第3話 流行と学園

ーー 流行は作るものです



次の日から母上にパーティーのお誘いが山のようにきました。


何でも王妃様に送った布地や化粧水の話が伝わり出したのが、その理由です。


母上は言います


「流行は作った者が一番。エストのおかげでこの母が、王都で1番の貴婦人になっているのよ。ありがとう。」


と、そう言えば持ち込んだ生地で新たなドレスが届き出しました。


これでまた母上が注目を浴びるのが目に浮かぶようです。



僕はお菓子をこの王都で作ろうと考えています。


かなりのお金が僕のお小遣いになっていることから、少しばかり高い材料を買っても問題ない。


果物を買い集めドライフルーツにする、これも魔法が使えるとあっという間に出来上がる。


新鮮なフルーツは魔法袋に入れておくと劣化しないし、砂糖たっぷりな生クリームを作り冷やした状態で魔法袋に入れとく。


スポンジケーキを作るためにイースト菌を探して店を回っているときに、ビール酵母や醤油、酒酵母も見つけた、これからこれらを培養し魔法袋に保管しておこう。



小麦を細かく挽いて均一の大きさにする、イースト菌は30度で活発に発酵するので部屋の温度を30度に保つ。


これで白パンを作る準備は完成。


後は砂糖を混ぜてからカステラ生地をカップに入れて焼くと、小さなカップケーキの素ができるのでそれを、スライスして生クリームとドライフルーツを挟み上には、フレッシュフルーツを乗せて出来上がる、カップケーキ作りに専念した。


