第33話 学園長の大願成就と後釜
ーー 避暑地はこうでなければ。
「2度目の別荘です。今度は避暑です。」
と言いながら僕は皆んなと共に転移しました。
「わあー。白の季節の時は分からなかったけど、滝が直ぐ近くにあるのって気持ちいいわね。」
ミリア嬢が呟く。
山々の緑は濃ゆく、空は青く抜けていた。
ミストのような滝の飛沫が、身体から熱を奪って気持ちがいい。
避暑地はこうでなければ。
ここて休み中を過ごす予定の僕たち、何で遊ぶか何をして時間を潰しか話し合う。
「エスト様どんな遊びがあるのですか?」
レリーナ嬢が聞く。
「遊びに関しては、いくつかの遊戯道具をプレイルームに置いているから、後で確認してね。それとこの前水着を作った際に、伸び縮みする布地を開発しただろ、あれをさらに改良した布地がこれで肌触りと通気性がいいので、下着類を作ろうと思っています。」
と言ったら、女性陣が目の色を変えた。
この世界の下着といえば、紐で縛るだけのカボチャパンツだったり、伸縮性がないために激しく動くと、肌が赤くなったりするものが多かったのだ。
暫く女性陣は僕の作った型紙と針子さんとの話し合いで、時間が潰れそうだ。
僕は定番のリバーシやトランプそれと釣りをしながら時間を潰して、まったりとした平穏を味わった。
ーー 下着革命。
カボチャパンツからショーツ、サラシからブラ、下着からインナーシャツそしてガードルなどの補正下着。
ゴムに似た物質と伸縮性と肌触りの良い生地を作った事から、僕は女性用の下着類を数多く提案し針子の職人に作ってもらい、女性陣に着心地を尋ねた。
女性メンバーは、レベルアップによる身体の成長で不満だったり、必要性を感じていたようで完成した下着類を殊の外よろこんだ。
これを基本に子供から大人、そして体型別にサイズを変えて縫製したものを、お母様に送ったところ「これはとてもいいわ、直ぐに本格的に売り出しなさい。」と言う返事が来た。
その後貴婦人から流行り出したこの下着は、この世界で大流行するのだった。
『女性用の製品を作っておけば成功間違いなしな気がするのは、僕だけなのか・・・。』と思いながら次の流行を考える僕だった。
ーー 海の家を作りました。
この間遊んだ海がとても良かったことから、あの入江付近の土地を買うことにしました。
僕があの国の法衣の貴族位を貰っていたことから可能になった話で、入江、浜砂、海の家を立てる土地を購入して、石の塀で囲んできました。
バンガロウもそこに置いて、1人地元の人を雇い管理をしてもらっています。
また海に遊びに行かなければ。
ーー 学園生活と学園長の目的。
赤の休み中、避暑地の別荘にいた僕ら。
学園の再開に伴い寮に戻ってきました、この季節はダンジョン攻略です。
レリーナ、エリーナ嬢らは自分の領地内である、ダンジョンを管理運営している関係で今回、指導者的な役目を与えられたそうです。
「私達って学生というより教師みたいじゃない?これなら授業免除や報酬を出してもいいと思うのだけど。」
とぼやいていた。
なりほどと思った僕は、学園長に相談に向かった。
そして学園長の目的を知りました。
「学園長、お願いと相談があって参りました。」
と僕は学園長室のドアを叩いた。
「それで要件は何だ?」
「はい、僕らの立ち位置とそれに伴う便宜を図ってもらいたいのですが・・。」
と要件を伝えると、
「確かに君たちには教師的なことばかりさせていたな。分かった後で希望に沿った回答をしよう。」
と言ってくれたのでさらに僕は。
「最近感じていたのですがいいですか?行軍訓練や魔物狩りの場所や目的が、学生が行うにはハードというか危険性が高くないですか?」
「その事か確かに。君だから伝えておこう、もうすぐこの世界に魔王が現れるはずなんだ。魔王が現れれば国は荒れ人々の多くが殺されるだろう。そのために今から魔王に対抗できる者を見つけ育てたいのだよ。」
と苦悩うに染まった顔を見せた学園長。
「魔王について一つ質問なのですが、魔王というのは何人もいるんですか?」
と尋ねてみた、
「魔王はその時代に1人だけだ、大きな体に禍々しい魔力とツノを持つ存在で、魔物を統べる存在だ。1000年前も現れてその為に人が半分ほどになったのだ。」
とかこの話をする学園長に、見てほしいものがありますと言いながら裏庭に移動し、先日大森林で倒した魔物を取り出して見せた。
「これは言葉を話す魔物だったのですが、魔王と違いますか?」
と言うと、学園長は鑑定を使いながら
「信じられん!既に魔王が・・・誕生して・・倒されていたなんて。」
と言うとその場に座り込み、
「学園長として魔王の脅威をどうにかしたいと・・・苦労が報われたのか・・。ありがとう。」
と言うと学園長の姿が・・エルフの女性に。
「学園長はエルフの女性だったのですね。」
と呟く僕に
「正確にはハイエルフと言う種族だ、女神の神託を受けて里を抜け、人種に変化して今まで生きてきたのだ。これでやっと戻れる。」
と重く長い使命から解放されたようだ。
「1000年て、何馬鹿な使命を与えてるのダメ女神は。」
と言う僕の言葉に
