第18話 海外旅行と海の幸

ーー 海外旅行。


海を進むわけではありませんが、海外旅行に行くことが決まりました。

お父様も薬については、人に手に私のではなくお前自身が持っていくことが大切だ。と言われて国王の認可状と親書を持って行くことになった。


時間があまりない状況から、出発は5日後になりました。


グスタング王国はセガール王国から見ると南側に位置する海に面した王国です。

海の幸が手に入れば新たな料理が・・・と思いながら僕の馬車でグスタング王国に出発することになりました。

どうやらダイアナ王女とルビー嬢のたっての要望とお聞きしています。



           ◇


5日後、出発の日。


「これで忘れ物はありませんか?」

エストニア様が声をかけますが、私はそれ以上に私たちの荷物を入れた袋の方が気になります。

用途と人に分けてお貸しくれましたが、魔法袋です。こんな高価なものを侍女や共の者までお貸し下さるなんて。


お陰で荷物も少ない上に空間拡張のされた馬車の中はとても過ごしやすいのです。

馬車の中は幾つかの小部屋に区切られて、同じ馬車で移動する私達の事を思われた改装のようです。


「いつ乗り込んでもこの馬車は快適ですね?何か秘密があるのでしょうか?」

とお聞きすれば

「ああ教えていませんでしたね。この馬車や屋敷などには私が作った魔道具「エアコン」が取り付けられていて、快適な空調を保っているのです。」

と言われましたがほとんど理解できませんでしたが、魔道具もお造りになるようです。


そして馬車で15日ほどの旅でしたがその中でいくつか驚いたことがありました。

・収納魔法で取り出されたバンガローという建物が野営時の宿泊所で、ハッキリ言ってどこに宿泊書よりも立派でした。

・バンガロー内のお風呂と寝室これが天上のものかと思えるほど極上でした。

・収納から取り出される品々、そしてその高品質さ。


どれをとっても真似もできないものばかり。それなのに使っているエストニア様は、「それほど珍しいですかね。」と気にした風もないご様子で。


私はエストニア様の事を図りかねていました。



もう直ぐでグスタング王国の王都が見えるところまで来た時。

エストニア様は、広がる農耕地に降り立ち土を手にしていました。



           ◇


グスタング王国王都に着く。


「長旅お疲れでしょう。今宵はごゆっくりされてください。」

迎えに来ていた王家の家令セバスにエストニア様は

「体を清めたら直ぐにでも王妃の御容態を確認させてもらいます。私がここで手渡しするのもおかしなことでしょうが、親書をお持ちしましたので宰相にお渡しください。僕は最重要事項の王妃様の病気治療を行いますので。」

と言うと本当に家令のセバスに親書を渡し、

「お風呂はどこです?清めます。」

と言われたのです。その時私はエストニア様が本当にお母様の病気を治しに来られたと確信しました。

私はセバスに親書を頼むと侍女にお風呂の準備を急がせ、お母様のお部屋に急ぎました。


「お母様、お加減は如何ですか?今日はセガール王国からお母様のご病気を治すお医者様をお連れいたしました。今準備してもらっておりますので後でお連れします。」

と声をかけるとお母様は

「もう諦めております。貴方も自分の為に生きてください。」

と諦めたようなお言葉を・・大丈夫です、きっと。




          ◇



王妃に面会する前に僕の身体検査と薬の鑑定が行われた。

「!・・・信じられませんが・・エリクサーに間違いありません。」

と鑑定受け、ダイアナ王女の後をついて王妃の部屋に。


「お母様、お医者様です。」

と声をかけるが空な目をした王妃はあまり反応を示さない。


僕は

「失礼します。」

と言いながら、僕は鑑定をかける。


「ガン、全身転移、衰弱大」

と表示された、本当に時間がなかったようだ。

丸薬を取り出し王妃の口に、その後水を飲ませると・・・。

全身が淡い光に包まれ、しばらくすると治る代わりに顔に生気が戻る。

僕は体力が戻るように回復魔法をかけると、ダイアナ王女に

「闘病で心身共に疲れが守られます、可能であればこれを使って疲れを取り除いた後に秘薬を使用してください。」

と入浴セットと若返りの秘薬を手渡しその場をさった。


ダイアナは横でその様子を見ていた為、エリクサーのおかげで病巣が癒え回復魔法で体力も戻ったことがわかったが。それ故に年老いて見える母が不憫であった、そこにあの秘薬をいただきエストニアに感謝しかなかった。

エストニアが席を外した後に母に声をかけると。

「ダイアナ・・何だかとても気持ちか良くて・・治った感じがするのよ。もうダメなのかしら。」

と言うのを

「しっかりしてください、お母様。病気は治りました、そしてこれが見えますが?これは・・・です。お風呂に入り試しますよ。」

と小声で母に伝えると、起き上がった母を連れてお風呂へ。



           ◇



治療を終えて半日後。


「エストニア様、王妃様が夕食にとお誘いがありました。如何ですか?」

と家令が嬉しそうに話しかけてきた。

彼も王妃の病気に心を痛めていたようだ。

「お受けします。そこで一つ提案ですが、ダイアナ王女も大好きなデザートを提供したいのですが如何でしょう?」

と言うと

「話は伺っています。ぜひおながいします。」

と応えるので、厨房に向かいいくつかを提供して会食の場に向かった。


席について待っていると、ダイアナ王女を連れて王妃が姿を見せた。

そこに忙しそうな国王が現れる。

「!そなたは・・王妃?・・病が快癒したと耳にしたがどうしたことか。ワシの目がおかしいのか?あまりに若々しい王妃が・・・。」

それ以上の言葉が出ず、気にしながら席についた。

混乱している国王に僕は挨拶を行う

「初めまして、ダイアナ王女の学友でセガール王国のエストニア子爵です。国王にお目にかかれた幸運に感謝いたします。」

と言うと

「わしはグスタング国王である。その方が王妃に病を癒したもので間違いないか?・・そうか心より感謝致す。」

とお礼を言われた。


その後ダイアナ王女とおうひが席に着く。

僕が改めて挨拶をしようと席を立つと、それを手で制された王妃が

「あなた様にそのような不敬はできませぬ。今回ばかりはダメだと覚悟しておりました。貴方のその神の如き力のおかげで病気はもとより老いまでも取り除いてもらい・・。感謝しかございません。ありがとうございます。」

