第19話 白の休みと行軍訓練

ーー 海外旅行を終えて、学園の日常。



旅行を終えて学園に戻ると、既に領地対抗戦は終わっていた。

「それで結果は?」

「もちろん優勝です。流石に僅差ではありましたが。」

と寮長が教えてくれました。


もう直ぐ白の休みが来ます。

その後は、行軍訓練。今年は昨年の反省を踏まえて、十分な準備をすると聞いている。


グスタング王国のお土産を学友に渡したりしながら、学園の何でも無い日々を満喫していた。

「こんな日々が僕の求めていたライフだよ」

と呟きながら。



ーー 白の休み。



寒さが強く感じられる日が繰り返されて、雪がちらつき始めた。

雪が降るのは珍しいようだ。


王都を離れ、ケンドール公爵領に戻った僕とお母様。

「お母様は王都を離れて良かったのですか?」

と尋ねる僕に

「もちろんよ。貴方のいない王都には魅力がありませんから。」

と親バカを発揮する。


今回も別の馬車にレリーナたちが同乗している。

あまりにも若く美しくなったお母様と同じ馬車では、居心地が悪いようだ。


今回の僕の目的は、公爵領で育った人材に中から子爵領に採用すること。

その他は、公爵領の森の魔物狩りだ。

魔物は適度に駆除していないと溢れ出てスタンピードを引き起こすのだ。



ーー マッケンジー君の大活躍



僕はケンドール公爵の寄子のセルグナ伯爵家の三男マッケンジー男爵(法衣)だ。


今年8歳の僕の体は、見た目15・6歳に見えるほど成長している。

昨年から今年にかけてエストニア子爵様達と、大きな経験をしたのがその理由だと言われている。

他にもエストニア子爵様以外は同じように成長しているだけに、エストニア子爵様には申し訳ない気持ちがある。


そんな僕が領地対抗戦で代表で実戦大会に出場した。

これまでの恩を返すためにもエストニア子爵様の留守を預かる皆んなは頑張ったと思う。


僕も騎士団長の職に着くお父様に稽古をつけてもらい、自信を持って臨んだ大会。

結果は完全勝利と言っていい結果だった、どれはそうだろう僕らは80階層のダンジョンを踏破しているのだ。

僕らの誰が出ても優勝だった気がする。

お父様やお母様も僕の活躍を見て大変喜んでくれた、これも親孝行だと思い来年の活躍も誓ったのだった。


噂話であるが、ダンジョンの功績で子爵になりそうだとお父様がこっそり教えてくれた。

僕も領地持ちの貴族として独り立ちすることが現実となりつつある。

もっと勉強に剣に魔法にと努力をしようと決意した僕だった。



今回は、お母様も一緒に領地に戻っているが、王都の社交パーティーで何かがあったようでウキウキしているようだ。

帰る途中にケンドール公爵の屋敷に立ち寄ると言っていた。



ーー  社交の場が王都からケンドール公爵領に。



生まれ故郷に帰るとやっぱりホットするよな。

そんな事を思いながら地元の川に魚釣り!