「ダメ女神か。言い得て納得だな。」
と言いながら笑う学園長は、とても綺麗に見えた。
ーー ダンジョン攻略。
学園生によるダンジョン攻略が始まりました。
僕らは同行して、学園生の指導にあたりながら踏破階層を5〜30階層まで広げました。
学園生の活動は基本5階層までで、実力があるチームだけ10階層まで許しています。
素材は珍しい虫系の魔物なので意外と高値で買い取られる為、学生も積極的にダンジョンに挑戦していました。
特別なイベントも発生しない平和な時間が流れて、赤の季節は流れていった。
ーー 卒業式と入学式を迎える黄の休み。
とうとうこの季節がやってきました、僕らも中等科3年生になります。
学園長は、僕らが卒業するまでは学園に残りそうですが、その後はエルフの里に帰るそうで今は本来の姿で生活しています。
そう言えばまたケンドール公爵領の新入生が増えたようです。
安定した食糧自給に数多くの就職先と、子供の生存率が高く入植者も多い為のようだ。
そう言えば僕の領地も暫く顔を出していない、視察に向かうことにしよう。
と僕が思っていた頃、寮に入ってきた新入生が
「ここ我が家より快適だぞ!」
と言う何時もの声が寮内に響いていた。
ーー 黄の休みと自領の視察。
エリス男爵に用件を書いた魔法手紙を出して、僕は妹とシロを連れて伯爵領に向かった。
「お待ちしておりました、領主様、クレアリーナ様。」
とエリス男爵が出迎えてくれた。
クレアリーナは初めて訪れる領地に、少し興奮しているようだ。
「お兄様、この街はとても賑わっていますわね。何がありますの?」
と興味津々な妹に
「それは自分の目で確かめることだよ。」
と言ってミカエル騎士爵を呼び
「妹の警護に何人か付けて、街を案内してほしい。」
と言って妹を送り出した。
僕はエリス男爵と領地経営の話をする為に、執務室に向かった。
クレアリーナ。
私のお兄様はやっぱりすごい人。
避暑地の別荘や海での遊びも面白く快適だったけど。
ダンジョンに大森林での魔物狩りなど、大人顔負けの経験と強さを持っている。
そして・・魔王を倒していたのだ。
もしかしてお兄様はお話に出てくる「勇者様」などと思うほど、何でもできるお兄様。そう「お兄様」なのです。
今私はお兄様の街を散策しています。
街には色んな商会が建ち並び、多くの人が流行の先端と言える商品を買い求めています。
私も先頃売り出された下着を身につけていますが、とても着心地がいいものです。
私だけこんなに幸せを謳歌していいのでしょうか?・・皆の分まで幸せになります、みていてください。
そんな思いで散策するクレアリーナであった。
エリス男爵。
やっとエストニア伯爵が領地に戻られました。
毎季節のように新しい物を開発改良しては、直営の商会に卸している伯爵のおかげで領地経営は順調すぎるほどの活気を見せています。
毎年採用するケンドール公爵領の人材も、素晴らしく忙しくなる割には仕事が楽になる日々です。
こんな領地経営なんてほとんどあり得ません。
セガール公爵領では、仕事がなくしょうがなく冒険者ギルドに勤めていましたが、あの頃が嘘のようです。
領主代行の役職のおかげもあり、私にも多くの婚姻話がもたらされており、お母上がうれしい悲鳴をあげています。
そう言えばこの間、家臣達に「ボーナスだよ」と言われて、屋敷をそれぞれ頂きました、私も身分以上のお屋敷で一人で過ごすのが寂しいほどなので、早めに嫁をもらいましょう。
ーー 黄の季節のあれこれ。
魔王の脅威が人知れず排除されたことを知った学園長は、季節ごとの学園行事の見直しを行い始めた。
今までは、
黄の季節〜領地対抗戦
赤の季節〜魔物狩り
白の季節〜行軍訓練
青の季節〜ダンジョン攻略
でしたこれを
黄に季節〜領地改革研究
赤の季節〜魔物対策
白の季節〜行軍と装備改良
青の季節〜ダンジョン管理とその利用
に変えたのです。
王国を発展するための人材育成に舵を切ったようです。
後3年ほどでこの王国を去る学園長らしい決断です。
と言うことで、領地改革研究というテーマで行われる領地対抗戦。
やっぱり競うんだ。
その準備というわけではないのですが、メンバーの領地の開発状況を毎年少しずつ披露することにした。
ーー 怠惰なエルフの日常。
使者としてセガール王国に来国して以来、ケンドール公爵邸に居候しているエルフ殿は本日も怠惰に日常を送っていた。
「何かこの国に留まる理由はないのかしら。」
まったりとした生活の中少しばかり焦り出した、使者殿。
そんな使者殿の長耳に届いた話、
「学園長がエルフで3年後には国に帰られるそうだ。」
と言う話だ。
「それだ!使者殿は早速学園長に面会して・・・」
と独り言を言うと珍しく機敏な動きで屋敷を飛び出していった。
すぐに戻ってきて
「学園はどこに?」
と聞いてきたのはいつも通り。
その後何かいいことがあった様子で、週に数回学園に通い出した使者殿。
彼女が次の学園長に指名されるのは、暫く先のことであった。
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