第十七章 ~ 研究施設 ~

長四角に光ってズレた部分の左側が奥に回転した。

すると、その奥から真っ白な光が差してきた。

真っ暗に慣れた目が痛い。


目が慣れて来て、再びドアのところを見た。

おじさんが入り口に立って、にっこりと雄紀を見つめていた。


「目は慣れたかい? 」


まだ、目を少し細めながら、雄紀はうなずいた。


おじさんは、光の中に進んで行った。

雄紀は、ヴィッディーの顔を見た。

ヴィッディーは、手と目で、“お先へ”と表現した。


雄紀は、足元を見ながら一歩、中に入った。


「おっ! 」


雄紀の前には、こうこうと光の照らされた陸上競技が出来そうな広さの部屋が現れた。

そこには、ありとあらゆるコンピューター、沢山の本棚におびただしい数の書籍、机や椅子の間を縫うように白衣の人々が歩いたり、話をしていた。


雄紀は立ち止った。


「いったいここは、何ですか!? 」


「ここはね、研究室だよ。 光る人の蛍光色素と細胞の研究をしているんだ。 」


「君に相談があるんだが・・。 」


「はい・・ 」


「君に、ここでの研究を手伝って欲しいんだ。 」


おじさんは、そう言うと再び奥の方へ向かって歩き出した。

もしかしたら、おばさんの役に立てるかもしれないと思った。

もし、光る人々の体から蛍光式を除去する方法がみつかったら、ジャイナから光る人々に対しての差別が消えるかも知れないからである。

雄紀の心は高鳴った。


一番奥のスペースに辿り着いた。

入り口は、網膜認証もうまくにんしょうで管理されていた。


雄紀は驚いた。

普段のジャイナでの生活は、まるでヨーロッパが舞台にした、日本のアニメの世界感だと、雄紀は思っていた。しかし、この、おばさんの家の地下施設の設備は、雄紀の現実の世界で働いている、研究施設のそれよりも、はるかに進んだものであった。


おじさんは、雄紀に白衣を手渡した。


「君には、ここで遺伝子の中の色素の観察をして欲しいんだ。 色素がどの様に遺伝子の中で動作をするかを知ることで、何故、親から子どもに移るかを知ることが出来ると、私たちは考えているんだ。 君の専門だろ? 遺伝子は。 」


「はぁ。 僕に何が出来るか分かりませんが、出来るだけのことはやってみます。 僕の専門分野とは少し違いますし、僕の世界の常識が、ジャイナの細胞や中の遺伝子に通じるか未知な部分がありますが、手伝わせて下さい。 」


雄紀は、生まれて初めて、自分の感情と意思が同じ方向を向いた。

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