第2話 王都セガールにて

ーー 王都において顔見せを兼ねたパーティー出席



一月程いた父がまた王都に向かうと言う、母も王妃らから招待を受けパーティーに出ると言うことで僕も一緒に王都に向かうことになった。


丁度母用の絹のドレスと魔物の糸で紡いだ布地ができたので、お披露目を兼ねる事にした。


先ず母に出来上がったドレスの試着をお願いしたところその肌触りと斬新で豪華なデザインに大喜びしていた。


公爵家の馬車はそれなりに豪華で大きいがそれでも王都に家族で行くには手狭になるそこで僕は最近覚えた空間魔法と魔法袋作りを駆使して馬車の内部を広げ荷物を減らして見せた、


さらに、ゴムの木を見つけ栽培していたがタイヤとして使えるほどの強度が出たことから車輪に巻き内部はクッション性の高い植物を詰めて乗り心地を改良していた。


寝具やクッションについても水鳥と同じ羽を持つ魔物の鳥から羽を採取し羊毛や綿と合わせて羽毛布団とクッションを作成し魔法袋に入れて持っていった。


馬車に乗り込み荷物が少ない上にやけに広くなった馬車内に不審に思った父上が何度か馬車の周りを確認しながら御者や御付きのものに質問していたが僕が何かしていたとだけしかわからなかったようだ。


母上が馬車が走り出してすぐに

「貴方馬車を買いなおされました?とても広く乗り心地がいいのですがそれにこのクッションとても気持ちがいいわ。」


と父上に聞くが父上は僕を見ながら


「エストニアが何かしたそうだ。ワシは知らんよ。」


と答えたら母上から王都までの間色々質問された、そして新しい布地とデザイン画を見せると王都ですぐにドレスを仕立てると意気込んでいた。





ーー ケンドール公爵



 今回妻の貴族としての仕事も兼ねて王都に息子共々向かう事になったがそこで驚いたことがいくつかあった。


 息子は既にかなりの魔法が使える事、しかもごく一部のものしか使えないものまで使えるようで知らずに使っている様子であった。


王都に行くまでに教育をしておかなければいけない事がわかり王都までの時間は親子の時間となった。





ーー ケイト公爵夫人



 息子は本当に優秀である、しかも母親を喜ばす才能が飛び抜けている。


今回王妃らにパーティーに呼ばれたのは息子が作った化粧水やシャンプー、リンスを贈った事でその御礼を兼ねたものであった。

 公爵家といえ王都から離れている私に中央のパーティーに出席することは数少ない。


 しかも王妃らから誘いとあれば希少である。


そしたら息子は新しい布で新しいデザインのドレスを新調してくれた。


 それが今まで見たこともない素晴らしいデザインで、その生地は神の衣かと思える手触りであった。


 しかもさらに上質な布と新しいデザイン画を持っていた、これなら私がパーティーの主役になるのは間違い無いし、王妃らにも大きなつながりができるできる息子を持つと何かと得をするものだと思った。


しかもこの馬車は、とても乗り心地がいいどうなっているのか聞いてもよくわからなかった。





ーー ここが王都



 馬車で5日で王都に着いた、父上は早々に王城内の執務室に向かい溜まった仕事をすると出かけて行った。


 母上は僕の新しい布とデザインを形にするためすぐに王都の職人を呼びつけると僕を立ち合わせてドレスの制作を依頼した。


母上の用件が済むと僕は買い物に行きたいと母上に伝える。


 明日にでも人をつけるから行っていいと許可を得た僕は、行くところの予定を立てる。


先ずは香辛料や塩、砂糖について調べよう。


次に食料事情だ、なにを食べているのか、どういう調理をしているのか。


その次は日用品である灯はどうしているのか。


洗濯や風呂は食器はガラスは金属加工はという感じで、この世界のレベルを知ることが今回の最大の関心事であった。


魔法袋を持ち王都の商店街を見て回る僕。


共はメイドのアリスと警護の2人の4人でどこかの貴族の子弟であることは見てわかるだろう。


どうもこの世界でも香辛料、塩、砂糖は高級品のようだ。


パンも黒パンがほとんどで硬いのが普通と思っている。


酒は製造の簡単な度数に低いものが主のようだ。


食器は貴族は銀や鈴の食器で庶民は木皿などのようだ、ガラス製品はまだまだ出来が悪く薄く透明なものは見たことがなかった。


王都でも一部以外は上下水道はなく場所によりかなり異臭を放つところがあった。


風呂に入ることは貴族や豪商のみで庶民は沐浴か川のようだ。






ーー 初めてのパーティー参加



 何故か僕は今、母上と馬車に乗り王妃の開催するパーティー会場に向かっている。


王都にいる間何回かのパーティーに行く予定だった母上が、

「多分お前も呼ばれ出すから付いてきなさい」

と声をかけてきた。


当然お土産用の品物をいくつか用意してはいる。



「母上今日の姿は一段とお綺麗ですね。

 パーティーでは主役になるのは間違いないと僕は思うのですが」


と尋ねるとにっこり笑った母上が


「そうよ、貴方のおかげで美しくなれたの、これを見せず私の仕事は終われないわ。」


と答えてくれた。



王宮の離宮で開かれたパーティー会場は盛大なものだった。


なんでも最近老が気になり出した王妃が、母の送った化粧品関係の品々で10才は若返ったとお喜びになったとか。


最近開催を自粛していたらしく久しぶりにパーティー開催とあって、かなり招待したようだった。


母の後ろをついていく僕、このようなパーティーに10歳未満の子供が付いてくるのはまあまあある事でそれ専用の係の人や食事が準備してあるそうだ。


母上の登場にパーティーにきていた貴婦人らの目と口が開いたままになる、もともと美しい母上が肌や髪を磨き新作のドレスを着ていれば話題の人になることは当然のこと。王妃に挨拶をして何かこっそりとお話をすると王妃が喜びに目を広げ僕を見ていた、少し怖かったのは黙っていよう。


