第15話 切り開いた新しい世界
ーー 世界の変わった6人
次に日の朝。
久しぶりのベッドでゆっくり眠った6人は、揃って朝食を摂っていた。
そこにケイト公爵夫人とクレア侯爵夫人が現れて
「みなさんおめでとう。貴方達は今日から新しい人生を歩むことになりそうよ。」
と言うケイト公爵夫人の言葉に6人はまだよく理解できなかったようだ。
「お母様、どう言う意味ですか?」
「それはもう直ぐ分かるわよ。」
そう言うと微笑むだけの母だった。
その日のうちに国王からの呼び出しを受けた6人はすぐさま王城へ。
王の間(王の謁見の間)で国王や宰相、騎士団長らが揃う中
「ダンジョン攻略の報告とその証拠を」
と言われ、ダンジョンコアを取り出して
「我らはさる6日前にダンジョンに挑戦、3日後には到達記録である55層の階層主を倒し・・・最下層である80層でドラゴンを討伐しダンジョンの踏破を致しました。」
と踏破の経緯を語った、エストニア子爵。
それを聞いていた国王は
「分かった、よくぞダンジョンを踏破した。これはセガール王国史に残る偉業である。褒賞を楽しみに待て。」
と言うと謁見は無事終了した。
ーー 王都冒険者ギルドにて
その数日後、6人でギルドに向かい魔物の素材の買取を依頼に向かった。
エストニアがギルドに入ると以前に増して緊張が走る。
受付に向かって歩くと何処からか、からかいの雰囲気の言葉が
「おお美男美女のパーティーじゃないか!ん?何処ぞの貴族の子供の子守りの依頼か?実力が無ければしょうがないか。」
と僕以上にチームメイトを馬鹿にした言葉だった、聞きこがせない!
僕は振り向き
「人の強さもわからない冒険者は長生きできそうもないね。フン。」
とな場で笑って男を挑発した。
「何もわからねえガキが、貴族の子弟だとふんぞり帰りやがって!泣かすぞこら!」
と威圧にもならない威圧をかけてきた。
『引っかかった。』とニンマリとしたところで、あの副ギルマスが現れた。
「ようこそ。ダンジョン踏破の快挙を、おめでとうございます。エストニア子爵様。」
と間に入ってワンクッション入れた。お陰で気分が削がれた。
すると先程の冒険者はその意図に気づきもせずに
「ダンジョン踏破だと!あのガキがか?音もの冒険者がよほど強かったか、ダンジョンが寝ていたかだな。」
と大声で叫んだ。
静まる周囲。
「そこの大風呂敷を広げるお兄さん、貴方は強いの?」
と子供らしく聞くと
「当たり前だろうが!お前見たいなおんぶに抱っこの貴族のボンボンと違うんだよ。」
と言ったところで確定だ。
「へえ。強そうに見えないけど僕に勝てるのかな?」
と大きな声で呟くと、周りのパーティーメンバーは薄々気付いてはいたが
「裏に来な!本物の冒険者の強さを見せてやるから。」
と言いながら一人裏の訓練場に歩いて向かった。
そこで僕は他のメンバーに
「お馬鹿なお兄さんを止めもしないお仲間は、僕に勝てると本当に思っているの?止めない時点で皆同じ未来しかないよ。」
と言うとリーダーらしき男が
「そこまで挑発するなら買ってやろうじゃねえか。ドラゴンスレイヤーさんよ。」
と言いながらパーティーメンバーを連れて裏に向かった。
ぼくもそのあとをついてゆこうとすると、僕のチームメイトが
「私たちもご一緒します。」
と言いながら付いてきた。
ギルド内は大騒ぎになる。
「しょうがないですね、これもギルマスの巻いたタネです。ギルマスを連れてきてくださいよ。」
とそばの職員に声をかけて副ギルマスもついて訓練場に向かった。
ーー 本当の実力者は見た目じゃないよ
