第20話 森の異変

ーー  行軍訓練から戻って、それぞれの感想。


ーー メアリースクイブ王女


今回の行軍訓練は予定通り、エストニア子爵様のパーティーメンバーに入れてもらえましたわ。

お兄様に聞いていた通り、装備や収納魔法の活用がとても素敵でした。

食事もお風呂も寝具もどれも一流の宿以上で感激しましたわ。


ただ歩くだけの3日間でしたが、エストニア子爵様の道具がなければきっと大変だったとおもますわ。

それは他のパーティーの子達を見ればよく分かる事実でしたわ。


しかも最後には盗賊団を潰して人質の女性らを救うなんて。

まるでお話の王子様みたいでしたわ。


お城に戻ってお兄様やお母様にお話ししなければ。



ーー クリスタル王女


今回私のわがままで、セシルやスバルについて来てもらい、行軍訓練というものに参加してみました。

学園長がエストニア様のパーティーならば許そうと言われた真意がよく分かりました。

「異常」なのです、全てが。

スバルも世間話をしながら情報を聞き出したと言ってましたが、あれだけの魔法装備や収納された道具を見れば、この国の実力がわかるというものです。


この国と戦争は絶対ダメです、戦う前から結果がわかるほど明らかです。

しかしあのお風呂や食事は私の国でも準備できないでしょうか?




