第十二章 ~ ポーリッジと紅茶 ~

コケコッコ――!!

バタバタ・・・


雄紀は、目覚めた。


既に、部屋中がポーリッジの甘い匂いでいっぱいになっていた。

と、言うよりも、多分小屋の外までポーリッジの匂いがしているだろうと、雄紀は思った。

おばさんは、いったいどれだけの量のポーリッジを作ったのだろうか・・。


「ん?」


バターの匂いがする。

雄紀に取って、ポーリッジとは、オートミールをミルクと砂糖か、水と塩で煮込んだものだった。

バターを使うのは聞いたことが無い。

確か、ノルウェーにバターをたっぷり使ったポーリッジがあると聞いたことはあった。


「目が覚めたかい? おはよう! ポーリッジ、出来てるよ。 今日は、スペシャル・バージョンだ。 」


おばさんは、そう言いながら、大きなシルバー色に輝くトレーの上に乗せた、紅茶とミルクポーリッジ、メープルシロップ(?)、そして、シナモンと、バターで炒めたドライフルーツを持って来て、雄紀がいつも食事をするテーブルの上に置いた。


甘い匂いに、雄紀はお腹が鳴った。


「ソーハム、今日はベッドで食べるかい? 7日間も眠ったまんまだったんだ。 今朝は、ゆっくりするかい? 」


「いえ。 起きて食べます。 」


「雄紀は、元の世界でも同じような料理を食べたことはあったのかい?」


「はい。 実は全く同じ料理があるんだ。 僕は、ミルクとシナモンシュガーをたっぷり入れたのが好きだったんだ。 」


おばさんは、目を細めて、ちょっとの間、雄紀を見つめてからカップに紅茶を注いだ。


「この紅茶は、特別なんだよ。 おじさんが持って来てくれたんだ。 私たち、ヘスーサンは飲んではいけないものなんだよ。 だから、ヘーゼルマンの友達が出来ても、このことは内緒だよ。 」


おばさんは、紅茶を注ぎ終わると、雄紀がいつも食事をする時に座るテーブルを隔てた向かいに座った。


雄紀は、ベッドの脇に足を降ろした。

よろけそうになったが、おばさんにばれないように細心の注意を払って、平常心を装いながらテーブルの椅子に座った。

おばさんには心配をかけたくない。


紅茶を口に含んだ。


「!!! 」


雄紀は、その香りに衝撃的な程に強い懐かしさを感じた。

どこで味わったのだろう?

いや、今まで生きてきた中で、こんな衝撃的な懐かしさを感じる程の経験をしていれば覚えているはずだ。

しかし、雄紀には全く心当たりがない。


「おばさん、この紅茶、とっても美味しいです。 」


「そうだろうとも。 実はね、この紅茶は、王家専用に作られている紅茶なんだ。 」


そう言うと、おばさんは研究の対象を凝視するように、紅茶を飲む雄紀を見つめた。


もしかしたら、おばさんは、雄紀が 7日間の眠っている間に見た夢の内容をを知っているのではないかと言う気持ちが、雄紀の頭を過った。

しかし、そのような事はあり得るはずが無いと、その考えを振り払った。

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