僕はついでにと自己紹介を済ますと子供専用のエリアに向かった。

そこには数人の子供が既に座ってお菓子を食べていた。


僕は手渡された皿にお菓子を取り果物水をコップに注いで椅子に座る。


お菓子のレベルについて考察する、焼き菓子がほとんどのようだ発展の幅は広く深い、ジュースについても冷たい炭酸やミックスジュースなどが欲しいところである。


そんな考察をしていたところ二人の子供が近づき声かけてきた。


「初めまして私、メアリースクイブ 5歳よ、こちらは兄のベストニア8歳よ貴方は?」


と女の子が聞いてきたがその名前と姿で王女と王子であることはわかっていた。


 「それは失礼しましたメアリースクイブ王女様にベストニア王子様。

 僕はケンドール公爵の嫡男エストニア 6歳ですお初にお目にかかります。これからもよろしくお願いします。」


と答えると王女は「まあ」と、王子は「ふん〜」と反応が分かれたがそれから同じテーブルで色々と話をするにと次第に仲が良くなっていった。


しばらくすると王子らに声がかかり中座をする事になったがその際僕も一緒に呼ばれた。


 パーティーはお色直しや大事な情報交換などで中座することはよくあること。


 しかし王族に呼ばれるとは?と思いつつ向かうと既に先にきていた母上がニコニコしながら待っていた。


「エスト、王妃様に幾つかデザイン画とシルクという布と新しい布をプレゼントするので用意してね、もちろん化粧水も。」


と言うことから今回の母上の目的は達成目前のようです。


 それは僕の化粧関係の品と布地やデザインが売れ出すと言うことなので問題はなかった。



「はい、母上、用意に不足はありません。」

と答え一緒に控えの部屋に足を踏み入れる僕ら。


控室の中には既に王妃と先ほど別れた王女に王子それと数人の貴婦人が待っていた。


「よく来てくれました。王女や王子にも逢ったと聞きましたエストニア君。」

と王妃は僕を名指しで歓待してくれた。


その後は僕の取り出す品物を見るたびに、女性らから感嘆の声が聞こえ、これからの取引の話になっていったが。僕は、


「考えて作ったのは僕ですが販売や宣伝は母上にお任せしておりますので」


とその場を辞した。



そこでも特別に準備された子供用の席で、王子と話をしながら王都の教育水準や王子の教養を確かめていった。



ーー 王妃エリザベーテ side



 今回私が主催でパーティーを開くのは2年ぶり。


最近顔にシワができ始め一段と老け顔になったのがその主な理由である。


それが昨年末にケンドール公爵夫人から、化粧水なるものと髪を綺麗にするシャンプー、リンスというものを送ってもらい使うと。


あっという間に肌に張りができ髪に艶と芯ができ始めたのです。


数ヶ月もすると10歳は若返った感じがするほどの効果に、パーティーを主催する気持ちが芽生えたのです。


当然ケンドール公爵夫人にも出席を願ったわ。


 そしてパーティー会場に現れたケンドール公爵夫人を見て、まだまだ秘密があることを確信したの。


話をすると彼女の息子に秘密があるようで、後からそのいったんを見せると言ってくれました。


控え室に呼び親しい貴族の婦人らと侯爵家の夫人を伴い待っていると、息子と現れた公爵夫人が息子に合図すると。


6歳ほどの息子がポケットから取り出した袋から、次々に見たこともない布地を取り出して見せた。


さらにドレスのデザイン画を数枚取り出したのです。


聞けば全て6歳の息子が5歳の頃から自分で研究して作り出した布地とデザインと言うのです。


聞けば聞くほど信じられない話であった。

虫から糸を紡ぎ布を織る、魔物から糸を採取し布を織るそうで、今までにないほどの手触りが忘れられない。


さらに化粧水は息子が魔力水を作り作っているそうで、同じものは今は誰も作れないと言っていた。


と言う事になれば私は、ケンドール公爵夫人との繋がりを断つことは絶対に出来ないと意識した瞬間であった。





ーー ベストニア王子、メアリースクイブ王女



今日久しぶりにお母様が、パーティーを主催したので参加することになった。


最近のお母様は、綺麗におなりになり、王である父上様の覚えもいいようでとても機嫌がいい。


何でも今日は私と同じぐらいの男の子が来るそうで、見つけたら相手をするようにと妹とともに言われたので、子供用の席に来る度に一人ずつ声をかけていた。



最後に来たのがお母様の言われた子供のようだった。


その子はケンドール公爵の嫡男のエストニア6歳で、俺の2つ下とは思えないほどの博識と観察眼を備えていた。


後から聞くと魔法もかなり使えるそうだ、次期宰相か賢者候補だ今から勇儀を結ぶことは無駄ではないだろう。




               ◇


今日は、お母様のパーティーでした。


最近美しくなったお母様は、私の自慢のお母様です。


お母様は、誰よりも美しく賢い女性しかし今日、お母様と同じか少し上の女性を見かけました。


その女性は私の兄が友達になったエストニア様のお母上だそうです。


エストニア様はとても賢くお話が上手な男の子です。


私の1つ上の6歳と聞いていますができればもっとお友達になれればいいと思っています。


なぜならお母様の綺麗になった理由に、エストニア様が関わっているからなのと、とても楽しかったからです。

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