第14話「魔神メイドと魔神令嬢」
エデンは今大広間にて一人の少女と対峙している。
美しい茶髪に左右のロールが特徴的なその女は自身をエルザ・クラースと名乗った。
「あなたが新しいメイドかしら?」
「如何にもだ小娘」
「こ、小娘ですって!?」
「申し訳ありませんお嬢様、この方は冒険者なのでメイドとしての教育がまだ―」
「この私に言い訳する気!?」
当主であろう女がメイドのメイに帽子を投げつける。
「全く、これだから平民は嫌なのよ・・・」
「うむ、全くだ」
「え」
「え」
いつのまにか隣に立っているエデンとエルザ。
「あなたの事言ってるのよ、新米メイド!」
階段を上がりエデンを見下ろす様に言うエルザ。
同じく階段を上がりエルザと対等と言わんばかりに真横に立つエデン。
「だ、そうだぞメイ。以後気を付ける様にな」
あまりの態度の悪さに言葉を失うエルザとメイ、しかしエデンが追い出される事はなかった。
「ていうかお前たち人間じゃないだろ」
エデンの突拍子もない言葉に驚く二人。
「メイドの方はアンデッドで、当主の方は下級の魔神と言った所か?」
「よ、よくぞ見破ったわね…じゃああなたには・・・死んで貰うわ!」
エルザは詠唱を始めると黒い球体が現れる。
その球体がエデンに向かって飛んでくるが、エデンは真向からそれを受け止める。
「!?」
エルザは驚愕しているが、エデンの方はまんざらでもない涼しい顔をしている。
「命の危機にならんと自由に出来んと言うのに・・・貴様等では力不足だな」
「あなた、いったい何者なの!?」
エルザがエデンに問いかける。
「私か?私は最強の魔神メイド、エデンだ」
―
「ででで、ああああなたはこれからどうするおつもりですの?エデン・・・さん」
紅茶をすすりながら質問するエルザ。その手はガチガチと震えている。
エデンが上級かそれ以上の魔神と分かったのだから当然の反応だ。
エデンは更に階段を上がり見下ろしながら答える。
「貴様等に仕えてやろう、一週間だけだがな」
「しょしょしょうがないわね、雇って上げてもよくってよ」
まだ手足の震えが止まらなく狼狽しているエルザだが、
最後の砦である顔だけは当主らしく崩すまいと必死に堪えていた。
「メ、メイ、エデンさんにメイドの在り方をしっかり教えてさし上げなさい」
「はいエルザ様、承知致しました」
エルザとは対照的に落ち着いているメイ。
自我が薄いからかアンデッドだからかは謎だが、
その方がやりやすいと思ったエデンはにやりと笑った。
―
「ではお掃除ですが」
「掃除だと?任せろ」
「こちらを使って掃除してください」
エデンが魔法で大掃除する前に、箒とちりとりが渡される。
地味な掃除方法にうなだれるエデンだが、指輪の命令もあり従うしかなかった。
そして小一時間かけて掃除を終えたら次は洗濯だ。
「洗濯だと?任せろ」
「ですから魔法ではなくこちらを使って洗濯してください」
案内されたそこには整備された水道と木製のたらいと洗濯板があった。
地味な洗濯方法にうなだれるエデンだが、指輪の命令もあり従うしかなかった。
「では次は食事ですが」
「食事だと?任せ―」
「食材はこちらで用意した物を使って下さい。後くれぐれも魔法は使わない様に」
「ぐぬぬぬぬ・・・」
地味な指示にうなだれるエデンだが、指輪の命令もあり従うしかなかった。
「では私は当主様の所に行ってきますので、料理の方は任せましたよ」
―
「な、なんなのよこれは・・・」
出て来た料理に驚愕するエルザ。
丸焦げのステーキに、皿に載せただけの野菜、青色に輝く気味の悪いスープ、
自信作なのかエデンはエルザが食すのを心待ちにしている。
「さあ早く食べるがいい、代理のご主人様」
「メ、メイ、まずあなたが食べなさい」
「いえ、私はアンデッドですので食事は必要ありません」
冷ややかにエルザに答えるメイ。
エルザには目の前の劇物を食べるという選択肢しかなかった。
―
約束の一週間後、からやや数日経ってもエデンは戻ってこない。
心配になったクロウは屋敷に向かった。
しかし幾ら呼び鈴を鳴らしても門は開かない。
仕方なく門を蹴破ったクロウは急いで屋敷内へと向かった。
「大丈夫か!」
「うむ、私は特に異常はない―」
「お前じゃない!依頼人の方だ!」
むっとするエデンに見向きもせずエルザとメイの所に駆け付けたクロウ。
待ってましたと言わんばかりにクロウに抱き着いてくるエルザ。
「お待ちしておりましたわ!さっさとあの糞魔神、いえエデンさんを連れて行って下さいまし!」
「あいつ、また何かやっちゃいましたか?」
小声でメイに尋ねるクロウ。
「で、あいつの仕事っぷりはどうでした?」
「掃除・洗濯は一通り教えましたが・・・」
「料理の方ですね、申し訳ない」
色々と察してしまうクロウであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます