第34話 雪の日の遊びと 懐かしい風景

ーー 白の休みとこの世界の説明


季節は移り変わり始め、白の季節が目の前に。


ここ数年はよく雪が降るようになった、四季がはっきりとし始めたとも言える。


〜この世界の時間や日時に季節について、まだ説明していなかったのでここで説明します。


時間は地球と同じ24時間で1日、1月は30日で12ヶ月で1年。

衛星としての月は存在しない。


海は魔物がいないが海洋技術が未発達のため、開発は進んでいない。

大陸は一つのみで、島もそれほど多くはない。

この惑星が丸いと言う事実に未だ誰も気づいてはおらず、海の先は滝のように奈落に落ちると思っている。


季節は基本的に、春〜青、夏〜赤、秋〜黄、冬〜白の季節と呼ばれており、3ヶ月ごとに移り変わりそれぞれに休みが存在するのが、不思議というかご都合主義というかこれぞ異世界という感じだ。


人の成長は早く、15歳で成人だがレベルアップによる成長を受けると、10歳前後でも大人と変わらぬ体格や考え方になる。

これはこの世界が生きるのに厳しい環境であることが起因している。


種族的には、地球で語られる種族はいるようだが人族の街に住むものは少ない。


歴史は4000年ほどで、過去に何度も魔王による大量虐殺で滅びかけている。

魔王が生まれる条件は、管理者の設計の不具合が異常な魔素の発生を引き起こし、それの器となる魔物が攻撃的な性格になることだと言われている(女神の言い訳)。


そこで女神は、1000年ごとに異世界から「勇者」となる器を探して攫ってきているようだ。


これがこの世界の概略である。〜



◇ 雪がちらつき始めた。


この季節には珍しく早くからチラホラと雪が舞い始めた。

「今年は積もるかも知れないな、それならそれなりの遊びもできるかも知れないか。」

そう呟く僕。


数日の日が過ぎた、相変わらず雪が降り続いており30cmほど積もっている。

僕はその間に木の板を加工しながらスキー板を作っていたー

靴の先を固定するようにして、歩きやすいようにした。


スティクも用意し、板の底にワックス用のものを塗ってみた。


高台まで飛行魔法で移動すると、スキー板を履き滑り始める。

元々そこまでスキーをした記憶はないが、レベルが上がった為にか予想以上に快適に滑ることができている。


そんな事をしていると、妹のクレアリーナが滑り降りた僕に駆け寄り

「お兄様それは何ですか?昔似たような物を見たことがありますがそこまで自由自在に滑ってはいなかったと記憶しています。」

と言った。


僕は幾つか収納しているスキー板の小さな物を取り出すと

「履いてみるかい?このスティックも使うんだよ。」

と言うと頷く妹を抱き上げ空に舞い上がった。

丘の上に降り立つと、注意点を話し一緒に滑り降りた。

数度滑り降りると、コツを掴んだのか自由に滑れるようになった妹に移転陣の使い方を教えて、下から上まで移転できるように指導した。


僕の開発した移転陣は人2・3人まで自己の魔力で移転するもので、荷物の搬送も200kgまでなら可能のようだ。


自己の魔力を使い丘の上に移転しながらスキーを楽しんでしんいた妹が、急にぐったりとなった。

「ああ、魔力を使い過ぎたな。」

と思いながらそばまで移動すると、魔力を回復するポーションを飲ませた。

「自分の魔力の管理は大事だよ。また回復したらね。」

と屋敷まで運ぶと、回復したらまた遊ぶようにと言い残して僕は、スキーに戻った。


そんな事を数日していたら、メンバーがどこかで聞きつけたか遊びに来た。

「面白い遊びをしているみたいだね、エスト様。」

とレリーナが言うと

「「私たちにも教えてよ。」」

とセリーナ達が声を上げた、するとクレアリーナが

「お姉様方、私で良ければお教えしますわ。」

と言ってくれたので、スキーセットを取り出し渡しておいた。


僕はその頃、積雪が70cm程になったことからカマクラを作って遊んでいた。


移転陣付きスキーはとても評判が良くて、魔力をどうにかすれば誰でも何度でも遊べると言うことになって、専用のカートリッジ式の魔力装置を造らせられました。


この魔法陣のカートリッジ式の活用は、色々なものに転用できる画期的なもので、ブラックボックス付きの魔道具として王国に献上して売り出すことにした。


全てに番号を刻印し、使用者を管理することでルール違反の使用を抑制することにした。

でも多分悪いことに使う奴は出るよね。

固定式にしてみてもいいかも。

と悪用を防ぐ手段を幾つか設けることで、市販が実現した。



白の休みが終わり、僕らは12歳になった。



ーー 学園生活



中等科の3年になった僕らは、成人前ではあるが社交に単独で出るようになる年である。


多くの貴族から僕やメンバー個人を指名した、パーティーの招待状が届き始めた。


「私たちはケンドール公爵夫人派でお断りできるけど、あなた達はどうするの?」

そんな言葉を言われた僕ら男性陣。

いずれも領地持ちや高位貴族の後継だ、ほっとかれることはないだろう。

「自分の領地でもパーティーを開催したりすべきなんだろうか?」

と呟くと

「それはあり得るわね。」

と言われた。大変だ。

そこで僕はお母様とお父様に相談することにした、

「次々に招待状が来ています、どう対処しましょうか。」

と聞けば

「のこのこ一人で行って変な言葉尻でも掴まれてはいけないわね、付き添いに家臣の信のおける切れ物を連れて行くのはどうかしら。」

と言うお母様に

「いい考えだ、領主代行のエリス男爵がいいだろう。」

とお父様からアドバイスを頂いた。



単独社交デビュー。


中央大森林の獣人の隠れ里に接する、子爵からの招待状が届いていた為そこには顔繋ぎで向かうことにした、他は自領と隣接する領主主催やメンバーの関係するものだ。

それだけでもそこそこの数になる見込みだ。


エリス男爵は連絡を受けると、すぐに駆けつけてくれた。

「忙しいところを悪かったが、どうしても男爵の協力が必要でね。」

と言うとにっこり笑うエリス男爵。

「伯爵に頼られるだけでも誉ですよ、どんどん使ってください。」

と言われた。



あるパーティー会場にて。


馬車で会場入りする、エリス男爵と一緒だ。

パーティーの主催者である子爵がゲストを出迎えている。

僕の姿を認めると、ひときわ大きな声とジュエスチャーで出迎えた。

挨拶もそこそこに会場に足を向ける。


エリス男爵は、目に付く貴族を次々に小声で教えてくれる。

「あそこに見えるのが主催者の寄親であるイーリッヒ侯爵の代理の弟サラエル様のようです。挨拶しておきましょう。」

と言う感じで関係や挨拶の必要性を確認しながらの社交は大変疲れる。

食事についても得るべきものがなく、僕としては面白くもないパーティーだった。



こんな感じでパーティーをと社交をこなしていた僕は、自領でパーティーを開催することになった。


先ずは自分の派閥を集めたパーティーを主催してから、他派閥や王家を呼ぶパーティーを開催するようにと注意を受けていた僕。


お母様とお父様の関係者及びメンバーの関係者を呼んでからの初開催である。

お母様からは一つか二つは、初出しの料理か何かを披露しなさいと言われていたので、天ぷらをその場で揚げて提供するものと、同じく油を使ったトンカツ(オーク)を披露した。


白の季節であったことから、温かい食事は特に喜ばれて暫くは流行となった。


当然口などに付いた油を拭き取る為に、女性用の化粧室には浄化の魔力がこもった化粧水が準備されれおり、わざと汚して何度も利用するご婦人がいたのは話に種になる程だった。



ーー 白の季節の学園行事



今年から行軍訓練が行軍と装備改良に変わったことから、危険な場所に向かう必要はなくその場所に有効な、装備を使いながらの行軍となる。


今回の改良装備は、積雪があることからスキー板の利用による行軍だ。

アルペンスキー板のように歩きやすく、板の長さが短いのが特徴。

沈み込みもなく、下であればかなりの速で移動できる為、今後の利用が本格的になりそうだ。


さらに体温を保つ装備開発で、小型のカイロ的な物とダウンジャケット様な服を、さらには手袋と靴も防水で保温力のある素材で作った。


これらの装備を着ることで、雪の中でも安全に行動できるようになった。

そしてコンパスを持たせることで、吹雪や夜間でも方向を間違えずに進める様になった。


コンパスの登場は、その後の海への進出に大きな変化をもたらすだろう、過去の地球がそうだったように。


大きな結果をもたらすこととなった装備改良は、参加者のみならず王国軍の関係者に興味を持たれ、そのアイデアが買い取られることとなった。



ーー 青の休み



いつの間にか雪も溶けて、小春日和の天気が続くようになった。

もう春はそこまで来ているようだ。


数日後、青の休みに入った。


貴族の社交も盛んになる頃で、成人したての貴族がお相手を探して顔を出している。


たまに参加する、メンバー関連のパーティーにおいてもそのような貴族が多くなった。


僕は伯爵寮に建設中だった、領主邸が完成したとの報告を受け内覧をしていた。

「設計図通りに出来ているようですね。」

僕の言葉に、エリス男爵は

「はい、幾つか難しい箇所もあったようですが、何とかなったと聞いております。」

と答える。


メンバーそれぞれの領地の領主邸についても、僕の設計した建物が完成したようで、近いうちに完成パーティーを開催する必要があるようだ。


僕は完成した建物を見ながら

「ここだけみると、地球に生きていた頃を思い出すな」

と呟いた。


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