裏の訓練所に着くと、最初の男がリーダー格の男と揉めていた。
どうも一人で戦いたいとゴネているようだ。
僕は
「どうでもいいよ、雑魚はいくら集まっても雑魚でしかないから。」
とさらに挑発すると、男が興奮してリーダーが止めるのも聞かずに僕に飛び掛かってきた。
僕は、一切の手加減抜きで回し蹴りを食らわした。
訓練場の端まで吹き飛ぶ男、意識を失っているようだ。
「治していいよ、どうせやられた事すら気すいてないだろうから。」
と言うとシスターのようなメンバーが走り寄りいたしを与えていた。
僕は収納から今迄狩ったドラドン3頭を取り出し訓練場に据えた。
広いはずの訓練場が狭く圧迫さえ感じる。
「これだけのドラゴンを・・手に負えぬが致し方ない。」
リーダーは腹を決めたようだ。
その頃意識を回復した男が目の前のドラゴン位度肝を抜かれるも去勢をはりながらリーダーの元に来て。
「ちょっと油断し詰まった。今度は大丈夫。」
と言ったところで
「覚えてけよ、お前のせいで俺たちの運命は決まったようなもんだ。今までお前を甘やかせた俺の責任でもあるな。」
と真剣に言うリーダーの言葉に
「ええ!?」
と固まる男。
「さあいつでも誰でも、全員でもいいぜ!」
と僕が言うと
またあの男が血を頭に登らせて挑んできた。
その剣を交わすこともなく僕は堅固と男の両腕を斬り飛ばして、遠くに蹴り飛ばした。
周囲は声も出ない。あまりのレベルの違いに、「ドラゴンの羽」全員が殺されると見ているものは確信していた。
リーダーが盾役の仲間に防御を頼みその陰から攻撃したのを、盾役ごと吹き飛ばし
「ライジン」
と唱える。
激しい稲妻が音と共に二人に落ちる。
意識を失った二人が崩れるように倒れる。
他の仲間は近づけもしない、引きを捨てりょうてを上げて降参する。
「これではすまさん。」
と僕は言いながら3人に近づく、癒しのシスターの悲鳴が聞こえるが無視して
魔法を発動
「キュア」
3人の身体が光、生気が蘇り両腕が生えて元に戻る。
「え?治療魔法・・キュアで腕が・・信じられない。」
「おい、いつまで寝てるんだ!次があるんだ早く立て!」
と言うと僕は自分のチームメイトに合図した。
すると引き下がる僕の後からマッケンジー君とレリーナとセリーナなそれとクロニアル君が中央に出てきて
「次は僕らだよ。7歳の僕らにまさか負けはしないだろうね。」
と挑発するマッケンジー君。
「7歳だと?歳なんか関係ねえ!叩く潰してやる。」
またあのとこが吠える。魔法師とシーフに癒しのシスターも加わり6対5の戦いだ。
始まりは魔法師の女性の魔法。
土魔法で攻撃して体制が崩れたところで、剣士が突っ込む連携のようだ。
「重力魔法3」
クロニアル君の口がそう呟くと、6人が地面に張り付いた。
指一本すら動かせない。
5分そのままでいたが抜け出せないので魔法を解除する。
今度は盾役が突っ込みその後ろをリーダーがついてきながらの攻撃だ、その隙にシーフの男がナイフを投げながら目隠しの煙玉を投げる。
セリーナとレリーナが出る、大きな男の盾とぶつかる、観ていたものは彼女らが吹き飛ぶと思っていたが。
飛んだのは大楯の男とリーダーの2人。
シーフの男が後ろに回り込む前にマッケンジー君のカウンターで気絶する。
魔法師の女性が攻撃魔法を撃とうと準備する間に、クロニアル君のアイス・バレットが女性を吹き飛ばす。
騒いでいた男は、あまりの力の差に自分の軽はずみな言動が今仲間を窮地に立たせていることに初めて気づいた。
「頼む、俺だけで勘弁してくれ!」
