第5話 学園生活と対抗戦準備
ーー 学園生活1
入学式が行われ、学園の生徒となった僕。
同級生はおよそ80人、2クラスに分けられ僕はAクラスだった。
担任は以前学園を案内してくれた女性教師のセルクエートだ。
ケンドール寮の同級生は10人で、5人がAクラスにいる。
「エスト様これからクラスメイトとして宜しくお願いします。」
と声を掛けたのは、3人の少女達だった。
・センドー男爵家のミリア
・コールマン準男爵家の二女セリーナ
・トータル騎士爵家のレリーナ
の3人で、既に寮内でも仲良しのようだ。
するともう一つの声が
「遅れてすみません。セルグナ伯爵家の三男マッケンジーです。」
とさわやかを絵に描いたような少年が現れた。
「僕こそ皆さんよろしくお願いします。寮ごとに成績を競うようですので、力を合わせて頑張りましょう。」
と話しながらそれぞれの得意な科目などを聞いて、方針を決めていった。
寮は4つあり、王族はそれ以外となる。
「3」と書かれた寮に戻り、明日からの授業の準備をする。
僕は事前に家系教師から習っていたので、座学については心配していない。
Aクラスのクラスメイトに声をかける。
「座学でわからないところがあれば、僕で良いなら教えるよ。」
と言うと少女3人がシュッと音がするような素早さで手を上げ
「「「よろしくお願いします。」」」
と言った。
寮内には勉強用の個室が40室、グループ用の部屋が15室そして会議室が5室だ。
グループ用の一室を借りて、勉強会の始まりだ。
初等科の3年間は、基礎科目である「歴史」「地理」「魔法基礎」「基礎体力」「四則計算」「礼法」「国語」の7科目を受講しなければならない。
「どれが不安なんですか?」
と聞く僕に3人は。
「「「全てです。」」」
と当然のように答えた。
そこで最初の週の座学予定「歴史」「地理」「四則計算」「国語」を中心に教えることにした。
その日は夜遅くまで勉強部屋の灯が付いていたという。
ーー 学園生活2 初授業
準備をして初等科1年のAクラスに向かう僕。
寮から出る時は、皆一緒だ。
学年ごとに分かれていくと最終学年が最後となるような校舎の作りだ。
「皆さん、今日から本格的な授業が始まります。」
と言う担任の話から授業は始まった。
午前の授業が終わり昼食の時間。
一旦皆で集まって寮に戻る。
食事は寮でとるのだ。
「エスト様、寮のお食事本当に美味しいですね。」
とミリアが言うと、ミカエル寮長が
「今までの寮の食事とは雲泥の差だよ。」
と言うと他の上級生が皆頷く。
美味しい昼食をとった後は午後の授業だ。
四則計算と国語の授業で僕は驚くことになる。
「この計算ができる人は?」
と黒板に書かれた3桁の掛け算と割り算問題。
「はい」
と手を上げた僕にクラス中の注目が集まる。
「ええ?出来たらおかしいの?」
僕は前世でそろばんが得意でした。
前に出て暗算でスラスラと答えを書き込む。
「出来ました。」
と言って席に戻る僕。
「・・・出来るのか。しかも暗算で。」
先生の声が漏れる、そして
「正解です。エストニア君は四則計算の授業は必要ないようです。これからは好きなことをしておいてください。」
と先生は言うと、僕以外の生徒に対し授業を始めた。
次の国語の授業で、
「この言葉がわかる人は?」
と言う先生の質問に
「はい」
と手を上げたのがまたしても僕だけ。
先生が僕に対して
「読んで意味をこたえてください」
と言うので。
読み上げた後、意味を答えると
「国語の教科についてもエストニア君は必要ないようです。自学勉強でよろしく。」
と先生は言うと授業を再開した。
この時僕は思った。
『だってすべての文字が読み書きできるスキルをもらったみたいなんだもの。』そうあの時の神が異世界で困らないようにと、読み書きができるようにしていてくれたのだ。
その日から僕は午後の授業はしばらく自習でした。
ーー 領地対抗戦 1
学園の寄宿舎で有る寮は、方面別に4つありそれぞれが寮の誇りをかけて対抗戦を行う。
方面は
1〜ドルトミン=セガール公爵領〜青
2〜クロウ=イーリッヒ侯爵領 〜赤
3〜ダビンチ=ケンドール公爵領〜黄
4〜ケルニア=サンドール侯爵領〜白
で、制服にその関係する色を使うことが義務付けられている。
