第32話 別荘と海の家

ーー その後の話。


後の事は王国の重鎮らの丸投げすると、僕らは王都の冒険者ギルドに向かった。


溜まりに溜まった、魔物の素材を少しで放出する必要があったのだ。

「私の魔法袋は満杯よ。」

「それは僕も同じだよ」

「私たちもよ」

とみんなパンパンには膨らんではいないが、大量の魔物を収納している袋を手に買い取りカンターに向かった。


「「「買取お願いします。」」」

声をかけるメンバー達。

まだ年若い男女の声に、新しくカウンター業務を始めた職員が軽い口調で

「出して・・ウググ。」

と言おうとして先輩職員に口を塞がれた。

「わたしがかわります。どのくらいの量でしょうか?」

と慎重に尋ねる職員に。


「「「いっぱい」」」

と答えるメンバー。

「分かりました。制限はあると思いますが・・どうぞ裏に。」

と焦る様に裏に案内する職員。

その様子を見ていた買取の職員は、

「先輩なんかおおかしくですか。あんな子供達に。」

と声を上げた途端。

他の職員にへつ室に連れ込まれる男。


「あんたバカでしょ!ここの最大に注事項を覚えてないの?あの6人はこの国で一番やばいの!わかる思い出した!」

と叱る声が待合室まで響く。


「おい聞いたか?今の小僧らがて話。」

1人の冒険者が古株の冒険者に声をかけると。

「いいかお前ら、さっきの6人には関わるなよ。特に最後の男はやばい、公爵家の跡取りで既に伯爵様な上に恐ろしく強え。目を合わせるのもやめとけよ。」

と言うとサッサっとギルドを出ていった。

それを聞いた冒険者は

「あ!あれがエストニア伯爵か。」

と言うとそそくさと同じくギルドを後にした。


他の冒険者も、6人が帰るのを息を殺して待っていた。




ーー 別荘の貴婦人達。



エストニアを追い出して別荘に居座った、公爵夫人以下の貴婦人らは優雅な日常を過ごしていた。


美味しい食事にお風呂、その後は極上のマッサージ。

若返りの効果のある美容液入り化粧水で肌を労わると、10代または20代前半の様なお肌に。


「ケンドール公爵夫人、ここは真に天国の様な場所ですね。」

と3日前に来られた王妃が話せば。

「本当にクロニアル達には悪いことをしましたが、これは譲れませんよね。」

とサンドール侯爵夫人が言うと、侯爵夫人も

「そうね、エスト達にも何か埋め合わせをしないとね。」

と言いながらまだ暫くはここを出ないと思っていた。



ーー  セガール王国 国王会議



最近このメンバーが集まることが多くなったと、国王はため息をついた。


「して、その後はどうなった。」

国王が尋ねる。

「はい陛下。子爵領はこれまでの不正がさらに判明、一族を追放し領地並びに財産を没収いたしました。

現在は寄親であったイーリッヒ侯爵家が管理しております。」

と答えると。国王は、

「侯爵よ、何度も穏便には出来ぬぞ。心して領内をまとめよ、良いか。」

と強い口調で叱った。

「はい肝に命じております。徹底的に領内の不正を監視しております。」

と頭を下げた。


「話は変わって、ケンドール公爵よ。此度の褒賞と言うわけではないが、エストニア伯爵他の5人に子爵領の森川の一部を与えてはどうだろうか?獣人達も必要な交易はあるであろう。あの者達が所領して居れば、バカなことを考えるものもおるまい。」