「思い出した!海の幸を沢山持って帰っていた。」

釣り竿を慌てて収納すると駆け足で屋敷に戻る。


厨房に駆け込み、料理長に取り出した魚の料理をお願いする。

「これはこう言うふうに捌いて、これは塩を振って。」

などと事細やかに指示をすると、調味料の調合に精を出す。

そう、醤油や味噌にみりん。

大豆はかなり採れるようになっていた。

時間を調整できる収納魔法が完成してから考えていたのだ。

甘味の強い刺身醤油が好むだった僕は、醤油を5種類ほど作り始めた。

思い出したように乾燥させていた昆布と「いりこ」に似た小魚を取り出す。

出汁をとり具材を煮込むと味噌をとき味噌汁の完成だ、熟成がまだ不十分だが問題なく美味い。


温かいうちに収納する、この時のために焼いていた茶碗や小皿に小鉢を取り出し並べる。

米は時々炊いていたが今日は特別に自分で作ったブランド米(エストニア米)を炊いている。


昼食の時間が来たので、料理長と料理を盛り付けて食堂へ。

既に席について待っていた、お母様の前に並べ始める僕。

「今日のお料理はエストが作ったの?」

「はい、先日向かったグスタング王国で購入した海の幸を使った料理です。お母様のお口に合えばいいのですが。」

と言いながらお箸とスプーンとを並べて

「使いやすいものでお食べください。」

と言うと僕もテーブルに着いた。


手を合わせ思わず「いただきます」と言ったのは、ご愛嬌です。


「なかなか美味しいわねこれ、でも小骨が多くて上手く食べられないわ。」

お母様は焼き魚に苦戦しているようだ。

僕は箸を使って使って食べているので問題ないが・・人に出す時はメニューを考え直そう。


久しぶりの和食に満足した僕は、また物作りに没頭していた。


平和で何もない日々がすぎるなか僕は時々、森に魔物狩りをしに行っていた。

森でレリーナやセリーナに出会うこともしばしば、2人とも身体が鈍るのを恐れているようだ。


もう直ぐ白の休みも終わる、学園に戻れば直ぐに行軍訓練だ。

今年は初等科1〜3年合同で行うと聞いている。

「今年用に回復薬や治療薬を多めに作っておくか。」

と呟きながら作業をしていると、ダンジョンの最下層で手に入れた魔法書の事を思い出した。

「転移魔法の練習もしておこうかな。」

と言いながら魔法書を取り出して読み始める。


その日から3日ほど練習に明け暮れた後

「何とかできるようになった。これなら移動時間が節約できてかなりいいな。ただ転移ポイントを決めないといけないようだな。」

独り言を言いながら僕は、使い勝手を確認していった。



ーー  王都へ



学園に戻るため、王都に向かった。

お母様は地元で社交が忙しいようで、今回は同行していない。


何時ものメンバーである、レリーナよセリーナにミリアを同乗させて馬車は王都へ向かっていた。


すると途中で馬車が止まった、何事かと御者に尋ねると

「この先で森から出てきた魔物が暴れたようです。怪我人が出ているようです。」

と教えてくれた。

「この辺りはどなたの領地だったかな?」

と僕が呟くと、ミリアが

「確かメンドー男爵の領地だと思います。あまり魔物狩りをしていないと噂を聞いたことがあります。」

と教えてくれてその情報元が冒険者ギルドの受付嬢だと教えてくれた。

意外とミリアは交友関係が広いようだ。


しばらくすると、冒険者が魔物を退治したようで馬車が進み始めた。

この時僕はこの後に起こる事件について予想もしていなかった。



ーー 学園生活2



