第3話 容疑者を吊るし上げろ!

 一旦ダイイングメッセージの方は忘れよう。

 次は容疑者をしらみつぶしに……調べる時間はないけど、やれるだけ調べよう。

 私はノートの開いたスペースに、三人の名前をいろいろな形に変換して書きだした。

 完全に一本木坊さんは無視。かわいそうだけど。


 ・おおや ひろき ―― オオヤ ヒロキ

 ・いずおか こうじ ―― イズオカ コウジ

 ・てらだ なおみ ―― テラダ ナオミ


「おっ、いいねぇ。その調子じゃない? あ、あと一分ね」

 祥平はふざけているけど、いい加減じゃない。「その調子」ということは、考え方は遠くないということだ。

 さあラストスパート! 急ぐんだ、私。伊沙子、あなたはやればできる子なんだから!

 そうだよ、メッセージが英語だったんだ。名前も英語、ローマ字表記にしたらいいんじゃないかな?


 ・Ooya Hiroki

 ・Izuoka Kouji

 ・Terada Naomi


「うわぁ! あっ……。そうだよな、そうなるんだよな」

 ん? また近づいたのだろうか。でも、少しズレてる? そんな感じのリアクションだ。

「お、残り三十秒になるよ。スマホ準備したら?」

 よし、この感じなら最後の必殺技で答えが間に合うかも。

 ちなみに、答えを説明する時間は制限時間に含まれない。二時二十分までに答えが分かればそれで私の勝ちなのだ。

 私は一旦紙を横に置いて、スマホを出そうとした。

 あれ?

 その時、なんだかモヤっとした。

 なんだろう。文字がその部分だけ浮き上がって見えるというか、明らかに他の文字列と違う雰囲気を持っているというか……。

 これは、もしかして、必殺技使う前に分かっちゃったのかも。

「ねえ、祥平」

「な、なんだよ時間ねえぞ」

「スマホ使わなかったら、ボーナスあるんだよね?」

「ルールだもんな、あるさ」

 祥平はうろたえている。今回の問題は自信があったのだろう。それなのに、必殺技抜きで解答に挑戦されようとは。

 偶然も、運も、実力のうち。

 たまたま回転したノートの紙。

 そのうち二列に違和感があったんだ。

 私は改めて見返して、正解を確信した。

 ボーナス、頂き!

 ま、ボーナスと言っても、帰りのコンビニでお菓子を買ってもらうだけなんだけどね。

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