ーー セガール公爵家 ルシリーア嬢



「それでどうであった、あの息子は。」

お父様が聞いてきました。

「聞きしに勝る人物です。先ず収納力が頭抜けていました、収納されたものも予想を遥かに超えるものばかり。あれを使えれば、行軍なんてただの散歩かピクニックです。

最後には30人の盗賊団を4人で殲滅して人質を助け出していました。」

と説明する。


「そうか、本物か。」

お父様はそう言うと、考え込んでいました。


私は部屋に戻ると、帰り際に頂いたケーキを取り出してこっそり食べるのでした。あー美味しいわ。



ーー 学園生活3


僕はいつものように図書館で読書をしていた、自学習の僕にはここが一番過ごしやすいのだ。


今年の行軍訓練について感想と改良点を報告しなさいと、学園長に宿題を出されました。

今回僕は他の生徒の動向をあまりみていないので、ただかなり疲労困憊のようでしたので装備を充実するように報告しておきましょう。

それに魔物が少し多い気がしました・・・。


僕は時折、王都の商会で買い物をするのですが。

豪商の息子程度の服で買い物をすると、そこまで気にされないようで王都内の情報がよく聞けます。


もう直ぐ冬も終わりの頃、生き物が増えそうです。

青の休みももう直ぐ今度の休みにはどこにいきましょうか。


お母様が王都に出て来られました、自領での社交が終わったようです。

以前と違って王都に滞在することが多くなったようです。

お父様もよく仕事で王城に詰めることがあるので、お母様と生活するのは楽しそうです。



ーー  王都の冒険者ギルド



僕は収納魔法と収納袋で収納していた魔物を買い取ってもらうために、ギルドに来ています。


すっかりダンジョンから先の魔物を死蔵していたのです。


「かなりの量があるんだ、今日はどれくらい買い取れるか確認してほしい。」

受付の初めて見る職員に声をかけた。

しばらく顔を出していなかった、僕を知らない冒険者やギルド職員がいるようだ。


「買取?薬草か何かなの?」

受付の職員が判断に困り近くにいた先輩職員に尋ねに向かった。

今までなら「早く出しなさいよ、どうで薬草かスライムでしょう。」となるところが、頭ごなしで怒鳴りつけないね。

先ほどの職員が先輩と走るようにきた、僕に気づいたようだ。

「失礼いたしました子爵様。裏にご案内させますので。」

と言う先輩職員に案内されて収納していた魔物の一部を買取に出した。


査定が済むまで食堂で暇を潰そうと、ギルド内に戻った僕はギルドへの依頼が気になり掲示板の方に。

「緊急告知。森の魔物の生息域に変動あり、依頼を受ける冒険者は注意すること。」と、赤文字で書かれた貼り紙に目が行く。

どうも今年は魔物が多いようだ。


掲示板を見ていた僕の後ろから声が聞こえた。

「西の中央大森林の話聞いたか?王都のダンジョンが踏破された頃から、魔物が増えたと向こうの冒険者が話してたぜ。」

と冒険者ならではの情報のようだ。

しかしダンジョンが関係しているとは面白いな。


僕は1ヶ月ほどかけて魔物を買い取りに出した。

買取で得た報酬をパーティーメンバーで分けた後残りを、子爵領地で奮闘する僕直属の家臣にボーナスとして送った。

休みの時に視察に行こうかな。



ーー 青の休み。



休みに入ったので僕は久しぶりに子爵領の視察に赴いた。

迎えにきたのは学園の先輩だったミカエル騎士爵だ。

「お久しぶりです。エストニア子爵様、今回は何を中心に視察されますか?」

仕事が板についてきたミカエル騎士爵は、自信ありげに僕にそう尋ねた。

領地内のことをかなり詳しく調べているようだ、僕の目に間違いはなかったようだ。

「騎士爵の気になる事又は見せたいとこをお願いするよ。」

と言うと「かしこまりました。」と答えて馬車を走らせた。


行く道々でミカエル騎士爵は、目につくものを説明してくれる。


「ここが計画書にあった温泉開発地区です。線引きは終わり現在急ピッチで建設が行われております。そこで一部建物の変更をお願いしたいと・・これが変更案です、いかがでしょうか?」

と、変更理由と変更の規模が書かれてある。

それは宿泊施設についてだ、街道整備が進めば計画以上に人の往来が予想されるため宿泊施設の規模拡大だ。

「分かりました、変更を認めます。資金は足りていますか?人ではどうですか?」

の質問に

「資金は十分足りています。最近では食料の生産量が増えると共に入植者も増えてきており、街は大変賑わい税収も増えておりますので。それと先日の臨時手当(ボーナス)は家臣一同喜んでおり、仕事の熱意が上がっております。」

と僕の不在の埋め合わせの一手が上手くいっているようだ。


その後いくつかの計画を見直したり、前倒ししたりして挨拶を終えた僕は自分の街を見に出かけた。

お供がゾロゾロと付いて来そうだったので、

「これじゃいつもの状態が確認できないでしょ。お供はミカエル騎士爵ともう1人程度でお願いしますよ。」

と言いつけて歩いて街に向かう。


後から普段着に着替えてきたミカエル騎士爵らが合流する。

街の開発はとても順調のようだ。

広く平らなメイン通りを挟むように、ここで広げようとする商品を販売している商会が並ぶ。


メインの道は領主邸に真っ直ぐに続き、丁字に突き当たり分かれて迂回するように領主邸と行政棟に繋がっている。

メイン通りの丘側は貴族や家臣の住宅地として大まかに割り振っている。

反対側のメイン通りに近い場所に商会関係者を始めとする、商人街。

その裏側に領民街が広がる予定だ。


スラム街を作る気のない僕は、初めから低所得者向けの長屋を近くに兵士の屯所を設けている。

生活するのに必要な衣食住の最低限は守ってやるつもりの僕は、公金で井戸や上下水道の設置と、大衆浴場の建設を最初に手をつけていた。


当初この領地の人口は1000人程度であったが、既に4000人が住み始めまだ増えていると報告を受けた。

そのためか日用品が飛ぶように売れている状況で、商会もその品揃えで商売をしているようだ。


商会の中に3店舗ほど僕直轄の店がある。

僕の趣味で作っている商品を販売する店だ。

・女性用コスメの個人販売

・魔道具に販売設置

・酒の販売所

少しずつ増やしてゆくつもりだが、人材が育つのを待ちながらの計画だ。

するとミカエル騎士爵が

「エストニア子爵様ここのお酒知ってますか?とても美味しいと評判で、入荷すると直ぐに入り切れるんですよ。王都からも仕入れに来る料理店があるそうです。」

と嬉しい情報をくれた、後で差し入れしておこうかな。


温泉開発地区に向かう、この世界では異世界のような雰囲気の街を形成している。

裏側に小高い丘があるのだがそこを開発して小さなお土産屋の店を建てて適当な散策コースにしている。

最終的には頂上に作った鳥居をくぐると、神社形式の建物が建ててあるのだが・・。

この世界の人では神社は理解できないだろうが、元日本人の僕としては懐かしさと安心感がるので。

鏡を作って祀っている。


狛犬はこの世界らしくフェンリルをあしらっているけどね。



「そう言えばこの頂上に不思議な建物がありますが、エストニア子爵様の指示したものですか?荘厳な雰囲気があって軽い気持ちでは不思議な形の門をくぐれないと聞いています。」

