第4話 入学を控えて・・

ーー 入学前に


連日のパーティーに忙しいお母様、王国の重鎮としてに仕事のあるお父様と両親がいない連日の中。

僕は一人暮らしのための準備をしていた。

寮を見学した際にいくつも不満なことがあったのだ。

料理人は僕の専属と王都で新たに雇うつもりであるが、寮生皆に僕の味を提供してもらう必要がある。


お風呂についても不満だらけだ、蒸し風呂のような施設と水やお湯をタライに溜めて体を拭くのみなのだ。

そこで僕は蒸し風呂の横にサウナを作り、大きな湯船を据えた浴場に洗い場を作った。

僕の作った魔道具でお湯や水がいつでも豊富に作ることができて香り石鹸とシャンプーリンスに女性には化粧水もおまけに置いた。

ただ効果は若いから低めだけどね。


料理については存分に僕の好みを押したよ。

調理器具は僕監修制作の魔道具調理器具である。

「レンジ」「冷蔵・冷凍庫」「オーブン」「保温器」「パン・炊飯器」「かくはん機」「バーナー」

などの新作や改良型を作り上げたよ、シェフに使い方を教えた後に新作レシピを与えた。

今調理場はそのレシピと格闘中のシェフが寝ずに頑張っているようだ。



寝具についても、侯爵家と同じ寝具を持ち込んだよ更なる改良を加えてね。

布団は羽毛と羊毛、マットレスはスライムとスプリングの合わせ技でとても寝心地がいい。

睡眠はとても大事なので、同じものを寮生の部屋には無料で提供済み。


洗濯についても魔道具の洗濯機を導入、早くて綺麗に洗えた上魔道具の乾燥機まで設置した。

雨の日や急いでいる日でも大丈夫だよ。


トイレはかなり力を入れたよ、当然日本にトイレを手本に導入。

これを使い良性の悲鳴を早く聞きたいね。


寮自体の建物もかなり手を入れた、透明度の高い大きなガラス窓には不壊の付与魔法が。

床には床暖部、機密性を高める断熱材や緩衝材と正確な加工の資材。

魔道具で浄化と洗浄機能がついた物を大型小型で作り、各部屋の壁に埋め込んだ。


夏の暑さ対策には当然冷房暖房の魔道具を作り寮全体に配管している。



ーー  ケンドール公爵領寄宿舎 ミシェル14歳



「新しく公爵様の嫡男が入学するということで、1週間寮を追い出されて工事が行われたがどう変わったんだ。」

と最上級生になった私は、家に帰らず魔道具の研究のため寮に残っていた。


「ええ!これがあの寄宿舎・・。」

暫くその代わりように空いた口が塞がらなかった。

だって、古びた寄宿舎が御殿のように変わっていたんですもの。


入り口のドアは重厚で格式がありここで生活する者を数段上のステータスに引き上げる効果がある。

エントランスに入るとさらに驚き、光が降り注ぐ広く高い天井に大理石が白く光る。

「ちょっとこれ本当に寄宿舎なの?」

思わず言葉が出る。


見たこともない部屋が増え新品同様の建物、自分の部屋を確かめるべく部屋に向かうと。

重厚な扉に私の名前の書かれた表札があった。

扉を開けると煤けた壁紙や天井が王妃様のお部屋?と思えるような豪華で清潔なお部屋に。

天蓋付きのベッドは腰掛けただけでその凄さがわかるような座る心地。

寝具は羽のように軽い掛け布団に温かく柔らかい敷布団が付いていた。


部屋作り付けの家具や敷物も上品で真新しい者で統一され、本当にただでここに住めるの?と思ってしまった。

真新しい机には薄い小冊子が置かれてあり中には施設の説明や使い方が書かれていた。


「ええ、大浴場?・・広い湯船にいつでもあったかいお湯が満たされたお風呂?シャワー?・・は細かいお湯や水が勢いよく出てくるハンディータイプの水栓?・・全て知らないものばかりだわ。」

私は洗面の道具を持って、お風呂場というところに向かった。


「ここで服を脱ぐのね。そしてこのスイッチを押して追い焚きね」

半透明なドアを開けて中に入ると広い洗い場と湯気を立てた広い湯船が見えた。

「本当にすごいわ。こんなにお湯を作るための魔道具て・・興味あるわね。」

洗い場でシャワーという道具を使ってみた、色と文字と矢印で使い方はわかりやすい。

捻ると勢いよく適温のお湯が雨のように吹き出した。

「凄いわこれ」

髪を洗う専用のシャンプーというもので洗いその後リンスを説明通り使ってみたら、髪が自分のものじゃないような感じが。

石鹸が3種類、固形に香り付きに液体だ。

私は香り付きの液体石鹸を使い体を洗い出すと

「この泡は凄いわ。香りもいいし。」


体を洗い終わった私は湯船へと進む、20人くらい入れそうな浴槽に足から入ると「ああー。」と思わず乙女らしからぬ声が漏れた。

「とても気持ちいいわ。こんなお風呂がいつでも入れるなんて。」

極上の気分を満喫して風呂から上がり、化粧台の目に座ると。

「なんて綺麗な鏡でしょう!これは何?」

そう呟きながら、据え付けられた化粧品と魔道具を手に取る。

近くに説明書があり一つは髪を乾かせる魔道具でこちらは化粧水と書いてある。

髪を乾かしながら魔道具の中身を想像するが分からない。

とても早く髪が乾いたので、化粧水を手に取り顔や肌につけると。

「これとてもしっとりするわ。」

と言いながら着替えを終えた私は部屋に戻る。

部屋の中に幾つかドアがあり新たな部屋があるようだ。

一つはトイレだわ、しかも新しいタイプのようね。

使い方の説明書を見ながら使ってみる・・・「ああ!」

思わず声が漏れてしまった、だって水でお尻を洗うんですもの。


この部屋は・・説明書では、防音で完全空調の部屋と書かれている。

多分研究や練習をする場所ね。


ベッドに身体を横たえると私はいつの間にか熟睡していた。

「これは・・恐ろしいわ。ここから出られなくなるわ。」

私は公爵家の力を垣間見た気がしていた。


ただ彼女は寄宿舎の規模が3倍ほどになっているのにはまだ気づいていない。



ーー 入学式を3日後に控えて


帰省や旅行していた上級生たちが寄宿舎に戻るとともに新入生達も寄宿舎の門を潜り始めた。


「お兄様、ここがケンドール公爵領の寮でいいのですか?とても豪華で真新しいのですが。」

新入生を連れた上級生の兄が見違えた寮を見回しながら

「赤の日の間に改築されると聞いていたが・・立て直したみたいだ。」

と驚きながらホールに入ると同じように戸惑った、同級生や下級生がいた。


「ケント。帰ってきたか、そちらは・・妹君か?」

と同級生のドレインが声をかけてきた。

「ああドレイン、この子は僕の妹ミリアだ。ミリアこちらは同級生のドレインだ。うちの西側の男爵家だよ。」

と紹介すると。

「センドー男爵家の娘ミリアです。兄共々よろしくお付き合いください。」

という少女にドレインと言われた男の子は

「セリカ男爵家の嫡男ドレインです、こちらこそよろしく。」

と挨拶を終えるとすかさず

「おいケント、寮がすごいことになっているぞ。早く部屋を見てこいよ。」

と声をかけるので妹を連れて先ず妹の部屋のある3階の入り口まで上がると

「この先は男子はいけないので、ミリア自分の部屋を探して荷物を確認しておくれ。」

と言いながら階段を降りていった。


ミリアは、恐る恐る廊下を進むと部屋の扉には名前が書かれたプレートが架けられていた。

「これなら私でもわかるわ」

そう呟きながら意外と早く自分の名前を見つけた。

この寮は身分ごとに部屋の大きさが違うのだが、

・騎士爵家と準男爵家は2人部屋。

・男爵家は1人部屋。

・子爵家は浴室と侍女1名の部屋付き。

・伯爵家は浴室と侍女ら2名の部屋付き。

・公爵・侯爵家は浴室・調理場と侍女ら3名の部屋付き。

になっている。


もう1人少女が3階に上がってきた、騎士爵家の娘レリーナだ。部屋を探すと直ぐに自分の名を見つけた。この部屋のドアにも別にカミューという名が掛かっていた。

ドアをノックして開けるとそこには、机やソファーが二つずつ置かれた共同の勉強部屋がある。

その奥に4つの扉があり一つにレリーナの名が、開けるとそこは寝室と物置部屋になっていた。


「とても素敵なお部屋だわ。天蓋付きのベッドもお姫様みたいだし。」

と言いながらベッドに腰掛けるとその座り心地の良さに驚いた。

そして使徒の気配を感じた後、「ああ!」という悲鳴のような声を聞いたので何事と思い寝室を出ると、別のトイレと書かれた扉から少女が出てきたところだった。

慌てて挨拶をするレリーナにその少女も挨拶を返す。

同じ新入生のようだ。

「私エブン準男爵家の次女セリーナよよろしくね。」

と笑顔を見せた。


「今まで聞いたお話と随分違うので戸惑っていたの。一緒に確認してもらっていいかしら。」

セリーナはそう言うとレリーナの手を引っ張ってもう一つのランドリーと書かれた部屋のドアを開けた。


「ここのある魔道具は、洗濯乾燥の魔道具らしいの。そしてこれが説明書よ。」

と小冊子を手渡して

「使い方わかる?」

と聞いてきた、レリーナは説明書を見ながらちょうど旅で汚れた服をネットと書かれた網状の袋に入れて魔道洗濯機に入れた。

「このボタンを押して洗い方を決めるのね。これと・・これでいいかしら。そしてスイッチを押すのね。」

と言いながらスイッチを押すと静かに魔道道具が動き始めた。


「凄いわね。この袋があれば一緒に洗えるわね。」

と言いながらセリーナは同じような手順を繰り返して覚えていた。

その後

「おトイレがすごいのよ貴方もきっと驚くわよ。」

と笑いながらセリーナはレリーナをトイレに誘った。


そして数分後「あひ!」と言う声が聞こえたのは内緒。


寮生が新しい部屋やお風呂を堪能しながら過ごしていると、今回の新入生であるエストが調理人と侍女を連れて寮に入ってきた。

「ようこそ、ケンドール公爵領の寄宿舎にエストニア様。私がこの寮の寮長のセズナリー伯爵家の次男ミカエルです。」

と挨拶しながら並んでいる、寮生を紹介して行った。


「皆さん初めまして公爵家のエストニアです。ここではエストと呼んでもらえればいいと思っています。皆さんのいない間に寮を改築しましたが不便なところがあれば教えてください。それでは皆さんと共にこの学舎で共同生活することが思い出になるよう祈念して僕からの話は終わります。よろしく。」

と締めると、僕はこの後19:00から簡単な立食パーティーをすることを知らせ部屋に入っていった。


着替えを済ませ部屋のお風呂に入り身支度を終えると僕は、魔法の手紙をお父様とお母様宛に飛ばす。


メイドのアリスの入れたお茶を飲みながら読書をしていたら。

侍女のセシルが

「お時間になりました。」

とパーティーの時間を教えてくれた。


寮のホールの横にパーティー用の大広間がある、そこに移動すると既に準備の済んだホールを確認しながら僕は、自分用の席に腰掛ける。

この学園内は身分が関係ないといえども、全くないのではない。

勉強や訓練での上では、年上や上手な者が教え導くが、社交的にいえばやはり身分は存在する。

この寮で僕は年下であるが、身分上は一番上になる。

伯爵家のミカエルが寮の主だった者を連れて再度挨拶を行う。


みんなが席についたのを確認して僕は

「ささやかではありますが、これからケンドール公爵領の料理はこう言うものに変わります。皆さんもその味を覚えて広めてください。」

と言い、開始の挨拶はミカエルに任せる。


パーティーが始まり、出てくる料理に驚きながらも笑顔で食事をする寮生を見ながら僕は隣の席のミカエル先輩に

「ミカエル先輩、どうですか僕の料理は?」

と感想を尋ねる。

「素晴らしいと思います。学園でも年に数回パーティーがありますがその時に寮ごとに料理を出すにですが、ここまで美味しい料理は初めてです。母に聞いた公爵家のパーティーの料理と同じ物がありますか?」

と感想と質問が返ってきた。


「ええそうですね。どちらも僕が考えたレシピで作っているので同じともいえますが、こちらは子供用の味付けがしてありますし料理ですね。」

と答えるとミカエルは驚きの顔で料理と僕を見比べていた。


その後は挨拶に来る寮生に対応しながら、どの料理がより喜ばれているか確認しながら20:30にはパーティーは終了した。


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