第7話 話が長い師匠
「そんな……俺、殺人犯ですか?」
ウィリアムは泣きそうな顔をしている。
『そうなる前に私の亡骸を隠すのだ。誰の目にも触れない場所にな。埋めても燃やしても構わん。お前が罪を免れるにはそうする他ない』
「わかり……ました。それで、あとのふたつは? お師匠様」
『私の書斎の魔法に関する資料をすべて破棄してくれ。これについては、確実に火をつけて燃やしてほしい。もし、心無い者の手に渡れば取り返しのつかないことになる』
「エロ本ですか?」
『それについては50年ほど前のが残っているので、あとで好きにするといい。私のものではないがな』
かつて、金色の瞳が特徴的な双子弟子の、弟のほうが置き忘れていったものだ。
あの弟子はあろうことか、私の寝台の下をそういったものの隠し場所に使っていた。それに毎日飽きずにしょうもないイタズラばかりして……。
「要らないです。燃やします」
『で、みっつめだが……荷物をまとめてこの家を出ろ。万一、私の死を悟られた場合、やはり怪しまれるのはお前だからな……』
「それじゃ、死体を隠してもあんまり意味がないんじゃないですかぁ?」
私の亡骸を処理することには別の理由がある。
と、もったいつけるとまた話がおかしな方向へ進むことは間違いないので、簡潔に説明することとする。
『魔法使いの遺体を金儲けの道具にする輩がいるのだ。むろん、魂の宿らない肉体などただの物体でしかないが、それを理解できん者たちが我々の体を干物にして刻んで売り捌く。そうならないように確実に処分してくれ』
簡潔に……なったか?
「ひぇっ。わかりました! お師匠様の御遺体は俺が責任をもって売り捌きます……じゃない、燃やして埋めますね!」
弟子は混乱して目を回していた。
だめだったらしい。
『お前……』
「ち、違います! 言い間違えただけです。俺、お金になんか興味ありません……」
《つづく》
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます