第35話 打ち上げ花火と屋台
ーー ダンジョン管理
レリーナ嬢とエリーナ嬢は現在自領地内にできたダンジョンの管理を行なっている。
学園の今期の授業が「ダンジョン管理とその利用」と言うもので、二人はそれについて学生を前に研究発表を指示されていた。
壇上に上がる二人、大きな衝立にダンジョンの大まかな図面と魔物分布が記載されている。
「これを見てもわかるように・・・・これを活用する為に・・・・こうすると・・・・これについては未だ研究段階で・・・・と言うのがこれまでの研究系結果です。ご清聴ありがとうございます。」
と言うと会場から大きな拍手が。
それに答える二人、時代が変わりつつある。
ーー 学園生活
変化を是とし始めた学園は、子弟妹を通じて貴族社会の社交も変化を受け入れ始めた。
今まで派閥第一主義であった貴族社会にいい物必要な物と人は、派閥を超えて手に入れなければ生き残れないと言うと事実を、身をもって知ることになったことがその根底にある。
しかしここ最近の気候変動は、この世界が変わりつつある兆しに見えた。
四季がはっきりし、冬には雪が夏には日差しが今まで以上に強調され、それなりの装備や備えを準備する必要が出てきたのだが、秋の実りや春の芽生えなどこの世界の生命力が生き生きしてきたと思うのは僕だけだろうか。
「いいえ私もそお思うわ。その上いつの間にか魔王を倒してくれていたのね。お礼に何かしてあげるから・・楽しみにしていてね。」
またどこからか、聞こえない声が独り言を言っていた。
ーー 一神教会の思惑。
一神教の中央教会が存在する、聖皇国の王都において権力闘争が盛んになっていた。
以前エストニアに女神との接触を図らせた、シスター・イナミラーを配下に持つ総司祭ペーチンと新たな教皇スターリング14世が、勢力争いをしていた。
女神は彼らを手足にように使い捨てする割には、肝心の情報を与えないところがあり、魔王が討伐されたことを知った女神はそのいい加減な性格もあって、その事実を教えないまま聖皇国内では終末思想が膨れ上がっていた。
スミス共和国の5分の2を自国領とした新教皇派、女神の天啓を直接受けるシスターを抱え込む司祭派は、何につけ争っていたのだった。
そしてシスター・イナミラーは今回独断で、エストニア伯爵領を目指して旅をしていた。
彼女の目的は、伯爵領に一神教の教会を建立すること、これは女神が密かに彼女に命じた神命だったのだ。
ーー 花見をしたい。
青の季節に僕はこの世界でも「お花見」を流行らせたいと考えた。
生きるのが厳しいこの世界で、少しでも生きていることを実感し幸せを感じてもらいたいと思ったのだ。
森を探すと、意外と植生は雑で地球と同じような樹木や花を見かける。
たまたま以前魔物狩りで桜の木によく似た樹木を見つけた僕は、農地再生の際にその脇にこの樹木を移植し増やしていたのだ。
「この道の両サイドはこの桜もどきを植えて、丘の上の神社まで桜の道を作ろう」
そう呟きながら植栽する僕は、花咲か爺さんみたいの心であった。
他にも畑には菜の花を植えたり、ゲンゲの花を植えたりしながら伯爵領を花の都風に変えていたのだった。
この試みは意外と早く花を咲かせる、だってこの世界の植物の成長は異常なのだ。
ーー 赤の休み
次第に日差しが強くなり、肌を刺すような季節が巡ってきた。
「本当に季節感が強くなったよな。」
そうぼやきながら僕は、この季節ならではの遊びや楽しみを考えていた。
「お兄様、今度は何をされるのですか?」
最近僕のすることにとても興味を見せるクレアリーナが、そのクルクルと色の変わる人にを輝かせて、僕の部屋に飛び込んできた。
「クレア、レディーがはしたないことをしてはいけないよ。」
とやんわりと注意するが
「こんなことお兄様だけですわ。私生まれ変わったら、と思っていたことがあって・・それが今の私ですの。」
と言いながら「何かする時は教えてくださいね。」の言葉を残して、部屋を出て行った。
「うん、変わった。それでいいと思う。」
僕はそう呟いた。
花火を作りたい。
この世界に火薬というものがまだ発明されていなかった。
その為僕は、花火を諦めていたのだ。
「火力がある武器が生み出されれば、魔力のない領民が力を持ち始める。貴族はその優位性を失い、国王制の政治自体が揺らぎ出すだろう。」
というのが僕の懸念だったのだ。
で花火は夏の風物詩だよね。
こっそり火薬を作って作ってみてはどうかな?魔法を使えば早いし安全だし。
その惹かれる思いに僕は負けました。
以前から火薬の減量になる素材は集めていたのです、それも先ほどの懸念にためで、誰かが発明するリスクを減らすためだったのです。
故に僕の収納には、この世界を壊すことができる可能性があるほど、素材が貯まっています。
僕にその知識を与えた、ダメ女神が問題なのです。
出来上がりました!流石魔法です。一尺玉級の花火が200個、それの半分ほどの花火が1000個1日で作ることができました。
あとは打ち上げる場所と、それを見る場所の選定です。
