第17話 暑苦しい爺さん

 いつの間にか、太陽が真上にあった。


「ご無沙汰しております、師匠」


 立て付けの悪い扉を開けて顔を覗かせたのは、かつての弟子だった。


「迎えはお前だったか。わざわざすまんな」


 今日は私が王城に出向く日であった。


「いえ。しかし、懐かしいですな。この家も、貴方も、まったくお変わりない」


「お前は変わったな、オリバー。かつてはイタズラが過ぎて私を殺してしまうようなヤンチャ坊主だったが」


 すっかり老け込んで、今や見る影もない。

 特徴的な金の瞳がなければ、彼だとわからなかっただろう。


「そんなこともありましたな」


 人のよさそうな老人の顔から、ふと笑みが消えた。


「しかし、ワシもまだまだ現役ですよ。とは言っても、今のように貴方の力が弱まった時でもなけりゃあ」


「……」


「貴方に会いに来ようなどとは、思えませんがなッ!」


 ウィリアムのためにわざわざ冷やしていた部屋の空気が、オリバーの語気と比例するように熱を帯びる。


 それは爆発魔法であった。


《つづく》

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