「皆さん。今回から行軍訓練は1〜3年生が一緒に行動することになりました。人数は10〜15人です、早めに決めてチームごとに書類を提出してください。」

今年の引率をする教師が行動に集まった初等科の生徒に向けて声を上げると、プリントを配り始めた。


僕はいつものメンバーに誰を加えようかと見渡していると。

向こうから来ました、王女と公爵令嬢のペアーにそのお友達のようです。

マッケンジー君が小声で

「女性の比率が高くなってきましたね。男も入れたいとこですが・・誰もきそうではないですね。」

とクロニアル君と話している声が聞こえましたが、僕はハーレム願望はありませんよ。


元のメンバー6人に一年生が4人で10人のパーティーができあがりました。

書類にメンバーを書き込み教師に提出して、後はパーティーメンバーで必要なものを揃えたり、しようとしたところで。

「エストニア子爵様よろしいでしょうか。」

と声をかけられた。

トラザール王国から留学しているクルスタル王女とそのお仲間である。

この様な学園行事には、基本留学生は参加しないのですが領地対抗戦を見た王女が大変気に入った様で。

「私達も行事に参加したいですわ。」

と学園長に申し立て、

「エストニア子爵のチームなら良いでしょう。」

と言われたと説明をされました。

「分かりました、それでは追加のメンバーを申請しておきましょう。今ちょうどそれぞれが準備するものを指示していたところです。一緒に揃えてください。」

と言いながら注意点などをおさらいしてその日は終わった。



ーー 行軍訓練1



訓練日の朝僕らは目的地の広場で最終確認をしていた。

「皆さん装備を確認してください。防具の付け具合は問題ないですか?靴や手袋はサイズが合っていますか?」

と確認しながら僕は地図を見ながら俯瞰の魔法で、森全体を眺めた。


「うーん。魔物が少し多い様な気がぢますが・・大丈夫ですね。」

引率の教師の合図で、それぞれ森に入る生徒たち。


「僕らも出発しますよ。」

声をかけて歩き出す。


初めは早い時間で昼休憩を始める。

「ここでお昼にします。準備を手伝ってください。」

と声をかけながら次々に道具を出してゆく僕。

元のメンバーを中心に他の子に教えながらテントを張ったり、テーブルや椅子を揃えてから料理を出す。


「まだ湯気が出ている!こんな料理を森の中で食べれるなんて!」

スバルと言うトラザール王国の男の子が感心している。


食事を終えた後僕はこれからのルートを皆と確認する。

「この森は魔物が予想以上に多い様です。初めての人たちははぐれたり先行しすぎに注意してくださいね。」

と再度注意をして道具を片付けると、再出発する。


途中、魔物と軽く戦闘しながらその日の夜営地点に到着し準備を始める。

まずは周囲に結界の魔道具を設置し、大型のテントと2人用のテントを取り出して

「基本2人人組でテントを使ってもらいます。基本必要がありませんが、見張りの体験をするためです。」

と説明する。

さらに僕はトイレ用の小屋とお風呂用の建物を収納から取り出して、中を確認しながら魔道具を起動する。

「どれだけ収納できるんだ!」

「この建物は何だ?」

と言う声に

「行軍において重要なことは、「睡眠」「食事」「安全」の3つです。そのためには最大限の努力を惜しみません。これは疲れを取るためのお風呂に女性のためのトイレです。テントの中には寝心地の良い寝具が用意されています、各々確認してから前半と後半にチーム分けして行動をしてもらいます。」

と言いながら2チームに分けた。


暗くなる前に準備が終わった僕らは、入浴と食事を済ませると見張り役を残してテントの中に。


夜中に起きて見張り役を交代する。

スバル君が僕のそばに来ると

「セガール王国ではここまで装備が充実しているのですか?」

と聞いてきた。

「これは国家機密の様なものなんですが・・では無いので教えますが、これらは僕の趣味で作ったものなので知りません。」

と答えると

「ええ!これらはエストニア子爵様が個人で作られたものなのですか?」

と驚くスバル君に

「他のパーティーメンバーと行動していれば、地味に非常食と寝心地に悪いテントと重い荷物に疲れた身体が、明日以降ダメージを重ねていたでしょうんね。」

と教えておいた。


時々魔物が結界に衝突しては逃げ出していた。



         ◇


2日目。


天気は快晴です。

早朝の肌寒い空気を感じながら朝食を摂る。

30分ほどで準備をして歩き出す。

女性たちはお風呂などで仲良くなった様で、楽しげに会話しながら進んでいく。

当然元のメンバーは、周囲への警戒は怠らない。

時々魔法や剣で討伐しながら目的地へ向かう。


昼休憩を経てもう直ぐ今日の野営地に近づいたこと僕は、30人ほどの集団が反対側から森に入ってくるのに気づいた。

『何の集団だろう』と思い俯瞰の魔法で確認すると、盗賊の様だった。

「不味いな。」

と呟く僕の声を聞きつけたマッケンジー君が

「何かありましたか?」

と聞いてきた

「うん、この森に盗賊が30人ほど入ってきた様だ。どこまで近づくかわからないけど・・もしもの時は片付けるよ。」

と小声で言うと

「分かりましたメンバーに伝えておきます。」

と言ってクロニアル君達に伝えていた。


順調に野営地に着き準備を始める。

僕は時々、盗賊らの位置を確認していたが、どうやら盗賊の棲家がこの森にある様だ。

学園のコースと盗賊の棲家が交わることはない様なので、今回は戻ってから連絡をすれば済むかな。

とその時は思っていました。



            ◇



3日目。


今日が目的地への最後の行軍だ。

疲れも見えないパーティーメンバーを見ながら目的地を目指す。


盗賊らは森を出て仕事に行った様だ。


昼食を摂り最後の行軍で目的地に着いた僕ら、疲れがないだけあって一番乗りの様だ。

適当な場所にテントなどを張って、野営の準備をする。


盗賊が戻ってきたな・・ん!・人質の様な女性が3人綱で縛られ棲家に連れていかれそうだ。


僕は魔道具の結界をあり終わると。

マッケンジー君それとミリア嬢とレリーナ嬢を集めて盗賊の棲家を強襲して人質を助けることにした。クロニアル君とセリーナ嬢には個々の守りを頼む。

「それでは作戦通り行くよ。」

と言うとそれぞれが黙って役割をこなしだす。



「見えてきました。あそこが棲家の様です、見張りは3人。」

マッケンジー君が様子を見て戻る。

砦の様なものを作っている盗賊ら。


人質を最初にどうにかしたいな、あの小屋のようだがと俯瞰を使って見ていた僕は

「入口の反対側、奥の方に人質の居る小屋があります。そこをミリアとレリーナに向かってもらいましょう。裏から侵入してください。道具はこれを使って。」

とマントを取り出して2人に着せる。

「魔力を流してみてください。」

と言うと2人が頷き、その後に姿がぼやけて見えづらくなり出した。

「成功ですね、これは認識がしづらくなるマントです。特に音を立てたりしなければ見つからないでしょう。」

と説明し、マッケンジー君に向かい

「僕らは正面から乗り込みますよ。その騒ぎに乗じて人質を助けてもらいます。できるだけ派手にいきましょうか。」

と言うと二手に分かれた。


日が落ち始め薄暗くなる森。

盗賊の棲家の出入り口に青年と少年が2人近づいてきた。

「おい、止まれ。どこから来た。」

見張りをしていた盗賊が声をかけながら別の者が仲間を呼びに向かう。

『意外と組織だって居るみたいだ。』そう感じながら僕は

「おじさん達悪い盗賊でしょう。僕らはそれを退治に来たんだよ。」

と言うとさらに門に近づいた。


「止まれ!」

と言う盗賊を無視して扉まで行くと、おもむろに扉を蹴る。

僕に蹴られた丸太作りの扉は、紙のように吹き飛ぶ。

「何だこいつら?おい、弓で射殺せ!」

と応援の仲間に支持する男が、ここのカシラかな。


飛んでくる弓を魔法で防ぐと、マッケンジー君が剣で盗賊を切り捨ててゆく。僕は雷撃で派手に攻撃を繰り返すと、奥の方で合図が上がった。

うまくいったようだ。

「殲滅だよ、マッケンジー君。」

と声をかけて、さらに盗賊を倒してゆくと10分ほどで殲滅できた。

「人質は大丈夫?」

僕の質問に

「問題ない」

と答えるミリア嬢。


その後は盗賊の撃ち漏らしがないか確認して、お宝を収納して野営地に戻った。


無事野営地に戻ると、メアリースクイブ王女らが心配顔で待っていた。

「大丈夫でしたか?その女性らは?」

と言う質問に

「問題ありません。助け出した人質です、できれば彼女らにお風呂と温かい食事を与えたいので手伝ってくれませんか?」

と言うと

「もちろんです」

と答えて色々と手伝ってくれた。


人質になっていた彼女らは、生きた心地がせずかなり疲れていたようで。

食事に後は死んだように眠りについたようだ。

引率の教師に連絡を入れて、兵士を呼びに向かわせた。


次の日の朝、駆けつけた兵士に女性らの身柄を預け、盗賊の罪かの場所を伝えた。残党がいるかもしれないからだ。


今回の行軍訓練は、盗賊の殲滅のおまけ付きだった。


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