例えばローブや靴または帽子をその色のものを使うと言う具合に。
なお、王家関係は黒となる。
入学して3ヶ月が経ち、定期戦の時期になる。
初等科、中等科、高等科の代表をそれぞれの寮から出して技術を競うので有る。
初等科は、四則計算と読み書き
中等科は、魔法技術と剣術
高等科は、それぞれの研究発表
で、これらとは別に年齢制限のない魔法と剣術の大会がある。
◇
対抗戦2週間前。
寮の会議室でメンバー決めの会議が開かれている。
「例年我がケンドール寮は2か3位の順位に甘んじている。今回は是非打倒セガール寮を目標に臨みたいと思っている。」
とミカエル先輩が話して会議は始まる。
「初等科の選手はエスト様で勝利は確実なのでそれ以外を決めようよ。」
「そうだな、中等科の魔法は3年のクリスティーナで良いかな。」
「剣は中等科2年のダニエルが順当だな。」
次々に決まってゆく選手、最後は高等科の研究だ。
「高等科の研究は幾つ出すんだ?」
「今年は、3つの予定だよ。」
「誰の研究だ?」
「一つはミカエル寮長の召喚魔法。一つは2年のセルーラ嬢の収納魔法。もう一つは2年のベッケンの身体強化と付与魔法だ。」
と進行役の高等科2年のケントが説明する。
それを聞いていた僕は、質問を行う。
「魔法技術と剣術はどんな感じなんですか?」
「それと研究発表の進み具合はどうですか?」
と尋ねると。
「魔法については、・攻撃魔法、・防御魔法、・多重魔法、・魔法詠唱の四つを競います。」
「剣術は木材、岩、鉄材を切断する技術を競います。」
と答えさらに
「それぞれの技術を対人戦で競うのが魔法・剣術大会です。」
と教えてくれた、研究については。
「召喚魔法と収納魔法は古代魔法と言われる系統で、成功れは非常に少ないので研究対象を見つけるだけでも高得点といえます。」
「身体強化と付与魔法は、剣士や騎士隊の能力向上方策と言える。例年必ず出される研究で効果が見えれば高得点になります。」
と教えてくれたそこで僕は、
「僕が教えられるのは、魔法関係では召喚魔法以外で、剣術は問題ないね。」
と答えると
「・・それは召喚魔法以外は使えると言うことですか?」
とミカエルが驚いた顔で聞いてきた。
「はい、そうです。」
と言いながら僕は何もない空間から剣を一本取り出して見せた、そしてその剣をミカエルに渡すと
「今のが収納魔法で、この剣には不壊と切れ味を上げる付与が付けてあります。」
と説明すると皆目を見開いて驚いていた。
この後会議はいつ誰が僕のところに教わりにくるのかと言う、日程調整になった。
◇
会議終了後に僕は召喚魔法について考えていた。
すると頭の中に召喚魔法の魔法陣と詠唱の魔法語が焼き付けられた。
「イタ・・タタタ。今のは・・召喚魔法の・・分かった。寮長に教えに行こう。」
と思い立ち、ミカエル寮長の部屋を訪れる。
「はい、何方?開いてるよ。」
と言う声が部屋から聞こえたので
「失礼します。寮長、エストです。召喚魔法のことで分かったことがあったので報告に来ました。」
と言うと、
「ええ!エスト様。・・え!召喚魔法の情報!どうぞどうぞこちらに。」
と戸惑いから興奮に変わり、
「エスト様教えてください。」
と最後は懇願に変わった。
「これが魔法陣です。詠唱の場合はこれです。」
と僕の知り得た情報を渡すと
「これだけでも素晴らしいです。後は研究棟で召喚してみます。」
と言うと部屋を飛び出していった。
◇
収納魔法を研究しているセルーラ嬢が僕の元に教えを受け訪れた。
「エスト様、収納魔法に種類があるのでしょうか?」
と言う質問に
昨日頭の中に焼きついた収納魔法の情報を書いた紙を取り出しながら説明を始めた。
「まずこれをみてください。収納魔法には収納の道具を作る方法と異空間に収納する方法が存在します。いずれも魔力量や魔法技術のレベルで収納量や時間経過が変わるようです。」
と説明しながら僕は一つの魔法陣を見せて
「これを付与したい鞄や袋に刺繍して、空間魔法と時空魔法のスキルを持つ魔法師が魔力を込めるとその魔力量で効果が変わるが収納道具を作ることは可能なようです。」
と説明しながら
「僕でいいなら一つ魔法袋でも作って研究の材料しますか?」
といえば、ポカンとしていたセルーラ嬢が無言で大きく頷いた。
◇
