第七章 ~ おじさん ~
おばさんの家に居候になり始めて、7日が過ぎた。
この世界に降りて来て、次の日に感じた体の怠さや痛みも少しずつだが抜けて来ていた。
雄紀は、ソーハムとしての自分にも少しずつだが、違和感が薄れてきているのを感じた。
少しずつ納屋の中を歩き始めていたが、まだ、外に出る勇気は無かった。
夕暮れになり、おばさんが帰ってきた。
「どうだい?少しは動けるようになったかい?疲れていたんだねぇ。その顔色は、熱は下がったようだね。良かった、良かった。」
おばさんは、納屋の奥の方に姿を消した。
「そうだ。」
と、何か思い出したように言いながら、雄紀の寝床のある場所に戻って来た。
「今日、友達が来るんだ。」
『友達!? 僕は、ここに居ても大丈夫だろうか?安全なのだろうか?』
おばさんは、雄紀の不安を感じ取ったように、
「な~に。いい人だから、心配することは無いよ。」
と、笑いながら奥の方に再び姿を消した。
『もし、僕のことがばれて、捕まってしまったらどうしよう。おばさんに迷惑が掛かったらどうしよう。』
しかし、日がほとんど落ちてしまった時間帯である、今、外に出ると、雄紀が光らない人であることをまわりの人々に知られてしまう。光らない雄紀か、光る おばさんのところから出て来るのは不自然だ。印象に残れば、いつ、アッデス様方の人たちの耳に入るかも知れない。いや、もしかしたら、おばさんは、僕がここから出ないようにしておいて、アッデス様に僕を売って賞金をもらうつもりかも・・・。』
雄紀は、焦りから高速で考えを巡らせた。結論に辿り着けないまま、唾をのみ込んだ時だった。
「こんばんは。」
そう言いながら、男の人が雄紀の居る場所をちらっと覗いた。
『え? この人、光ってない。どっちだ!敵か、味方か!? 』
雄紀は、思った。
思考も表情も体の動きすら固まって、目だけで、その男の人を追った。
「あら、いらっしゃい。 」
そう言いながら、おばさんが奥から出て来た。2人で奥に入って何かを話している。雄紀は、最悪のことを想像して、窓から逃げた方が良いのか迷った。
おばさんが出て来た。
「あ、ソハム、あんたが外に出るようになっても、この人がここに来ていることは内緒だよ。 」
雄紀の固まった表情は、少し和らいだ。
「ソーハム君、そっちに行っても良いかい? 」
その男の人は、雄紀に話しかけて来た。
「はい。 」
秘密を共有していると言う感覚は、こんなにも人を信用させる力があるのだと感心するくらい、雄紀は、その男性に対しての警戒感が溶けているのを感じた。
「君は、ヘスーサンなのかい? それとも・・・、もしかしたら・・、 どこかの違う世界から・・・。 」
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