高飛車ツンデレ姫vs獄囚ヤンデレ魔女【地下牢舌マッチ】

団田図

第1話 対面

「姫様、姫様うるさいわね!いいからここを通しなさい!看守ごときが私に歯向かうわけ?これは命令よ!さっ。案内しなさい。その、魔女とやらのところまで」


(石階段を下りていくヒール音 カツカツ)


「こんなところ、初めて来たけど、なんだかジメジメして、蜘蛛の巣も張って薄暗くて気味が悪いわね。あんた、もっと松明たいまつを持ってきなさいよ。

 え?空気が薄くなる?それどういう意味よ分かんない。

 あんたみたいな剣術ダメダメで魔法も使えない落ちこぼれが、誰のおかげでお城にいられると思っているのよ。それどころか、大食漢たいしょくかんで食べる事しか能のない穀潰ごくつぶしのあんたが、たまたま幼馴染だった私の口利きで、なんとかお城に残っていられるんだから感謝しなさいよね。まったく。

 それに、どうしてこの前やった、私が二十歳になった”成人の儀”に来なかったのよ。せっかく国一番の銀職人が作ったティアラでドレスアップしたっていうのに、、、ふんっ」


(カツカツ カツカツ)


「ぎゃーー!!背中に何か入ったわよ!ヤダヤダヤダ。んもー。ふぅ、やっと出てったわ。まだ着かないわけ?いったいどれだけ深い場所に閉じ込めているのよ。こんな高いヒールで来るんじゃなかったわ。まったく。

 ところで、その魔女とやらをとらえている牢獄は、強力な結界を張って魔女の力を抑え込んでいるってのは本当なのよね?突然襲われたとしても、あんたじゃ心もとないからね。

 一週間前に勇者様のパーティーが捕らえたと聞いた時はワクワクしちゃったわ。だって、大魔王が倒されて300年間も平和なこの世界がちょっと退屈だったんだもの。大魔王を復活させようとくわだてていた魔女ってやつを、処刑されちゃう前に一度は拝んでおきたいじゃない。

 おっ?あそこで階段が途切れている。ってことは着いたのね?この扉を開けたら牢獄に捕らえられた魔女がいるのね?さー開けてちょうだい!」


(古びた木製の扉が開く音 ギーーー)


「こ、こいつが魔女ヴァルボ・・・

 何ておぞましい姿だこと。目は吊り上がり、その淫靡いんび妖艶ようえんな姿で、この世界を破滅に追いやろうとしてたってわけね。この強力な結界を張った重い鉄格子の中に入れられてしまった今では何もすることができないから、ふんっ、いい気味ね!」


『ん?新たな客人か?ほう、、、

 その身なりを見てとるに、、、

 ソチは姫か?くっくっくっ。

 大方、このワラワの物珍ものめずらしさに、ここまで参ったといったところであろう。

 どうじゃ?ジャック、正解じゃろ?』


小声「ちょっと、ジャックあんた、この魔女とどういう関係なのよ?あんたの名前を呼んじゃったりして、やけに親しげじゃない?」


『嫉妬?くっくっくっ。一週間も共にいれば親しくなるのは至極しごく当然。すでにジャックは、ワラワに夢中なのじゃよ。愛情と信頼でつながったこの関係に、ソチのような小娘が入る余地はないのじゃよ』


「ちょ、ちょっとそれどういう意味よ!べ、別に私はこいつのことなんか、なんとも思ってないわよ。ただの家来よ。

 ジャック!あんたもあんたよ、こんな魔女に心奪われるなんて、脱獄でもさせる気?正気に戻りなさいよね。

 ん?そうだ、いいこと思いついちゃった。悪いことをしちゃった魔女さんに少しお仕置きしてあげるわ。鉄格子のそちら側にいるあなたに、こんなことができますかぁ?


ジャックの後ろに回ってぇ、

体を重ねてぇ、

腕を前に回し絡みつけてぇ、

耳に息を吹きかけたりぃ、ハァー

(右耳にミーニャ姫の吐息)


ジャックの首筋に指をわせてぇ、

もてあそんだりぃ

(首筋を這う指使い サァーー)


頬と頬をすり合わせてみたりぃ、

(ミーニャ姫のすべすべの肌と髪 ファサァーー)


 あっ?今、ムッとした顔つきになった。ははーん、やっぱりあなたも嫉妬してるのね。もっと見せつけてあげるわ。あなたが一度とりこにした男を、目の前で誘惑されている気分はどぉ?鉄格子越しのそちらからじゃ何もできないでしょ?うふふぅ」


『ぐぬぬぬぅ。小娘め、この結界さえなければ今すぐにでもワラワの極大暗黒魔法で永遠の苦しみを与えられるというのにぃ。ぐぬぬぬぅ』

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