身体強化と付与魔法を研究しているベッケン先輩が訪れた。
「エスト様。僕にも付与魔法の魔法陣があれば教えて欲しいんですが。」
と言うベッケン先輩に一枚の紙を差し出しながら
「これが付与の魔法陣です。魔法陣の上に剣など付与したいものを置いて、その上から付与の効果を描いた魔法語を魔法陣に重ねて魔力を注ぐと、魔力量と属性に応じて付与が変わりそうです。」
と説明し一本の剣を差し出しながら
「この剣は、不壊と切れ味向上と氷の付与がされています。研究材料にどうぞ。」
と言うと大喜びで受け取ってくれた。
これで研究の方はかなり大丈夫だろう。
ーー 領地対抗戦2
7日前。
訓練場で連日、魔法と剣術の訓練をしている。
中等科の選手の練習相手をしているのだ。
「ダニエル先輩、どこまで成功しました?」
と聞くと
「あ、エスト様。まだ岩に手こずっています。」
と答えた。
岩などを剣で切るためには、対象物より固い剣で魔力を込めて正確で素早く振り抜くことがコツになるのだが。
競技に使われれ剣は、同じものが使われるようで使い手の技能を上げるか剣の性能を一時的に上げる必要がある。
「先輩は身体強化はどの程度で来ますか?」
と聞くと
「部分的ならレベル3で、全体的ならレベル1だね。」
と答えた。
さらに僕は
「強化の付与魔法はどうですか。」
と聞くと先輩は
「魔力を纏わせる程度はできるんだけどね、今一つなんだよ。」
と答える。
「先輩の属性は何ですか?」
の質問に
「僕は火と風だよ」
と答える先輩。
しばらく考えていた僕は一つの提案をした。
「先輩、風の魔法で剣の速度を上げて火の属性を纏わせて切ってみたらどうでしょう。」
と言いながら風魔法のコツと属性魔力の込め方のコツを教えると3時間ほどで、岩をバターのように切れるようになった。
「これならいいとこいけそうだよ。ありがとうエスト様。」
調子が上がったダニエル先輩は興奮しながら、繰り返し練習していた。
◇
魔法技術のクリスティーナ嬢の練習を見ながら僕は
「多重魔法発動と詠唱の数が問題ですね。」
と声をかけた
「そうなの。まだ2つまでしか多重ができないのと、詠唱省略が上手くいかなくて。」
と答えるクリスティーナ先輩。
僕は一つの提案をする。
「先輩、杖を左手に持ち替えて練習してください、その際に明確に魔法の発現を意識してください。」
と練習方法を指示した。
4時間ほど繰り返していたがまだうまくできないようなのでその日は練習を終えた。
次の日朝から同じような練習をしていたところ、
「出来るようになったわ。」
と声を上げた先輩の様子を見ると反対の手でも2重発動ができていた。
そこで
「それでは杖を持ち替えて、ニつ杖を持っている感覚で多重魔法を発動してみてください。」
と言うと、数回で4つ同時展開ができた。
「4つ、出来たわ。」
と言うのでそのまま練習を繰り返させながら
「魔法の発現を明確にイメージできていると思います。そのまま無詠唱でまほうが発現できるイメージを持って魔力を杖に込めてください。」
とアドバイスすると数回の失敗の後突然のようにまほうが発動した。
「やりました。私・・無詠唱が・・出来ました。」
と喜んでくれた。
詠唱魔法で無詠唱は最も難しいものなのでこれでかなり高得点が期待できそうです。
◇
大会2日前。
総合大会の選手候補の先輩たちの練習を見ていた僕。
魔法は高等科2年のケント、剣術が同じ2年のドレインが選手候補だ。
2人とも仲が良く共に競い合うように訓練している。
そんな時に突然2人が体調不良を訴えた。
聞き取りの結果、毎年2・3位を争っていた赤のチームが差し入れのふりをして身体の痺れる薬を混ぜ込んだものを2人に与えたようだ。
この2人だけではなく青、白のチームにも配ったが口にしたのが2人だけだった。
「困ったですね。控えの選手もいますが2人に比べると格段に力が落ちますからね。」
とミカエル先輩が言う。
「他に選手になり得る人はいませんかね・・・。」
と意味深に僕をみながら言う。
「・・・」
重い空気が場を占める。
「・・分かりました。僕が出ます。」
と答えるとニコリと笑い
「選手申請しておきます。」
と答えて話は終了した。
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