を建てることにした。こんな事もあろうかと日本の自宅の近くに造成地を作り、ベタ基礎の建物を何十棟か注文し建てていた。


元々の子爵邸をリホームし仕事用の屋敷に、ヨーロッパから移築した城を正妻と第二夫人用に一つずつ、現代建築の屋敷を第三夫人らに一つずつ与えた。


その後現代屋敷の過ごしやすさに、正妻と第二夫人が私達にもあれが欲しいと強請られそれぞれに与えたのは・・当然の成り行き。


ーー ミラージュ王女、クリスティーナ嬢  side


「やっと、この時が来ましたわ。」

私は親友のクリスティーナ嬢に話しかけると、

「そうよね、ハルト様はニブチンなのよ。こんな可愛い二人をほっとくなんて、全く。」

と相槌を打つ、二人の中では1年前から決めていたこと、だってあの生活を知ったら他じゃね・・。


そして先日、二人用の屋敷がそれぞれお披露目されたけど・・確かに美しくりっぱだけど、あの子らの屋敷の方がすごいじゃないですか!快適さで。


だからクリスティーナと一緒にお願いしましたよ、

「彼女らと同じような屋敷が欲しい」

と、強欲と思われるかもしれないけど、と思って心配していたら

「やっぱりあっちが良かった、じゃあ準備しとくね」

と軽く了承してくれた、良かったわ。



ーー アイス、ダイアナ、ハート  side


私たちがハルト様の第三夫人というのも信じられなかったのに、それぞれに屋敷を立ててくださった、例のあの夢のような屋敷を。


その時そばに建つ豪華な城を建てていただいたミラージュ王女やクリスティーナ嬢には申し訳ないけど、あれより数段こちらの方がいいわと3人で笑って話していたら、やっぱり彼女らもそう思ったのね新しく同じような屋敷をもらっていたわ。


でもね初めにもらうのと後からねだるのはちょっと違うと思うのは私だけ?

アイスやハートに尋ねたら

「私は気にしない」

「私は一緒にいられるだけで・・」

と言っていたけど、こんなに別々に屋敷を立てたら一緒にいる時間が少なくない?

と思うのも私だけなの?きっとあの元の屋敷に集まると思うの絶対。



ーー 結婚式当日


内外の来賓を招いて盛大な結婚式が執り行われた、妻を同時に5人も娶る俺の評判は違う方向に鰻登りだがこれは黙秘しておこう。


この際に我がレイン子爵家の文化的水準を嫌というほど味わってもらおうと計画し、披露したら当然のごとく反響があった。電力を産む火力等がなければ無理だと教えるとそのガッカリさは予想以上だった。しかし以前から販売していた

・女性用の下着

・化粧品類

・宝飾品

・料理特にデザート

は今でも大人気で、特別に売店を出したら飛ぶように売れました。


そういえば王様が結婚の祝儀にと言って海を管轄する直轄地を譲渡してくれた、今度そこを視察して良ければ船を持ち込もうと考えています、もう既に注文済みですけどね。


結婚後俺はリホームした屋敷に仕事でいることが多く、当然警護や事務の手伝いをしている、アイス、ダイアナ、ハートが側に居るがそこにミラージュ嬢とクリスティーナ嬢も何かと理由を付けて来ている。こんな事なら屋敷をあんなに持ってくる必要あったと聞いたら

「それはそれ、これはこれ」

と言われたよ。


これが、幸せという名の棺桶か!

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