第九章 ~ 呪い ~
次の朝、おばさんは、雄紀が目を覚ましたのに気付いて部屋に入って来た。
「ねぇ、本当の名前は分かったけど、これからもソーハムって呼んでも良いかい?」
おばさんは、少し上目遣いに少し悲しそうな表情をしながら雄紀に聞いた。
「もちろんですよ。それから、ありがとうございます。助けて頂いたのに、寝るところも、食事も頂いてるのに、感謝の言葉すらまだ言ってませんでした。本当は、何か・・」
「ありがとう。ソーハムって・・呼ばせてくれるだけで、それが私に取っては一番幸せな事なんだ。
ありがとう、ソーハム。」
おばさんは、雄紀の言葉を遮って、そう言うと部屋を出て行った。
おばさんの目が、潤んでいたように見えたのは気のせいだったのだろうか・・。
雄紀は、少し近所を散策して回ることにした。
まわりの建物や景色は、よく見ていたイギリスのテレビプログラム、『シャーロック』の中の景色の様だった。
おばさんの家は、思っていたよりもしっかりした建物であった。そして、想像していたよりもずっと大きい事が分かった。
雄紀は、納屋、兼おばさんの家である建物の周りを一周することにした。
「ん? 地下室があるの?」
建物の角に不自然に木を植えてある場所があった。
そして、そこのちょうど、陰になっている場所に扉を見つけた。
それは、テレビで見たことのある、アメリカ南部の一戸建ての家にある、竜巻の避難場所の入り口の様に見えた。
雄紀は、取っ手を持って引っ張ってみた。
しかし、その扉はガシャガシャと音を立てるだけで開かない。
雄紀は、突然、後ろに凍る様な暗黒の気配を感じて凍り付いた。
「身動きが取れない・・。」
それは、恐怖からなのか、本当に体が麻痺して動かないのか分からなかった。
後ろに感じるその何かは、錯覚なのか、本当に何か存在しているのかも分からない。
しかし、このままじっとしていても埒(らち)が明かない。
思い切って後ろを振り向くと、決意したその時だった。
左耳の後ろ側を激痛が走った。
雄紀は思わず、そこにてをやった。
すると、固い冷たい何かが、すっと雄紀の手を撫でて消えた。
後ろを振り向くと、そのおぞましい気配は消えていた。
雄紀は左耳の後ろを触ってみた。
「いっつう・・。」
何か刺さっている。
無理やり引き抜く。
更なる激痛が耳の後ろを走り、じんじんと熱くなったって生温かいものが、そこから垂れて行くのが分かった。
雄紀は、今、左耳の後ろから引き抜いた物を見た。
それは何かの骨を動物の爪か杭のような形に削った物のようだった。
その日から、しばらく雄紀は高熱にうなされ、目覚めることが出来なくなった。
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