第2話 逆転
「きゃはは。極大暗黒魔法だって。早口言葉みたいでウケるんですけど。
極大暗黒魔法、極大暗黒魔法、極大きょきゅ、、、あー言えなかった。きゃははは。
今時、大魔王復活とかダサイのよあなた。せっかく、強い魔力を持ってるんだら、もっと人生楽しまなきゃ損よ、損。曲芸一座でも始めて世界を回るとか、まだ見つかっていない秘宝を探すハンターとか、そっちの方がよっぽど健全で楽しいじゃない。
でも、もう遅いんですけどね。あなた、首切られて処刑されちゃうんですけどね。きゃはは。
そりゃそうよ、せっかく平和になった世の中を混乱に
じゃあね。私もう行くから、こんな陰気臭いところ、これ以上居れないわ。ジャック!帰るわよ。上まで案内しなさい!」
『おのれ小娘め、ワラワにここまでの侮辱と屈辱を与えるとは、、、忘れはせぬぞ!』
(魔女が手を広げて腕を前に伸ばすと、身に着けていた法衣が揺れる ファサッ)
「ん?ん?ちょっと!あなた!その腕のアザ!竜の形?うそでしょ?まさか、、、
3年前に失踪したユティアお姉さまと同じ模様、場所、、、ど、どういうことなの?」
『ほう。この入れ物はソチの姉のモノであったか。くっくっくっくっ。面白くなってきた。
せっかくだから教えてやろう。ワラワは300年前の、大魔王様がまだこの世界を恐怖の渦に巻き込んでいた頃、生きておったのじゃ。大魔王様の魔力と手下のモンスターによる悪行で、世界の住人がパニックを起こして恐れおののく様子を見ておった。それはなんとも
それを、あの憎っくき勇者パーティーどもが現れて大魔王様を、、、うっ、思い出したくもないわ。
そこでワラワは封印された大魔王様に誓ったのじゃ。何年経とうとも、必ずや大魔王様を復活させ、あの、混乱とカオスな時代へ戻すとな。
それからというもの、当時普通の人間の肉体であったワラワはまず、魂だけを別の人間へ移転させて体を乗っ取る暗黒魔術を習得した。しかし、人間の体とはもろいもので、40年もすれば劣化し腐敗する。そうなる前に、また魂だけ移転して新しい肉体を手に入れることを繰り返してきたのじゃ。
そして、3年前のあの日、森の中をうろついていた小娘へと魂移転したというわけじゃ。
それがまさか、くっ、ソチの、くっ、姉だったとはな。くはっはっはっ。笑いが止まらぬわ。ふはっはっはっ。』
「な、なんてこと。お姉さまが、魔女に肉体を乗っ取られていたなんて。目が吊り上がって人相が変わっていたから分からなかったわ。
3年前のあの日、そうそれは私の誕生日だったわ、私がお姉さまにわがままを言って、世界一美しいと言われているボゴデラの花を森の中へ摘みに行ってもらっていたんだったわ。それから、いつまで経っても帰ってこないお姉さま。一年以上捜索しても見つからなかったから、葬儀まであげたというのに、まさか、魔女に、、、私のせいで、、、」
『ふはっはっはっ、姉の失踪は妹のソチが原因だったか?これは益々面白い。ふはっはっはっ。さぁどうする姫!ソチの姉である、この肉体の首を切って処刑するというのか?ふはっはっはっ。困った顔をしているな姫。助けを呼びに行くか?そんなことをしてみろ。鋭く研ぎ澄ましたワラワのこの爪で、今すぐ自分の首を切って自害してくれるわ。大魔王様復活の野望は途絶えるが、ソチらに処刑されるよりも、ワラワを侮辱した姫の前で、愛しのお姉さまを殺して、悲鳴を上げる姫の顔を見ながら死んだ方がましだからな』
(尖った爪を、指から舐め上げてさらに磨きをかける ジュルジュル)
「じゃ、じゃあどうしろっていうの?あんたは何を望むっていうのよ?」
『よし乗ってきたな。一つ取引の提案をしてやろう。それはな、ワラワを逃がせ!
この地下牢からワラワを逃がしたら、何もせずに城を立ち去ってやろう。今、ワラワを逃がしておけば、いずれワラワから姉を助け出す知恵も出るであろう。どうだ、悪い取引ではなかろう』
「そ、そんなことできるわけないでしょ。せっかく勇者様が捕まえた魔女を逃がすなんて。それに、何もせずに立ち去るって、あんたの言葉なんか誰が信じるのよ」
『ほう。では今すぐ、この首をかっ切っていいというのじゃな。ソチの選択で姉を殺すということじゃな?』
(ジュルジュル)
小声「ぐぬぬぬぬっ。ちょっと、ジャック!あんた、ずっと黙ってないで、何かいい案を考えなさいよ!そもそも、あんたが、こんな性悪魔女に心奪われてたから、私がおちょくっちゃって怒らせちゃったのが原因なのよ。この魔女がお姉さまの体と知ってたら、もっと別のやり方があったっていうのに。ぐぬぬぬぬっ」
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