第十三章 ~ チャンダナン ~
雄紀は、2日間の間、ほとんど外へは出なかった。
しかし、3日目には、すっかり元気になったので、もう少し遠くを散策することにした。
『そう言えば、お城は何処なんだろう? 』
雄紀は、夢の中でソーハムを抱きしめていた、サティアを思い出していた。
「おばさん、今日は調子がいいので散歩してきます。」
「そうかい? 気を付けるんだよ。 あ、そうだ。 ちょっと待って・・。」
そう言うと、おばさんは奥の方に入って行って、何かを持って戻って来た。
「この粉を振りかけてお行き。 魔除けのチャンダナンだよ。 また変なのに狙われない為に。 」
と、その茶色い粉を雄紀に振りかけた。
その茶色い粉は、香木の香りがした。
そして、ひとつまみして、雄紀に差し出しながら、
「これを舐めて。 」
と、言うと、そのひとつまみを雄紀の手の平に置いた。
雄紀はそれを舐めると、思い出したように、おばさんに聞いた。
「おばさん、お城はどこにあるの? 」
おばさんは、眉をぴくっとさせると、
「ああ、そこをまっすぐ行って、川に出たら川沿いに、しばらく行ったら見えるよ。 でも、あそこは危ないから、これを着て行きな。 」
そう言うと、おばさんはオレンジ色のローブと帽子を貸してくれた。
「これを身に着けていれば、旅の僧だと思って、みんな丁寧に扱ってくれるんだ。 」
雄紀は、おばさんが貸してくれた服と帽子を身に着けると、おばさんに、にっこり微笑んで出かけた。
おばさんの家のまわりは、牧場が3件続いた。
大きな川に突き当たると、そこを右に曲がった。
真っすぐ進んで行くと、だんだん人家が増えて行き、町になって行った。
そして、緩い坂道を上がって行くと、木々の向こうにお城が見えた。
雄紀は、お城へと吸い寄せられるように歩いて行った。
雄紀は、お城の門の入り口に立った。
そこには、門扉があり、門扉の向こう側は、多分、お城側から誰かに橋を降ろしてもらわないと渡れない作りになっていると感じた。
門扉の上には、見張り台があり、その向こうには塔が立っていた。
雄紀は、塔に目をやった。
「あ・・ 」
雄紀はの心臓は、ドキン! と、一度大きく収縮すると、乱れ太鼓の様に激しく鼓動を打った。
「あ・・。 」
その人も、雄紀の方を見て、目を大きく開いた。
その女性は、雄紀の母親と同じくらいの年頃に思えた。ヴィッディーの年から想像しても、その位である。しかし、その黒目勝ちのうるんだ瞳は紛れもなく、サティアのものであった。
2人は、しばらく見つめ合った。
「! 」
サティアは、ヘーゼルマンの言葉の様な何かを叫んだ。
雄紀が理解していないことが分かると、待つように手で合図して 一旦塔の奥に入った。
そして、しばらくすると、門扉の脇の小さな都が開いて、そこから出て来た。
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