と話を振る国王に、ケンドール公爵は

「お言葉ですが王よ、息子達に管理させてスタンピード対策でもしようとのお考えですか?」

と尋ね返す。


「うまくいくと思ったのだが、無理か」

と呟く国王に

「まあ聞いておきます。返事はそれからで。」

と答えると、機嫌が上がった国王は

「エルフとの交易は無理かの。」

と呟くがそれにつては、公爵は聞こえないふりをした。



ーー 学園生活。


やっと日常に戻った僕たちメンバーは、学園に戻り学生生活を送り出した。


「私達色々ありすぎて、学生だった事すっかり忘れてたわね。この後な日があったんだっけ?」

とミリア嬢が言えば、クロニアル君がすかさず

「魔物狩りの季節だよ」

と答えたら女性陣が

「「「また魔物、お金にはなるけど私は別荘でゆっくりしたいわ。」」」

と声を揃えた。


もう直ぐ大森林で行われる、魔物狩りの季節。

また何かありそうな予感がするのは、エストニアだけだろうか。




学園長コザック  side


今年もこの時期になった、昨年から行軍や魔物狩りを大森林で行う様にと、王国から指示を受けていた手前取り止めることもできず。

「また今年もあの子らに頼むしかないのね。」

思わず、地が出た学園長はそっと周りを気にしてため息をつく。


「早く魔王対策をしておかなければならないのに、時間がないわ。」

と誰ともなく呟く。

学園長は既に魔王が討伐されていることを知らなかったのだ。



「あれ?魔王は今どこに?」

ここにも魔王が倒されていることに気づいていないダメな何かがいた。



ーー  学園魔物狩りの遠征。


中央大森林の外郭で学園の魔物狩りが行われるとこになった。


グループ分けは、10人単位で約45組。

3つの期間に分けて一期間15組で、魔物狩りを行う。

ただ僕らのメンバーは、指導員として期間中警戒と指導にあたることになっいる。


ある程度大物の魔物や毒やタチの悪い魔物を適当に間引いて、学生のグループをそこの放り込む。

解毒薬は用意しておくが、ある程度は被害にあったものを見なければ真剣にはならない。


腕の一本ぐらいなら、何とでもなるこの世界はいいのか悪いのか。


ここでちょっとした問題が起こった。

事前に魔物を間引きしたことに気づかない学生が、自分の実力を見誤り大森林を舐めてしまった。


数人でドラゴン退治だと言いながら、無断で予定の範囲を超えた様だ。

話を聞いて直ぐに僕はそのグループを見つけたがあえて、そのままにした。


上位のウルフ系の魔物が彼らを獲物と狙っていた、彼らは索敵や気配感知すらできないお粗末さで、ウルフの罠に陥る。


1人2人とウルフに倒される、本当はそこで助けているが怪我は大して治してはいない。

残り2人となったところで、見苦しい責任の擦り合いが始まった。

「お前がドラゴンなんか、とか言うから皆んなつてきたんだろ。」

「何を言うか。お前こそこの程度が大森林の魔物なら俺たちだけで問題ないと言っただろうが」

醜いあらそにの最中に、ウルフに襲われる2人。

泣きながら助けを求めるが、誰もいない。

そう森の中で人は無力なんだ。


死にかけたのを助け出し瀕死の状態でみんなの元に。

引率の教師に引き渡しながら

「指示を聞かず仲間を危険に晒すものを、治療する薬を持ち合わせていない。」

と言い残しその場を離れる。



その後、保護者から講義がきたそうだが、学園長が

「死んで当然のところを命だけでも助けられたことに、感謝すれども抗議などどの口が言うか。」

とけんもほろろに追い返したそうだ。


こんなことがあって、その後のグループは指示を破る者は出なかった。



そうして学園生活は、赤の休みへと進んでいった。



ーー 赤の休み。(それぞれの夏と海。)



赤の季節が訪れ、皆でどこかに行こうかと言う話になった。

避暑地はまだお母様らが滞在中なので、

「海に行かないかい?」

と提案した。

僕はこの世界の人達が、海で遊ばないことに疑問を感じていたのだ。

確かに生きるのに厳しい世界であるが、余暇がないのは悲しかろうと。

馬車を改造する際に見つけた、ゴムに似た物質で浮き輪などを作り。

小型のバンガロウを収納していた僕は、釣り竿にボートなど海で遊ぶ道具をたくさん作っていたのだ。


「海?あの塩辛いと言う大きな湖に事かい?」

マッケンジー君が聞き返す

「そうだよ、波がくる海の幸いっぱいの海だよ。」

僕の興奮気味の説明に首を傾げる皆んな、でも

「そこまで言うなら行ってみましょうよ。」

と何故か話に加わる、クレアリーナ。

「お前もいくのか?水着は持っているのか?」

と聞くと

「「「水着?」」」

と他の女性陣も声をそろえる。

そうなのだ、水遊び自体あまりしないこの世界の者は水着を持っていなかった。


そこで水着からデザイン画を元に作成したが、女性陣の注文の多さに大変だった。

これはお母様の分も作っておかなければいけないかも。



ーー 海です、広い海。



僕の転移魔法で、以前行ったグスタング王国の南にある海にきました。

潮の香りが記憶を呼び起こします。


適当な場所を見つけ、収納からバンガロウとボートや浮き輪を取り出す僕。

入江になっているところにボートを出すと、みんなを乗せて海に出る。

ボートは、ほぼクルーザーのような形で船倉に部屋を4つ備えていて、寝室や食堂更衣室にシャワールームとなっている。


動力はヨットのような帆と今回開発した、魔道具のジェット排水型の推進装置だが、効率が悪く30分ほどでカートリッジの魔石を消費する。


それでも海面を飛ぶように走るボートは、皆の興奮を高める一役となったが、船酔いについては効果はなかった。


陸に戻り、癒しの魔法で船酔いを改善すると、BBQだ。

地引網で海の幸を大量にゲットした僕は、貝類やエビに魚にと調理を始めた。

初めて見る食材にちゅちょしていた、メンバーも一口口にすると争うように食べていたのはおかしかった。



塩を落とすために、バンガロウのシャワーを使いサッパリしたしたメンバーに、冷たい氷で作ったかき氷を食べさせる。

氷自体赤の季節には貴重な物、魔法師の特権のような食べ物だ。


「お兄様、このかき氷という食べ物は冷たくて美味しいですわ。」

クレアリーナがそう言う、本当に妹のようになってきた。


専属の侍女らもかき氷を堪能していたようで、舌の色がそれぞれ違っていた。


海に家に3日ほど遊んでから僕らは、王国に戻った。

ちょうどお母様達が屋敷に戻った時と同じになった。

数日情報交換をした後、僕らは避暑地の別荘に飛んだ。



ーー  ケンドール公爵夫人   side



避暑地での派閥固めを終えて戻ってきた私たちは、同じように海に遊びに行っていた息子らと屋敷で会うこととなった。


息子は転移魔法で一度訪れた場所ならば、ある程度の人数を連れて移転できるそうだ。

今は遊びに使っているが、末恐ろしい魔法である。


最近教会関係者がしきりに

「魔法が生まれました。魔王に備えましょう。」

と声高に言っているようだけど、どこに魔王がいるのやら。

不安を煽ってお金を無心することしかしない教会など、誰が信じるものですか。


私は日に焼けるこの赤の季節対策の薬を息子に依頼すると、時間が夜に変わった社交に出かける準備を始めた。



「おかしいわね。もうとっくに魔王が暴れ始めている頃なのに・・・私が嘘つきみたいに思われるじゃない。」

と何処かでダメな女神がぼやいていた。

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