第8話 最後の弟子

『わかったから泣くな。とにかく私の言うことは理解したな? 私の亡骸と魔法に関する資料を処分し、この家を出ろ。わかったな?』


 この子はアホなので、再度要点を伝えておく。


 紙に書いてやりたかったが、死者の魔力でこの世の物体は動かせないらしい。


「はい! でも、あの……」


『どうした』


「俺、もう少しだけここで学びたいです。俺は、あなたの最後の弟子だから……」


 鼻を真っ赤にしたウィリアムが、膝の上で拳を握り、唇を引き結んだ。意志は固そうだ。


『好きにするがいい。私の書斎も自由に使え。この家にあるものは、すべてお前に譲る。魔法に関する資料も、焼く前に読んで構わん』


「あ、ありがとうございます!」


 ウィリアムの顔がぱっと輝いた。

 涙と鼻水がテカっただけかもしれんが。


「……俺、諦めたくないです」


《つづく》

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