と言う男の声を無視してさらにそれぞれに雷撃を打つ。
「どうしてそこまでするんだよ。お前らの勝ちだろ!」
男は泣きながらそう叫ぶ。
「そんな言葉何処で通用するんですか?魔物が聞いてくれるんですか。」
と僕が言うと何も言えない男がうずくまって泣き出す。
そこにギルマスが怒鳴り込んできた。
「お前ら俺にギルドで何勝手してんだ!」
その言葉に僕は
「馬鹿ギルマスよ、お前が一番悪ようだ死ぬか?」
と言うと
「俺を殺せるもんなら殺してみろ!」
と叫んだその瞬間。
両手両足が斬り飛ばされていた。
「イデ!イテテテ・・誰か助けろ!」
叫ぶギルマスに誰も近づかない。
すると副ギルマスが遠くから
「命ないですよ。守れませんよと言いましたよね、ギルマス。」
と呆れたように言った。
出血で今にも死にそうなギルマスが、命の危険を本当に感じ
「悪かった、助けろ」
と言った。僕はみんなを連れて歩いて戻り出す。
「すまなかったから助けてくれ。」
と叫ぶギルマスに
「本当馬鹿は死ななきゃ直らないね。」
と呟き出て行く、そこに泣きながら
「助けてください。死にたくない。頼みます。」
と死にかけたギルマスの声、振り向いた僕は副ギルマスに薬を投げ渡す。
「息があれば、生き返るでしょ。今回限りですよ。」
と言ってギルドの中に戻った。
「これを飲んで!」
意識が無くなりそうなギルマスに、薬の丸薬を飲ませると、巻き戻るように手足が生えて傷がなくなる。
「何だこの薬は?」
思わず呟く副ギルマス。
他の冒険者の怪我もマッケンジー君が癒しのシスターに渡したポーションで全快していた。
僕らは当初の目的の買取の依頼を窓口に伝えると、震えながら窓口のお嬢さんが手続きをしてくれた。
『トラウマを与えすぎたかな』と思ったがこれくらいしなきゃ、分からないだろうと思い直した。
「裏の解体場にどうぞ」
震える声でそ言う職員について裏に向かう僕。
「最深部まで行ったんだかなりの量があるが、どれ位捌けるんだ。」
と言うと、誰も答えない。
舐めてるの?と言おうとしたら、クロニアル君が現れて
「今のエスト君は怖すぎるんだよ。僕でも少し怖いと思うんだもん。」
と言われハッとした。威圧をしていたのか。
『失敗したな』と思いつつ、笑顔で
「どのくらいですか?おじさん」
と言うとその職員が気絶した。
「今日はダメだね。また今度来ようよ。」
と慰めるクロニアル君の後ろをついて帰ることにした僕ら。
ーー 王都ギルド
「どうしますか?副ギルマス。完全に機嫌を損ねたようです。」
と震えながら言うと職員を前に
「頭を下げてくるよ。じゃないと本当ギルドが物理的に無くなりそうだから。」
とため息をついた私は、騎士団長の元を訪れていた。
「という訳で、ランクAの冒険者が実力も分からずに喧嘩を売ったんです。ご子息様にもからかいの声をあげていましたので、それで余計エストニア子爵様が怒ったようで。」
と言うと
「そりゃそうだろう。私でも友人を馬鹿にされれば、命をかけて訂正させるよ。エストニア子爵は当然の態度だ問題ない。」
と言い切る騎士団長。
「はいそれは重々分かっております。その後も恐ろしいほどの薬で死にかけたギルマスを助けたほどですから。」
と言ったところで騎士団長が
「ひょっとして丸薬か?」
と聞いてきた
「はい。見たこともない丸薬でした。」
と答えると
「優しいな、エストニア子爵は。それはエリクサーだよ。そのギルマスは今後死んでも責任を取らされるよ。」
と言うのを聞いて
「ええ!エリクサーですか。道理であっという間に治ったはずです。」
と感心していたが、そんな薬すら簡単に人にあげれるエストニア子爵の事がより恐ろしく感じた。
「分かった、ケンドール公爵とサンドール侯爵を通じて中を取り持ってやるが、ギルドもそれ相当の覚悟はしておけよ。」
と言われたが何とか口添えしてもらえそうでホッとした副ギルマスであった。
ーー ケンドール公爵屋敷
ギルドから戻ってきた僕らは今後のことについて話しだした。
ハッキリ言って、僕らは学園の初等科の1〜3年どころか中等科の1〜3年までは授業を受ける必要性がないのだ。
「でも学園は今でしか通えないから、私は行きたいな。」
ミリア嬢がそう言うと、他のメンバーも頷いていた。
「そうだね。学園で楽しく生活するのも今しかできないから。また通うのもいいね。」
と言う僕の言葉で、今まで通りとなった。
そこで僕は宝箱を思い出した。
「最後の宝箱を確認してなかったね。見てみる?」
と言いながら収納から黄金に輝く宝箱を取り出した。
ゆっくりと蓋を開けると中には、魔法書が数冊と剣と杖が数本入っていた。
取り出すと
・転移魔法のすすめ
・不老不死のすすめ
・死者復活のすすめ
・魔道の極み
・勇者の剣×2
・賢者の杖×2
・女神の剣×2
・女神の杖×2
・剣聖
・魔王の杖
と鑑定できた。
「使えるのか微妙だな。魔王の杖以外は欲しい人にあげるよ。」
と言うとそれぞれが剣と杖を受け取った。
その後は途中で獲得した宝箱に宝物を山分けして過ごした。
ここで一旦チームを解散して、また学園で会おうと言うことになった。
レリーナなどは姉が結婚するので自宅に帰る必要があり、セリーナやミリアもそれに参加するそうだ。
クロニアル君とマッケンジー君も家に報告に帰ると言うことで、その日で僕らは別れたのだった。
ーー 3人の少女たち
私たちは、その足で大きな商会に向かい
「急いで洋服を仕立てて、数は10着ずつ、お金はいくらでもかかって構わないから、大至急で。」
と言うと、出されたお茶を口に含んだ。
「あまり美味しくはないわねこのお茶。」
と呟くミリアの声を聞いていた店長が
「お客さま、お名前をお伺ってもよろしいでしょうか。」
と身元でも確認したいふうに尋ねるので
「私たちはエストニア子爵様と共にダンジョンを踏破した、男爵三人娘よ。名前まで聞かなきゃわからないのかしらこの店は。」
と言うとミリアに、慌てた店長が
「申し訳ありません。余りにも美しく大人びていたもので、人違いかと思っておりました。」
との言葉に気を良くした3人は、新たに出されたお茶を飲みながら遅くまで服をあつらえていた。
10日後、レリーナの姉の結婚式を王都で開くように無理を言って、宿泊所や料理を手配したレリーナは、姉のためにあつらえたドレスを着込んだ姉に
「お姉様とても美しいわ。ドレスもよくお似合いで。」
と声をかけた
「本当、こんな凄いドレスを着れるなんて。レリーナのおかげだわ。でもここまでしてもらっていいの?持参金もかなりの額を用意してもらっていたのに、また宝石とか。」
と遠慮気味の姉に
「気にしないで、余るぐらい持っているの。それに私の姉が舐められることは、エストニア子爵様の恥になるから気にしないでね。」
とエストニアの名前を出して納得させた。
結婚式の会場は何と、ケンドール公爵の屋敷。
招待された者も関係者もドキドキの結婚式だった。
しかしその甲斐あって、レリーナの姉は嫁ぎ先ではとても大事にされるようになった。
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