第14話 ダンジョン攻略後編
ーー ミノタウルス討伐の恩賞とドラゴンスレイヤーの顕彰
現在宰相は頭を悩ませている、何をかて?
先日、ダンジョンの2階層に現れたはぐれミノタウルス討伐の件である。
見事討伐を果たした、学園の生徒らに褒賞をと国王が口にしたのだ。
そうなると先のドラゴンスレイヤーについても、それなりの褒賞を与えなければならないそれで悩んでいたのだ。
そこに時々王城に顔を出す冒険者ギルドの副ギルマスのエリス男爵を見つけ、呼びつけると知恵を貸せと迫ったのだ。
「古よりドラゴンスレイヤーについては実例があります。「ドラゴン顕彰」と言うものです、ミノタウルスの方は「セガール顕彰」で良いのではありませんか。副賞で剣や金貨又は法衣の貴族位を与えれば問題ないかと思いますが。」
と言う意見に、
「それだ!それでゆこう」
と言うと宰相は国王の間へ立ち去ったのだった。
◇
セガール王国国王の間。
国王の前に数人の少年少女が並んで膝をついている、そこに宰相の声が響く。
「これよりドラゴン討伐並びにミノタウルス討伐による人命救助の功を讃えここに顕彰するものである。呼ばれた者は国王の前に。」
と言う言葉から褒賞が始まった。
ドラゴン顕彰は、エストニア子爵が2つ、ベストニア王子が1つ。
セガール顕彰は、エストニア子爵、クロニアル、マッケンジー、ミリア、セリーナ、レリーナの6人が。
それぞれの法衣であるが男爵位と共に讃えられた。
◇
祝勝会会場。
ケンドール公爵家の王都屋敷にて祝勝会が開催された。
来賓は王家を始めセガール公爵、イーリッヒ侯爵、サンドール侯爵にもちろんケンドール公爵と騎士団長のセルグナ伯爵である。
「今回はお前達に遅れをとったが我が娘も傑物だからな、忘れるなよ。」
と中々の男子の跡取りが生まれぬセガール公爵がケンドール公爵とサンドール侯爵に憎まれ口を叩いていた。
この3人は学園時代の同級生なのだ。
セルグナ伯爵も息子の晴れ姿にご機嫌で、お祝いに来た来場者に息子の英雄譚を語っていた。
ミリア、セリーナ、レリーナも一族も会場にあり、それぞれの娘達の晴れ姿に鼻が高い様子であった。
僕はその様子を見て『こんなお祝いは何回でもいいな。』と思いつつ、ダンジョン攻略を2日後に控えて決意を新たにしていた。
ーー ダンジョン攻略後編
攻略日。
ダンジョンに入った僕ら6人は、順調に進んでいた。
僕の索敵能力で魔物が現れる前に体制を整えているからだ。
「次右からオークが2体、クロニアルお願い」
「ウィンドー・カッター」
という感じで、姿を見せた魔物は僕達を認識する前にほとんどが倒されるのだ。
第5層の階層主の部屋。
初めての階層主だ、中に入ると扉がひとりでに閉まる。
「あれはホブゴブリンとゴブリンリーダーのようだね」
魔剣の切れ味を身をもって味わうだけの階層主だった。
さらに10階層の階層主。
ここの階層主は、ゴブリンキングであった。
レリーナ、セリーナとマッケンジーの三人の剣士に翻弄されたゴブリンキングは会えなく倒された。
この時このダンジョン攻略チームは自分達の異常さに気付いていなかった。
リーダー自体が単独のドラゴンスレイヤーなために、これくらい普通だろうとダンジョンを突き進んでいたのだった。
15階層の階層主。
ここで現れたのは、オークの変異体だ。
変異体とは同じ魔物でもネームドと変異体は次元の違う強さを持つ個体だ。
ここで活躍したのは魔法使いのミリア、クロニアルとエストの3人だ。
エストの雷撃は回避不能の攻撃魔法、動きの止まった魔物を二人の魔法使いがフルボッコするのだ。
ここで安全地帯に変わった、階層主の部屋で休憩することにした。
何時ものようにエストがテーブルや椅子を取り出すと湯気を立てる料理を次々に取り出す。
レベルアップをしながら進むチームメイトは時よりこのような休憩と食事が必要となる。
力と英気を養ったチームメイトは再び攻略に進む。
その日野営をするまでにチームは、30階層主の部屋まで到達した。
「さすがバジリスクはやばかった。」
「そうだね、異常耐性の補助魔法が効いてよかったよ。」
と石化の魔眼を持つ魔物を相手に苦戦しそうになったことを振り返っていたが、焦りや不安は口にしない。