伯爵領に川が流れているので、その川の中洲で打ち上げることにして、両側から見物することにしました。
当然、周囲には屋台という出店を提灯で飾って雰囲気を出します。
綿菓子は先日完成させました、ザラメを作るのを忘れていたので慌てましたが、意外と簡単に加工できました。
焼きイカは、海で大量に収納した海の札の中に山ほど、当然たこ焼きやお好み焼きも有ります。
神社に続く坂道の脇に、川を臨む芝生を敷いた段が10段ほど有り、500人くらいが見物できる。
上の段から王侯貴族、富豪、有力者と区分けして、川の反対側を領民や旅人の観覧席とすることになった。
ーー 赤の祭り(夏祭り)と打ち上げ花火
「エストニア伯爵からこの様な招待状が来ております。」
国王に側近が、
[この度、我が伯爵領において「打ち上げ花火」と言う模様しものを企画いたしました。時間は夜8時から夜空を光と音で飾る試みです。ご都合やよろしければ、お越しいただければ後悔させませぬ。]
と言う文言が並んでいたが、国王はこの意味がわからなかった。
「この花火なるものはどんなものか?」
側近に問うも
「聞くにこの世界で初めての催しものとか。私にも解りかねます。」
と答える側近に
「分かった、一度伯爵領を視察しようと考えておった、向かうとしよう。」
と国王は決めたのであった。
「王妃様、この招待状はご存じで?」
王女のメアリースクイブ嬢が王妃に駆け寄る。
「私にも届いております。ケンドール公爵夫人からも是非にとのお言葉がついている以上、行かないわけにはいきません。貴方も準備しておきなさい。」
と言われた女王は、違う意味で喜んだ。
その他この国の重鎮たちに招待状は、送られれおり大きな夏祭りとなって行ったのだ。
ーー 開催、この世界初の打ち上げ花火大会。
エストニア伯爵領内に長い行列ができていた。
エストニア伯爵が開催する、「打ち上げ花火大会」と言う催しものを見物する、貴族や庶民の列である。
広く平らな街道に、馬車やに馬車がひしめき合う様に進むが、伯爵領では左側通行というルールがあり、意外とスムーズに人の流れは進んでいた。
以前からこの伯爵領は、王都から近いこともあり商人が多く出入りしていたこともあって、宿なども充実していた。
温泉も掘り当てていたので、貴族や富豪などは高級な温泉宿に宿泊していた。
僕は家族やメンバーの関係者と、招待の王家の方々や重鎮たちを出来立ての領主邸の迎賓館に招待していた。
「ほお。この迎賓館というものはなかなか興味深い建物じゃ。」
国王が興味深そうにみて回る、
「ここにも最高級のエステシャンという者がおるそうな。」
王妃が嗅ぎつけた情報を王女に語る。
「エステシャンですか?」
まだ若い王女には縁の薄いものの様だ。
夜8時少し前。
移動の疲れを温泉やエステで癒した一行は、川を臨む丘の上の観覧席に移動していた。
魔道具の涼しい風が適度に吹き、過ごしやすくなっていた。
「あそこに見えるにはなんじゃ?」
国王は川の向こう側に、赤い光が並ぶ屋台に人が多く並んでいる場所を見つけた国王が問う
「あれは庶民用の格安な軽食を提供する屋台でございます。庶民は地面に敷物を敷き寝転んで花火を見せるにです。」
と説明した。
庶民側には結界を張り、火の粉や花火屑を防ぐ様にしていた。
「ヒューッ」
少し甲高い音が光を引いてそれに駆け上がる。
「光の竜じゃ」
国王が呟く、次の瞬間
「ドーン!」
半径500mの大輪の光の花と夜空を震わせる音が身体に伝わる。
「おおー。これは見事な!」
思わず簡単の声が漏れる国王。
続けていく本もの光の竜が夜空を駆け上る。
「ドーン!ドドーン!」
幾つもの大輪の光の花が夜空を埋め尽くす。
「「おおー!」」
至る所で、歓声が上がる。
その日の「打ち上げ花火大会」は、セガール王国史に記載された歴史的ものだった。
大盛況のうちに終了した、花火大会はその後貴族や富豪から開催依頼が殺到したが、僕はその答えを保留していた。
国王に呼ばれ
「如何にして保留しておる?」
とその理由を聞かれた時
「あの花火はこの城をも粉々に出来うる強力な武器となる流のです。しかも平民でもなしうる様な・・。」
と答えた、するとしばらく考えていた国王が
「管理はその方のみに任せよう。」
と独占を認めた。
ーー ケンドール公爵夫人 side
息子のエストがまた面白いことを考えた。
息子の話では、夜空いっぱいを使った光と音の催しものだと言う。
エストの館も出来上がり、エステと呼ばれる施設の感想も教えてほしいと、事前に頼まれて友人のクレアを連れて試したが。
「凄く良い!」
またこんな親孝行をして、もう可愛ったら無いわ。
定期的に若返りの効果のある化粧水を使っている二人は、エステシャンの技術に感心していた。
「少し疲れが見えていた目の周りが、全く問題ないわ。」
と言う公爵夫人の言葉に頷くクレア侯爵夫人。
これから貴婦人の中で、エステとエステシャンという名前は、聖域として語られるものとなった。
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