第18話 逆恨み

 爆発が起こる直前、


「遅いぞ」


 私は彼の影響を受けた空気を素早く集めて圧縮し、眼前でぱちんと潰した。


 魔法攻撃を無効化されたオリバーは、顔を真っ赤にして私を睨みつけた。


「兄を殺したのみならず、ワシまで愚弄するか……!」


「違うぞ、オリバー。お前の魔法が発動する速度が亀のように遅いとか、そういうことを言っているのではない」


「なんだと、このクソじじい!」


 見た目年齢的にいうと、じじいはお前のほうだ。私はどちらかというと、美少年とか美青年とかそういう感じだ。


「国王からの迎えが来るのは、朝のはずだった。彼らをここへ来させないようにする最も安易な方法は、私が言うまでもないことだが」


 朝方ここに到着するよう出発した王国の兵士たちを、待ち伏せて殺したのだろう。そして、使いに成り代わり、私を訪ねた。

 しかし大遅刻だ。几帳面な兄のほうならこうはならなかっただろう。


「もう昼ではないか。王宮魔法使いに選ばれなかったお前程度の力では、さぞかし手間取ったのだろうな?」


 軽く中指を動かし、風を操る。


 見えぬ刃で体を裂かれ、オリバーは痛みと怒りで唸り声を上げた。


「うがぁあぁッ!!」


 血塗れで床を転げ回るその姿は、さしずめ老いてエサをとることもかなわぬ弱々しい獣だ。


「やれやれ。逆恨みで50年近くも命を狙われ続けるとはな……だが遅いな」


 私が殺され、魔力が弱まったタイミングで、いち早く気付かねばならなかった。そして私の亡骸を奪い、ウィリアムが交換の魔法に気付く前に殺してしまわねばならなかった。こいつは、なにもかもが遅すぎた。


「黙れ。お前があんな魔法を教えたせいで、兄は死んだのだ!」


《つづく》

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