「ここで野営をするよ。テントを出すから手伝ってくれ。」
エストが次々に野営の道具を取り出す、結界の魔道具を出して見張りなく睡眠が出来るのがこのチームの特別なことの一つ。
十分睡眠をとったチームメイトと食事を摂りながら
「今日は一気に50階層まで行くよ、装備を確認して足りないものがあったら教えて。」
と皆をまとめながら、体調を確認するエスト。
「よし倒したぞ!」
マッケンジーの声が響く、
「こっちも片付いたわ。」
ミリアの声が聞こえる、チームは50階層主のミノタウルス5頭の魔物を倒したのだ。
「ここで休憩するよ。」
エストの声で皆が息を吐く。
ーー 王都の冒険者ギルド
ギルマスの執務室に男女6人の冒険者が揃っている。
「お前達が戻ってきて助かったぜ。」
ギルマスの言葉に
「何か不味いことが起こっているのか?」
と一人の冒険者が言うと
「不味いと言う意味で不味いな、ギルドとしてだが。」
と言いづらそうにしながらギルマスは続ける
「冒険者よりも強い奴が活躍しすぎて、ギルドの存在意義が問われているんだよ。」
とこれまでのエストニアの活躍を語る。
「と言うことは俺たちにその小僧よりも強いことを見せなきゃならないと言うわけか。」
「ああそうだ」
そこに副ギルマスのエリス男爵が現れ
「まだそんな事を言っているのですか、ギルマス。みなさんもギルマスの戯言はあまり信じないように、エストニア子爵様は本物のドラゴンスレイヤーですから。」
と言う言葉に
「ドラゴンスレイヤーと言っても7歳のガキが倒せた死にかけのトカゲだろ。」
と大柄の冒険者が言うのを制して
「50m級の火竜だ。もちろん元気ぴんぴんの成竜だ、俺はこの目で確認した。お前らも事実を認められんギルマスの口車に乗ってバカをするなよ。守るのは不可能だからな。」
と言うと2人を除く冒険者は
「本物かよ。その歳でならバケモンだな。」
と考え直したようだ。
「ちょうど今はダンジョンを攻略中だ、5日の予定だったからかなり深層まで潜っている可能性がある。」
と言う副ギルマスの言葉に
「戻ってきたら到達階層を必ず教えてくれよ。」
と言いながら冒険者らは部屋を後にした。
残った副ギルマスはギルマスを見ながら
「いい加減、絡むのをやめないと貴方の首が物理的に飛びますよ。」
と嗜めてから部屋を出た。
ーー ダンジョン55階層。
「ここはこのダンジョンの到達最深部だ。ここを超えて記録を作るぞ。」
エストは皆に気合いを入れる。
ここまできた時点で、チームメイトは自分の身体の異変に気付いていた。
「みんな成長したように大きくなっていないか?エスト君以外。」
と言い出したのはクロニアルだ。
「そう言えば皆んなが同じくらいだったから気付かなかったけど、エスト君と比べると頭1つ違うね。」
とミリアが言うと皆を「そうだね」と同意した。
「えー、信じたくなかった事をハッキリ言ったね。」
とがっかり顔のエスト。
レベルがそれ相当に上がれば身体も同じように成長するのは周知の事実だが、エストだけはその様子が見られないようだ。
気分の上がった5人が55階層の階層主である、キマイラ3頭を魔法と魔剣で倒してしまった。
「僕の出番がなかったね。」
面白くないエストは少しばかり拗ねていた。
「エスト君、君は強すぎるんだから臍を曲げないのよ。これから先は情報のない未知の階層だよ、エスト君の力なくして攻略は無理だよ。」
とレリーナが言うと、まんざらでもない顔でエストの機嫌が治った。
「ほんとまだ子供だよね。」
セリーナの呟きは聞こえなかったようだ。
順調に進んでいった6人は、とうとう80階層に達した。
その扉はそれまでの扉と確実に違っていた。
「これはだの最下層のようだよ。100階層の様相は外れたみたいだね。」
と言いながらエストが扉を押し開けるそこにいたのは
「ドラゴンか!」
6人が体制を整えてドラゴンに向かう。
ドラゴンは風竜のようだ。
風の見えない刃の魔法攻撃とドラゴンブレスを交互に吐きながら、素早い動きで6人に攻撃する。
エストの補助魔法の結界がドラゴンの物理的攻撃を防ぐ。
ブレス攻撃をしようとした風竜に極大の雷撃が開いた顎を貫く。
痙攣しながらブレスが口内で爆発したドラゴンは痛みにのたうち回る。
そこに剣士役の3人が魔剣で斬りつけ右の翼と左の前足が斬り飛ばされる。
痛みと怒りのドラゴンが目の前のマッケンジーに噛みつこうと傷ついた口を開く。
そこにクロニアルの土魔法が
「アース・ホール」
巨大な岩がドラゴンに向けて落ちてくる、流石のドラゴンも交わすことができずに大きなダメージを受ける。
そこにエストが魔力を高めた拳でドラゴンの顔を殴りつけると、頭の一部が爆散して止めとなった。
「倒したのね。」
レリーナが感極まった様子で言うと、セリーナも手を取りながら喜んだ。
エストは奥の部屋にあるダンジョンコアを取り出すと収納した。
そこに宝箱が出現。
それも収納して転移の間からダンジョン入り口に。
角してセガール王国のダンジョンは踏破されたのだった。
ーー 冒険者ギルド
「ギルマス、ダンジョンが踏破されたようです。」
その報告を聞いたギルマスは、本当に驚いていた。
「あのダンジョンを・・踏破だと!間違い何のか。」
と報告の職員に詰め寄るギルマス。
「本当のようですよ。入り口を守る兵士からダンジョンのアナウンスを聞いたと冒険者に報告されました。」
とそこに現れた副ギルマスが言った。
「それでどこの冒険者が踏破したんだ。「ドラゴンの羽」がやったのか?」
「つい先日戻ってきたチームが出来るわけないでしょ、時期的に彼らのチームでしょ。」
と言う副ギルマスの言葉を流石に否定できないギルマスは、職員に確認を急がせて城に上がる準備をし始めた。
ーー ダンジョンの攻略の6人
ダンジョンを踏破して地上に戻ってきた、エスト以下6人はその足でエストの自宅に向かった。
「お帰りなさいませ、エストニア子爵様。」
と家令が迎えてくれる中、エストは両親に連絡を入れた。
当然チームの家にも王都にある所には同じように。
「風呂でも入ってスッキリしてから、食事でもしようか」
と言ってそれぞれ風呂に向かった。
「気持ちいですね。5日ぶりのお風呂。」
ミリアが言うと
「本当です、しかも身体が成長したから胸がキツくて・・・。」
「服をかいけないといけませんね。」
とレリーナもセリーナも話を返した。
「エスト君、今回のやり遂げたね。僕はほんと生きているって思えて幸せだよ。」
クロニアル君が心の底から喜びを表した。
「僕も父上に自慢ができるよ。」
とマッケンジー君が誇らしげに右手を突き上げた。
「でも皆んな身体が大きくなったのに、なぜ僕だけ変わらないのかな?」
と呟くエストにクロニアル君が
「多分エスト君は、この程度の功績では不十分なんだよ。もっと人の驚くような大役があると僕は思うな。」
と言うのをマッケンジー君も「そうだと思うよ」と相槌を打った。
その後6人は食事の後、服を買い替えるために王都内の商会に足を運び取り敢えず服を揃えたのだった。
その日は屋敷に帰ると皆すぐに疲れから寝てしまった。
連絡を受けて屋敷に急いで帰ってきた、エストの両親やクロニアルの母親などもその寝姿を見て。驚いたり安心したりで起こさずに見守った。
ーー クレア侯爵夫人とケイト公爵夫人
「ケイト、少し見ない間にクロニアルが大きくなっているんだけどどうして?」
「うちのエストは、変わらないわよ。」
と言う話から他の子の様子を見に行く二人、
「やっぱりエスト以外の子は成長しているみたいね。エストガッカリしてるでしょうね。」
「そんなふうに考えるの貴方だけよ。でも元気に成長した息子を見るのも嬉しいわ。」
お互いに息子を溺愛している二人の会話は、その後も続いたようだ。
ーー セルグナ伯爵騎士団長 side
ダンジョン踏破の一報とともに息子がそのチームの一員だととの連絡を続けて受けた騎士団長は、国王に報告に上がる。
そこにケンドール公爵も駆けつけていた。
「どうやら息子達がやり遂げたようだな。」
侯爵の言葉に
「お陰様で我が息子も大きく成長できたようです。公爵には頭が上がりません。」
と言う騎士団長の顔には嬉しさが隠しきれていなかった。
「国王の報告の後、いっぱい付き合わんか。」
「はい、是非とも。」
二人の父親は、息子の自慢話が聞きたいようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます