第13話 ダンジョン攻略準備

ーー 赤の休み 2


中間の日差しが強いためこの頃の社交は、涼しくなった夕方から夜が一般的になる。

お母様も連日、お出かけのようで生き生きとしている。


僕は自宅の研究室で連日魔道具の改良と開発に追われている。

カートリッジ式の魔石は、オークのものであれば一月ほど連続で使えるようになった。

形を統一して流通し易くする予定なので、基本のサイズは明確にしている。


時々森の出向きオークを中心に狩って魔石の確保とオーク肉の確保をしている、オーク肉はとても美味しいのだ。


エアコンの小型化が上手く行き馬車用のものができた。

早速取り付けて感想をお母様に尋ねると

「あれは最高ね。今までパーティー会場に向かうだけでも大変だったのが、全く苦にならないのよ。」

と嬉しい感想を教えてくれた。


領地開発の方も順調のようで、今まで屋敷が置かれていなかったので現在建設中だ。

当然僕の開発した魔道具をはじめから組み込む事を想定している。

はじめから開発に参加している家臣を臨時に僕の家臣として身分替えを行い、正式に代官として任命したら

「エストニア子爵様、感謝に耐えないです。私の家は準男爵家で私は三男、爵位もなく騎士団に入れるかどうかと言う状態でしたので。」

と泣いて喜ぶので、代理としての爵位である法衣の男爵位を王家から頂き授けた。


「あれ?名前をまだ聞いていない気がするが・・・今更聞けない気がする。」

と呟く僕の後ろで、何かメモをする侍女がいた。

この侍女は、僕が幼いことからついている専属の侍女なのだが、気配を消すのが上手で気付いたら後ろに居るんだよね。

侍女と言うより、「くのいち」なのではなかろうか?



           ◇


商売について。


僕の開発したエアコンがかなり注目を浴びているようで、商会を立ち上げて販売取り付けをすることになった。


お母様の要望で、注文を受けるのは既に決まっており僕は淡々と製造をするだけだ。

最近は魔道具の製作についてもスキルが生えたようで、物凄い速度で制作できるようになった。


取り付けは、公爵領地で教育を受けた魔道具技師見習いが受け持つことになり、人海戦術で注文をこなしている。


同じように馬車の改造も注文殺到で、空間拡張とサスペンションにエアコンのセットが大人気だ。



それからとうとう50年もののワインやウイスキーが出来上がった。

これについてはお父様を通じて酒好きの同志を中心に広めるようだ。

僕の時空収納に毎日のように新たな酒が熟成を待っている状態です。


お酒で思い出しました、ブランデーも作り出したのでこちらはもっぱら料理に使っています。

大人の味としてブランデーケーキや香り付けに好評価をいただいています。



こんな事をしながら僕の赤の休みは過ぎてゆきました。



ーー 学園生活6


赤の休みが終わり学園に戻った僕は、ダンジョンのことを調べ始めた。

セガール王国には昔から一つのダンジョンが存在する。

未だ最高到達層は55階層で、最深部が何階層かもわかっていない。


学園の生徒は、初等科1年であれば1〜3階層を中心に経験を積んで5階層の階層主に挑戦するのだが、一度に挑める人員に制限があるため毎年攻略可能なチームは少ない。


先ずはチーム分けから行われるが今回は、生徒の自主性に任せられるようだ。


僕のチームは

・サンドール侯爵のクロニアル君

・セルグナ伯爵のマッケンジー君

・センドー男爵のミリア嬢

・コールマン準男爵のセリーナ嬢

・トータル騎士爵のレリーナ嬢

6人だ。


クロニアル君の加入は本人とお母様からの強い推しの結果と言える。

顔合わせは王都の僕の屋敷でとなってダンジョン攻略準備で、自学習に入った頃に行った。



            ◇


王都自宅屋敷。


「「「お邪魔します。」」」

ダンジョン攻略チームの皆を連れて屋敷についた僕は、ちょうど在宅していたお母様に挨拶をした後広間に机を入れて会議を始めた。


お母様にはクロニアル君のお母様が遊びにきていたようだ。



「先ずは自己紹介からだね、クロニアル君以外は以前からチームで活動していたから良いけど、クロニアル君の為に自己紹介をお願いしるよ。先ず僕がクロニアル君を皆んなに紹介するね。

クロニアル君はサンドール侯爵家の嫡男で、入学当初から重い病で休学していたんだ。

僕のお母様とクロニアル君のお母様が親友同士で、その付き合いでたまたま僕の作った薬が病気にあって回復したんだ。

ほとんど友達といえるクラスメイトもいなかったので、僕とチームを組むことになりました。

よろしくお願いするよ。」

と紹介すると、クロニアル君も丁寧な自己紹介と挨拶を行い。

その後はマッケンジー君から自己紹介を始めて一通り自己紹介が終わったところで、僕からの提案を提示した。


「今回のダンジョン攻略で僕は最終的に最新部を目指したいと思っています。皆んなには安全を第一についてこれる範囲でお願いしたいと思っていますので、そのつもりで攻略お願いします。」

と言うと

クロニアル君以外の皆んなが

「「「分かりました、またレベル上げお願いします。」」」

と答えるのを驚いた風にみて

「皆んなは最深部に向けた攻略が怖くないの?」

と質問すると、マッケンジー君が

「クロニアル君ももう直ぐわかるよ。エストニア様と一緒の行動するとすごく成長するんだよ。君も恐れず流れに身を任せたほうが楽だよ。」

と半分おかしな事を言っていた。


「そうなんだ・・頑張るよ。」

とクロニアル君が呟いた。



その後はいつも通り、装備や魔法袋の配布に事前の役割を確認する為に森での魔物狩りの日程が話し合われた。



            ◇


魔物狩りの日。


森に入る前に皆の装備を確認する。

「エスト君この装備は学生の僕らには高価すぎないかい?」

とクロニアル君が質問してきたので

「それは弱い魔物相手の場合を想定した時でしょ。この森にはドラゴン級の魔物がいるんだから、それなりの装備をしなければ危険だよ。」

と僕は当然と言う風に答えた。

「そうなんだ・・ドラゴンがいるんだね。」

と呟くクロニアル君。


森に入ると、僕は魔力の強い魔物を探しながら進む。

「皆んな警戒をお願い。この先300mで複数の魔物の存在を見つけた。予定通り前衛はレリーナ、セリーナの二人で中堅がマッケンジー、クロニアルでお願いするよ。」


指示を出した後僕は、支援魔法を皆にかける。

・防御結界と素早さを向上させるものだ。

「体が軽くなった?」

クロニアル君が頭を捻っている。


魔物は好物の熟した木の実を食べていた、ビックボアの群れ5頭だ。

先ず僕が雷撃系の攻撃魔法を弱めに多重発動する。

「ドドドドン」

続け様に雷撃の音、ふらつきながらビッグボアがバラける。

「前衛は一番近い二頭を攻撃。中衛は向かってくる魔物を攻撃。」

と指示をする。

前衛は僕の渡した魔剣を使い一撃でビッグボアを倒していく。

攻撃に気づいた2頭が前衛に向かい出したところで、マッケンジー君が攻撃魔法で足止めをして前衛がそれに向かう。

逃げ出したもう一頭は僕が再度雷撃で倒すと僅かな時間で殲滅した。

「凄い・・・皆んな同じ年とは思えないほど凄いよ。」

クロニアル君が驚きながらも称賛する。

「クロニアル君君も直ぐに同じことができるようになるよ。」

マッケンジー君がそう言えば「うん、頑張るよ」と答えていた。


それから同じように魔物を狩りながら昼休憩に入った。


次々に取り出されるテントやテーブル椅子に驚きながらも、準備を手伝っていたクロニアル君も温かい料理が出てきたところで。

「エスト君君の収納魔法はどうなっているんだい。これ時間停止の効果があるでしょう?」

と疑問を口にした。

「この収納魔法は幼い頃直ぐに使えるようになったので疑問に思っていなかったんだけど。皆んなは使えないの?」

「「「誰も使えません!」」」

言葉が重なったよ。そうだったんだ。

「魔法袋を貸し出していたときに気づいていたと思っていましたよ。」

とマッケンジー君が溜息混じりに答えた。


美味しい食事を食べた後、僕らは午後の方針を決める話をした。

「午後はクロニアル君のレベル上げを中心に行いたいと思います、どうですか?」

「「「いいと思います。」」」

「それではクロニアル君、相手は何がいいですか?」

「どれと言うよりも、僕の魔法は水と土と風が得意なのでそれで倒せる方法を磨きたいかな。

「3属性か、凄いね。」

セリーナが呟く。


「分かったそれじゃ、狩りに有効な攻撃魔法を教えるから」

と言いながら僕はクロニアル君に具体的なイメージを重ねながら魔法を教えると、1時間ほどで発現できるようになった。


「物にするのが早いね、この調子でどんどん覚えていこう。」

と言いながら10個ほどの魔法を教えて狩りに向かった。


「ストーン・バレット」

「エアー・カッター」

「ストーン・ニードル」

と次々に覚えたての魔法を使い魔物を狩っていたら、とうとう魔力欠乏でダウンしてしまった。

「こりゃ魔力の使いすぎだね。エスト様どこかで休憩しましょう。」

とマッケンジー君が提案したので近くで救護用のテントを出して休憩することにした。


暫くすると元気を取り戻したクロニアル君が申し訳ない顔で

「エスト君ごめんね、足を引っ張るような僕で。」

と言うので

「クロニアル君勘違いしたらダメだよ。病み上がりの君が他のみんなと同じようにできるなんて、誰も思っていないよ。逆にここまで魔法を使える君に皆んな感心していたんだ、これからは自分の魔力量を考えた攻撃をしてね」

と誉めて嗜めた。


その日はその足で森を出てギルドに向かった。




         ◇


ギルドにて。


王都のギルドに到着して中に入る。

それまではざわざわしていたギルド内がシーンと静かになった。

その中を6人が進み受付に声をかける

「狩りをしたので確認を裏に行きますから。」

と手短に話すと裏手に向かった。

僕らの姿が裏に消えた途端、フーッと言う声があちこちから上がった。


「今のだろう。ドラゴンスレイヤーは。見た目詐欺だよな。」

「そうだろ、あの姿で見かけたら思わず絡みたくなるよな。」

「でも副ギルマスが言ってただろ、学園の生徒には絶対茶々を入れるなて。」

「ああ聞いてるぜ、手足を砕かれた冒険者は王都から逃げるように田舎に帰ったと言うじゃねえか。」

「俺は黒焦げにされたと聞いたぞ」

と有る事無い事話をし出した。


職員も慣れたのか副ギルマスに声かけしに向かったりしていた。


「これは子爵様、今日の獲物はどれほどで」

と言う解体専門の職員が尋ねると

「新しいチームメイトの訓練だったからそれほどではないよ」

と言いながら収納していた魔物を次々に取り出して倉庫に並べた。

「この量は普通大量というんですがね」

と言う愚痴は無視して

「いつものとこで待っているよ。」

と言ってギルド内に戻った。



ギルド内の食堂に陣取って、

「何時もの物をお願いするよ。」

とウエートレスに注文すると

「手慣れているね。何度も利用しているの?」

とクロニアル君が聞くのをミリア嬢が

「まだ数回よ。でもねエスト君は濃ゆいのよ何事でも、クロニアル君もそのうち分かるよ。」

と説明していたが、僕としては心外な話だ。


すると副ギルマスが姿を見せて

「お久しぶりです、エストニア子爵様。おっとこれはサンドール侯爵の確かクロニアル様。初めまして当ギルドの副ギルマスをしております、エリス男爵です。お見知り置きをお願いします。」

と挨拶をしていた。

意外とまめに社交をしているようだなと僕は感心しながら見ていた。


買取額が確定して料金を僕らの元に職員が足を運び

「本日の買い取りは、金貨240枚に銀貨6枚です。」

と差し出した。

「ありがとうと言うと僕らはその場を後にした。」


その後は僕の屋敷で打ち上げ兼反省会だ。



ーー クレア=サンドール侯爵夫人  side


昔のように親友のケイトいるの王都の屋敷に向かうと、息子のクロニアルもダンジョン用のチームメイトと一緒に屋敷に来た。

「あの子意外と早くに馴染んでいるみたいね。」

と私が感想を口にすると

「心配しなくても大丈夫よ。エストが居るから、成長した息子の姿を楽しみにしておくのよ。」

とケイトが自信を持って言うの。


「分かったわ、息子の成長を楽しみにしておくわ。」

と答えたの。


その数日後、森に仮に向かうと聞いていた私は、少しばかり心配していたんだけど。

少し遅めに馬車で送られた息子を見てびっくり。

朝と比べると自信に溢れる息子が

「お母様、僕長い期間休学していたけど何とかなりそうだよ。これは今日の狩の報酬だよ、初めての僕の稼いだお金なのでお母様とお父様に渡したくて。」

と金貨40枚と銀貨1枚を私に渡したの。

「こんなに!それで狩の様子を教えてちょうだい。」

と金額に驚きはしたが、息子の初めての魔物狩の様子を聞きながらお茶を飲んだのよ。


そうしているうちに夫が帰ってきて、二人でさらに繰り返すように話を聞いては笑い、また興奮してとても楽しかったわ。

またケイトに借りができたみたい。

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