と僕の前に立たれると最大の感謝をされた。


「何!病と共に老いまで取り除いたと、だから若々しいのだと・・そんなことが可能なのか?」

国王の混乱が手に取るようにわかるね。


その後は楽しげな王妃と王女を中心に食事が始まり、デザートのタイミングで

「国王並びに王妃様の手前ですが、私の拙い料理を披露したいと考えております。」

と言うと係の者に合図を送った。

「まあ!エストニア様、あのデザートをお持ちになられたのですね。ありがとう存じます。」

と王女が答えると王妃に何事か話をしていた。


運ばれるショートケーキの数々と50年もののワインとウイスキー。

「国王様、私の領地で作ったお酒です。どうぞお楽しみいただければ幸いです。」

と言葉を添えた。


宝石のようなショートケーキが光り輝くその横で琥珀色のウイスキーと赤ワインが、見るものの心を掴む。

「これは美味そうな酒ではないか、誰かワシにアレを。」

国王がそう言うと毒見係が毒味をした後国王に。

ただ毒味係があまりの驚きの顔をしたため、しばし時間がかかったものの。

グラスに注がれたワインを口にする国王、

「美味い」

と一言言うと、ウイスキーにも口を。

「ほおー。何ともまろやがで酒精が強い。これは金貨以上の価値がある」

と呟く。

お気に召したようだ。


その横では王妃と王女が楽しそうにショートケーキを選んでは食べていた、その様子を見る国王にも自然と笑みが。


楽しい食事会を終えて与えられた部屋に戻った僕の元に、ルビー嬢がダイアナ王女と現れて

「エストニア様、イジワルです。私の存在を忘れ去り、皆でショートケーキを食べられたのですね。」

と無口のはずのルビー嬢に責められた、僕はすかさず。

「忘れてはいませんよ。これがルビー嬢のケーキとお土産のお酒です。共のものに持ち帰るようにお頼みください。」

と言うと、先ほどの恨みがましい瞳がくるりと喜びに変わり

「ありがとう存じます。」

と言うと品物を受け取り姿を消した、残されたダイアナ王女が

「私は幸運でした。貴方様にお会いできて感謝します。」

と言う言葉を残して去っていかれた。



ーー グスタング王国の病を癒す



その次の日に僕はダイアナ王女に頼み事をした。

「この国の土地の確認をさせてください。」

と申し出ると

「貴方さまのお心のままに。」

と意味深な言葉で許可をくれた。


馬車に乗り王国内の特に農村地を巡りながら、土の状況を確認する。

この世界は魔力のある世界、土地にも魔力が含まれている。

その為腐葉土をすき込んだり連作を避けたりと言うことをせずとも、作物は育っていた。

そのため、数年から数十年に一度の魔力不足の際に収穫量が激減することがある。

その事を僕はなぜか知識として知っていた。

当然地球のような農業を指導することになる。

僕は計画書なるものを書き終えると、ダイアナ王女を通じてグスタング王国の宰相に献策した。


興味を持った宰相が連日、農相と思われるものを連れてきて僕の説明を受ける。

「効果の出るまでに時間がかかるでしょうから、それまでは我がケンドール公爵領から輸入しませんか。幸い公爵領では近年豊作でかなりの蓄えがあります。」

と伝えると

「直ぐに手配いたします。」

と忙しそうにし始めた。




ーー グスタング王国の海の幸



その後僕が楽しみにしていた海を見に行くことになりました。


ダイアナ王女とルビー嬢が同行しています。

馬車で3日で潮の匂いが強くなり、見渡す限りのお海原を目にして僕は感動を覚えた。

「素晴らしい。」

その様子を興味深く見ていたルビー嬢が

「海の無い国の方にはそこまで驚きですか?」

と。

「いや懐かしく思ったんですよ、それよりも市場などは無いのでしょうか?」

と尋ねると御者が進路を変えた。

しばらくすると、加工場のような場所に。


馬車から降りて覗くと、網にかかった魚や海藻を選り分けていた。

どうやら「いりこ」のような小魚と海藻は廃棄しているようだ。

僕はそこに居た漁師たちに廃棄される海藻類を銀貨を渡して買い取った。


その様子を見ていたルビー嬢が

「何をされるのですか?ゴミのようなもので。」

と不審な様子。

僕は時間をすすめられる収納に乾燥の魔法をかけた後収納して

「僕の趣味ですから。」

と言葉を濁した。


その後は刺身に合う新鮮な魚や塩焼き用の魚などを大量に購入して戻ることにした。


グスタング王国での僕の要件は全て完了し、後は戻るだけとなりました。

国王を始め王国内の高位貴族がパーティーを開催してくれた。

滞在中も度々ルビー嬢が訪れ、ショートケーキを無心する姿が餌付けされたリスのようだった。


そしてセガール王国に戻る日、国王から

「そちの献身的な行いに王国は爵位を持って感謝を表すものとする。」

と法衣であるが伯爵位を授けてくれたのだった。

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