さらに食パンが焼けたのでフルーツサンドを作って魔法袋に収納した。


パンができればドーナツもできる、砂糖をふりかけ簡単なドーナツと小豆を餡子にした餡ドーナツこれも魔法袋に保管。


海藻を扱っている店を探して回っているときに、寒天の元の天草を捨てている店があったので、貰い受ける。


天草は、乾燥させて寒天を作る。


これらのものを見つけることができたのは、鑑定のスキルがあったから初めはみんな持っているものと思っていたが大変珍しいそうだ。


とても便利なスキルや魔法が使えるのは、この世界では当然または転生者に対してもらえるおまけスキルと思っていたが、だんだんおかしい事に気づいてきた。


でも特に何かしてくれとか言われてもないし・・・まあいいか。





ーー 母上がパーティーを主催します



 今や王都で知らぬ者の無い貴婦人が僕の母上である。


それぞれのパーティーに新しいデザインのドレスを着て行き、美肌と美しい髪をこれでもかと他の貴婦人らに見せつけていました。


 そんな母上が、パーティーを開くことになりました。


 母上が僕に、言います、


「貴方の好きなように、料理を作ってお客様に食べてもらいましょう。」


と、そこで僕はここ王都で見つけた食材を使った、新作料理を沢山お披露目することにしました。


その日行われたパーティーには、王妃様主催のパーティー以上に人が集まり。


昼と夜の部に分けるほどでしたが、いずれも大層喜ばれたと母上は上機嫌でしたので、良かったと思いました。



ーー 公爵夫人


私のパーティーの食事を息子に任せることにした。

すると

「母上、昼と夜の部の2回のパーティーに出るのはとても疲れると思うのです。そこで立食ではなくテーブルに座ってもらおうと考えました。」

と息子が私のことを考えて提案してくれた、コレも新しいことと思い許すことにしたの。


パーティー会場に入口に席順表が張り出されており、誰がどこかすぐにわかる工夫がされていたわ。


食事は息子が今回王都の食材で作らせた物で、レシピを息子が考えたと聞いているわ。


前菜から目に舌に訴える料理、メインの肉料理は味わったことがないような調理方法でとても美味しかったの。

でもあのデザートを味わうと・・・別物だったわ。


パーティーに参加された皆さんが、すぐに席を立って立食風になると思っていたら。

誰も立ち上がることなく、食事が終わるまで社交が止まっていたほど。


その後の私への質問に「あの食事のレシピを」と言うものがさらに加わったわ。

息子は本当に天才だわ。



ーー 王妃 side



公爵夫人が開催するパーティーに向かう私。

当然この前のパーティーで手に入れた、布地を使ったドレスを新調して着ている。

「本当に肌触りにいい生地で、美しいわ」

と言いながら私は、『今日のパーティーのはどんな新しいものが有るのかしら』とワクワクしながら会場に向かったのよ。


驚いたの、あの食事には。

何でも6歳の息子がレシピを考えて、料理人に作らせたと聞いたがそんなことが可能なのであろうか、と。


今回のパーティーは幾つか普段のパーティーと違う点があった。

どうやら参加者がまりにも多かったために、公爵夫人の体調を心配した息子がテーブル式のパーティーに変えたそうだ。

私は直ぐにいつも通りの立食パーティーに変わると思っていたのですが・・・あのスープから変わったわ。


前菜の野菜と新鮮な魚のマリネも美味しかったのですが、あの透明のスープの深い味わいといったら・・思わずお代わりを頂きたいと思ったほど。

そしてメインの肉料理も初めての調理方法に加えてとても柔らかく美味しかったわ。

でも・・デザートを手に取った時から私は、その虜のなったと言えるわね。


何が何でもあのレシピを手に入れたいものだわ。

お陰で私は夜の部のパーティーにも参加したほどですもの。



ーー ケイト公爵夫人  side



本当に我が息子は素晴らしい。

王都で私主催のパーティーを催しすると、王妃に漏らした途端。

多くの参加者の問い合わせが殺到しましたわ。

とても一度のパーティーでは捌けない数で、私を心配したエストが。

「お母様、長時間のパーティーはお母様のお身体にも負担が大きいので、立食ではなくテーブルパーティーに変更しましょう。」

と提案してくれたのよ。

「でもねエスト。お客様をテーブルに縛り付けるわけでもなく、その状態を長く維持するのは難しいと思うわ。」

と言うとエストが

「大丈夫です。テーブルから離れたくなくすれば良いのですから。」

と自信たっぷりに言うにです。


パーティーの日、パーティー自体昼と夜の部に分けたのですがそれでも一杯一杯です。


参加者の貴族位と派閥を考慮した席順に従い、お客様をテーブルに案内する。

主催者であるケイト公爵夫人から挨拶と王妃の紹介の後パーティーは始まった。


数人が早くもテーブルを立って社交を始めようとし始めた頃、料理が運ばれ始めた。

目にも鮮やかなサラダと魚のマリネという前菜が運ばれ、それを一口口にした王妃が

「まあー。なんて美味しいの。」

と一言漏らした声を聞きつけた参加者が慌てて、テーブルに戻り料理に手をつける。


さらに透明なスープが運ばれると、何とも言えない香りが一口スープを口に運ぶと・・・言葉にならず二口、三口。

その頃になると話し声すら聞こえない。


次々に運ばれる見たこともない食べたこともない料理の数々。

最後のデザートと言う色とりどりのカップに入ったお菓子類は・・言葉にならなかった。


『後からエストには毎日出すように言いつけなければ。』と思いながら王妃を見ると、デザートに心を奪われていたようだわ。


一通り料理が出た後、周りのテーブルに幾つかの料理とデザートのおかわりが運ばれた。

群がるお客様、社交がやっと始めりましたが。


私のところに来られるお客様に質問のほとんどは

「若返りの秘密をお教えくださいませ。」

「その美しいドレスはどこでお求めに?」

「あの料理のレシピは公開されますの?」

「是非、デザートのレシピをお売りくださいませ。」

と言うものがほとんどだった。


全て我が息子エストの作り出したもの、独り占めできる私は母親冥利だわ。




ーー 王都も学校「セガール高等学園」入学


王都に学校があるがそれは、7歳の歳になった貴族の子弟妹が入学する貴族のための学校である。


僕も今年7歳の歳なので入学することになっていたが、お母様のパーティーが大変好評で入学式まで自領に帰れそうもないと言う事で急遽入学式まで王都に留まることになった。


まずは下見ということで、学園にお父様と向かう。

広大な敷地に領地ごとに分かれた建物がある。

理由は領主一族とその家臣団の交流と教育のようだ。

7〜14歳までを学園で過ごし、卒業の15歳の歳から成人とみなされるのだ。

7〜9歳を初等、10〜12歳を中等、13〜14歳を高等と呼び習う科目も大きく変わってくる。


中等から専門科目の習得が行われ、自分のなりたいものへ努力することになる。

基本的には、「王族・領主候補」「魔法師」「騎士」「文官」「侍女」「教師」「魔工技師」の7科目があり複数受講は可能である。


初等科の3年間は、基礎科目である「歴史」「地理」「魔法基礎」「基礎体力」「四則計算」「礼法」「国語」の7科目を受講しなければならない。


入学は秋の10月で長期休暇である「冬休みである白の日」「春休みである青の日」「夏休みである赤の日」「秋休みである黄の日」が一月ずつある。


僕たちは赤の日に王都に来たので3〜4ヶ月滞在することになる。

学園の敷地に入り、教務棟を目指す。

職員が出迎え僕とお父様が学園長室に案内される。


「ようこそ公爵様。当学園の学園長コザックです。」

と不思議な雰囲気の青年が挨拶する。

「君が今度入学予定のご子息だね。」

と僕に話しかけながらソファーに案内され座る。


「見学が希望と聞きました。今当学園は赤の日のため在校生はほとんどいませんが、お好きなところを見学してくださって結構です。」

と言いながら案内役の女性教師を紹介してくれた。



「こちらは初等科の生徒の教育棟です。」

「こちらが魔法基礎を習う講堂です。」

「こちらが基礎体力を養うグランド兼試合場です。」

「そしてここが公爵領の子弟妹が生活する寮です。」

「寮には迷わないように番号が振られており、公爵領は3です。」

と案内しながら淡々と説明すると女性教師。

最後に

「私は今年度の新入生を預かる、侯爵家の三女セルクエートです。」

と挨拶して「それではまたお会いしましょう。」と言いながら去っていった。

「お父様。今の先生はとても良い感じがしました。」

と僕がいうとお父様が

「どのあたりがだい?」

と聞かれ

「必要以上のお話はせず、的確な説明に身分に拘らない話し方でしょうか。」

と答えると

「確かに学園の中は身分や種族や派閥が関係ないというのがモットーだからね。」

と意味深な話をされた。

「種族?」

何のことだろうと思いながら僕らは学園を後にした。



ーー  学園長コザック  side



本年度入学予定と聞いた公爵家の嫡男が学園を訪れた。


噂では数々の流行となりつつある物を5歳の頃から独自に編み出しているという。

入学前によくある伯付けかとも思っていたが、会ってみればその異常性に気付いた。


先ず魔力が異常である、そして魔法耐性に身体異常耐性が飛び抜けて高い。

私は面会中、6歳の子供相手に全力で魔法を駆使していたが全く通じなかった。

多分気づいてもいないだろう。

「異常すぎる。」

と呟いた声を側にいた教師セルクエートが聞き取って

「学園長の秘密でも気づかれましたか?」

と聞くので

「それ以上さ、あの子はこの学園に嵐をのような風を吹かせるだろうね。」

と答えると

「ええ私もそう思いましたわ。どこを説明しても理解しきっている様子で・・子供の姿をした賢者のようでしたわ。」

と答えた。

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