第十五章 ~ 星見岩の思い出 ~
雄紀は複雑な気持ちだった。
ジャイナの、サティアと話をして、自分自身の中がカオス状態になっているのを感じた。
雄紀は、半ば、“現実”の世界から逃げ出してジャイナへ来た。
“現実”の世界での雄紀は、サティアに頭の中を占領されてしまい、全く太刀打ちできなくっていた。
そして、ジャイナの サティアと話していると、夢の中で自分自身であった、ソーハムに心も体も乗っ取られてしまう感覚まであった。
「僕には、逃げ場がない・・・。 」
そう考えたら、直ぐに違う問題が湧いて来た。
「本当の自分は何で逃げるの!? 」
雄紀は、今まで自分自身が逃げてばかりいたことに気が付いた。
「僕は、何から逃げているのだろう? 僕は、どうして逃げているのだろう? 僕が恐れているのは何!? 僕が、守ろうとしているものは何!? 」
雄紀は、立ち止まった。
そして、自分自身の心を全身全霊で観察した。
「僕には、僕自身が見えていなかったのかも知れない。 僕が、僕自身を抹消しようとしていたんだ・・。」
雄紀は、生まれて初めて自分に向き合った。
「あ! 」
雄紀は、高校生だった時に 星見岩で出会った、おじさんとの約束を思い出した。
おじさんは、何もかも失って 夢の様なキラキラするものを探して星見岩に来ていた。
あの時、おじさんと出会っていなかったら、もしかしたら雄紀は家で出をしていたかも知れない。
あの時、おじさんと話していなかったら、もしかしたら、雄紀は、既に、この世に存在していなかったかも知れない。
おじさんのお陰で、雄紀は ここに生きて立っている。
「僕は、おじさんが探していたものを探すって約束したんだ・・・。 」
突如、雄紀の目と鼻が赤くなり、涙が一筋頬を流れた。
「僕は、逃げるのに一生懸命で、『向き合う』事をして来なかったんだ・・。 」
雄紀は、まず自分の感情がどの様に動くのかを観察することにした。
もう、恐れることも、逃げることもやめることにした。
雄紀は、自分に取って大切なものがあることを思い出した。
女手一つで、雄紀を育ててくれた、お母さんもそうだ。
ジャイナの、おじさん、おばさん、ヴィッディー、そして両方の世界の サティア。
雄紀は、何気なく、身に着けている服のポケットに手を入れた。
「!!! 」
何か、塊がコロコロと指に触った。
雄紀は、それらをポケットから取り出した。
「
あの時、おじさんから手渡された石!?
しかも、5つに割れている!?
割れて石ころ大になってしまった、星屑(せいせっ)石(せき)が雄紀の手の平の上で、乳白色にピンク色が混ざりながら光っていた。
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