ともう1人のお供であるウルトが質問してきた。

「あれはね僕の心の故郷の形なんだよ。」

と伝えると

「それではしっかり管理いたします。」

と言ってくれた。


ウルトは公爵領で人材育成の一環で保護した孤児の1人だ。

両親を病で亡くし、スラムのような場所で死にかけた所を僕が見つけて保護したのだ。

それからは必死で勉強して恩を返すのだと言っていると聞いている。


その後も隅々まで視察を数日間実施して、僕は公爵領に戻って行った。



ーー 魔物狩り


公爵領に戻るとたまたま戻って来ていたお父様に呼ばれた。

「エストニアお前に依頼したいことがある。領内の森で魔物はかなり増えているようだ。」

と言うことでその討伐を依頼して来たのだ。


「お父様、最近至る所で魔物の増加が報告されています。何か大きなことが起こりそうな気がします、過去の情報に同じようなことはありませんでしたか?」

と尋ねると、考え込んでいたお父様がハッとしたように顔を上げ

「スタンピードの話にそのような記述があったぞ。ここはお前に任せるわしは直ぐに王都に向かう。」

と言うと慌てて王都に出発して行った。


僕は公爵領の冒険者ギルドに向かった。

そう言えばここに来たのは・・初めてだったかな。



         ◇



公爵領冒険者ギルド。


ギルドの建物に入ると活気があった。

依頼を終えた冒険者が酒盛りをしたり、素材の買取を依頼したりと王都の冒険者とは少し違う感じがする。


受付に向かい受付の女性に

「依頼を出したい。」

と言うと

「どんな依頼かな〜。お姉さんにわかるように話してもらっていいかな?それと依頼はお金がいるんだけど・・・お金持ちのようだね大丈夫か。」

と一枚の紙を差し出しながら

「わかる範囲でいいからここで書いてもらっていいかな。」

と言った。


僕の存在はそこまで知られてないのか、少し安心しながらも記入して行くと。

後ろに並んでいた冒険者が

「押し早くしろよ。俺たちはガキの用事で来てるのと違って、大きな依頼をこなしているんだ。」

と絡み出したが、公爵領内での依頼をこなしてくれているのならと思い。

「僕は後でいいので先にどうぞ。」

と移動すると、又別のところから声が。


「待ちなさい。その方に無礼はこの私が許しません。」

と受付の奥から聞こえて来た。

目を向けるとギルマスの部屋の扉が開いており、とても綺麗な女性が・・エルフのようです。始めて見ました。

冒険者が相手がギルマスと分かったようで、

「割り込んだつもりはないんだよギルマス。小僧が譲ってくれたから、、、」

語尾が尻すぼみだ。


エルフのギルマスは僕のところまでやって来ると

「冒険者の無礼お詫びいたします、エストニア子爵様。どうぞこちらで依頼をお受けしますので。」

と言われギルマスの部屋へと移動する。

その際、受付嬢と冒険者の声が聞こえた。

「ええ!あれが・・あの方がエストニア子爵様。公爵の後継の。」

「おいホントかよ。ドラゴンスレイヤーなのか!俺ランクを落とされるかもしれんな。」



           ◇



ギルマスの部屋。


「どうぞ粗茶ですが。」

と言いながらお菓子とお茶を出してくれたギルマスにお礼を言って僕は依頼の話をする。

「そうですか公爵様がそう言われましたか。確かに私も昔のことですが心当たりがあります。緊急依頼で魔物狩りを行いましょう。」

と言ってくれた、当然僕も参加すると伝えてギルドを後にする。



          ◇


3日後。

準備ができたとの連絡を受けた僕を始め多くの兵士が、冒険者と連携して森の魔物狩りに出発した。

班長ごとに魔法袋を貸し出しているので、荷物の移動は問題ない。


連日の狩りで、森の魔物の数も大分落ち着いて来たので。

僕は冒険者ギルドに引き続いての依頼を出した後、王都に向かった。

既に学園が始まっていたのだ。


王都に向かいながら王都近くの森から魔物が溢れるように出てくるのが散見されるようになった。

「この辺りの魔物はどこが管理してるんだ?・・ああそうかメンドー男爵領だったな。」

と独り言を言いながら馬車に揺られた。



ーー 魔物のスタンピード 1


学園に戻ると学生が集められていると聞いて大講堂に向かった。


「・・このようにいま王都周辺の森で魔物が以上活性化しています。学園の生徒にも協力してもらい魔物を狩りたいと思います。危険な任務なので高等科の生徒と学園が許可したパーティーのみの参加とします。それ以外の生徒は学園からの外出を禁止しますので必ず守ってください。」

と言う話を学園長がしていた。


お父様の報告が間に合ったのかな。



           ◇


学園長室。


「貴方に魔物の殲滅作戦の指揮をとってもらいたいと考えています。パーティーは貴方のパーティーのみを参加許可しますので、高等科の生徒を傘下に出動をお願いします。」

「分かりました。王国の貴族として王国民を守って見せましょう。」

と答えて僕は部屋を後にする。

その後はいつものメンバーを集めた後、高等科の学生を10班に班分けして装備を集めて。

「明日の朝僕らは西の森に向かいます。メンドー男爵領からの魔物が多く溢れるのを見て来ました。完全に溢れる前に叩きますよ。」

と檄を飛ばすとその日は解散した。


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