第6話「凡人騎士とエルフの女騎士」
ゴブゴブ!
俺はゴブリン退治の依頼を受けていた。
俺はエデンの力を借りる事無く自力で倒していた。
たった数体のゴブリン相手に女の子に力を借りるというのはみっともないからだ。
手を出すなと言われ、暇なので俺から離れたエデン。
その隙をついてかゴブリンの新たな軍団が現れた。
巨体のオーク2体にゴブリンの魔術師、ゴブリンウィザードが2体だ。
さすがに厳しいと思った俺は逃げようとすると、
明後日の方から声が聞こえてくる。
「困ってる様ね!手を貸すわ!」
声の主は金髪のエルフの少女だった。
その美しい髪と端正な顔立ちに俺は見惚れていた。
「たぁ!」
エルフの女騎士は銀の剣を抜くとオークに一太刀を与える。
更に手をかざすと巨大な魔方陣が敵全体を覆った。
「轟け雷鳴!ライトニング!」
高位の雷系範囲魔法ライトニングが敵に決まる。
援軍に来たゴブリン集団は一掃された。
どうやらこのエルフの騎士は魔法剣士らしい。
ゴブっ!
「きゃっ!」
エルフの女騎士がいつのまにか背後に迫っていたゴブリンに捕まる。
完全に蚊帳の俺はブルーノヴァでそのゴブリンを気絶させた。
「どうやら助けられた様ね。私の名前はレイアよ」
「いや、こちらも助かったよ。俺はクロウ、一応騎士だ」
「おい、この女はなんだ」
戻って来たエデンが乱入してきた。
どうやら俺が別の女と話してるのが気に食わない…のか?
「妬いてるのか、エデン?」
「まさか。貴様がどんな女と付き合おうが興味は無い」
「何をしている、先に行くぞ!」
いつの間にかパーティーの先頭を陣取っているレイアは、
リーダー気取りでゴブリン達が待ち受ける森の奥へと進んでいった。
俺も一緒に進まないとだめですよね、これ・・・
俺とエデンはレイアの後を追って先へと進んだ。
森の奥に入るとゴブリン達が暴れていた。
というより逃げまどっていた。
オーク達の反乱である。
「小さきゴブリン達に仕えるのはもうやめダ!」
巨体のオークが次々と叫んでいる。
ゴブリンの長らしき緑色の奴が俺と目が合うと擦り寄って来た。
「貴様達、冒険者だろウ?このオーク共を何とかしてくレ!!」
これは困った。
ゴブリン退治に来たかと思えば、ゴブリンにオーク退治を依頼されてしまったのだ。
「ゴブリン共の依頼など受ける訳ないだろう―」
レイアがそう言い切る前に俺は割り込んだ。
「報酬はちゃんと貰うぞ。後今後この近辺に姿を現すなよ?」
「ワ、ワかっタ」
「よし、その依頼引き受けた!」
魔物から依頼を受けるなどどうかしてる…という顔で俺を見て来るレイア。
しかし効率を考えるとこれでいいのだ。
「よしエデン!オーク共を一掃してくれ―」
「か弱い女の子には手伝って欲しくはない、じゃなかったのか?」
「そんな事を言わずに~頼む!」
俺は指輪をかざすと強制的にエデンに頼み込む。
「仕方ない…ダークブラスト!」
魔神モードになったエデンがオークの群衆に手をかざす
広範囲の暗黒魔法がオーク達を巻き込む(ゴブリン達を含む)
「オイ!ニンゲン、話が違うゾ―」
ギロリとエデンが睨むとゴブリンの長は黙り込む。
これだけのオークを全滅させるんだから多少の犠牲はしかたがない。
そう仕方がないのだ。
「はああああっ!疾風よ!荒れ狂え!」
上級範囲風魔法のサイクロンがオークを、ゴブリンを巻き込んで八つ裂きにする。
「な、仲間のゴブリン達ガ…」
レイアはゴブリンもオークも関係なく一掃していく。
「おりゃああああああああああ!」
俺も負けじと攻撃に参加するが、一体のオークを相手にするのがやっとだ。
なんだか情けなくなってきた…
「な、貴様魔神なのか!?」
高位の暗黒魔法を扱う異形の人型といえば魔神である。
エデンに敵意剥き出しの視線を送るレイア。
「その通りだが?何か問題があるか小娘」
戦闘中にも関わらずレイアは俺にキッとした視線を向ける。
「だ、大丈夫だよ。この娘は俺の従順なメイドだから」
「魔神をメイドに?正気か貴様!?」
レイアは頭のおかしい奴を見たかの様に俺を見ると、
やれやれと言った感じで戦闘に戻った。
―
小一時間してオークの群衆(と少しのゴブリン軍団)は全滅した。
ゴブリンの長も満足…はしていなかった。
当然である、ゴブリン側の被害も甚大なのだから。
しかしレイアとエデンの実力を見た以上、正直な事を言ったら何をされるか分かったもんじゃない。
恐怖に駆られたゴブリンの長は、報酬の銀貨や宝石、貴金属を渡すと、残った群れを連れ、そそくさと退場した。
さっそく報酬を山分けしようとする俺だが、魔物からの報酬等受け取れるかと拒否されてしまった。
俺は遠慮せず報酬を全取りするとその場を後にできなかった。
エデンとレイアが臨戦状態に入っていたのだ。
「さあこい、エルフの小娘よ」
「言われなくともっ!」
銀の剣を抜きエデンに切りかかるレイア、
勝負はレイアの一方的な猛攻だ。
何かがおかしい、エデンならば一瞬で勝負をつけられるはずだが・・・
そこで俺はエデンの真意を読み取る事はできなかった。
一通りレイアの攻撃を受けきると、これ以上は無駄と言わんばかりに、
俺を置いてその場を去ろうとした。
「ま、待ちなさい!まだ勝負はついてないわよ!」
「(エルフの銀の剣ならばこの指輪を壊せると思ったが・・・まあ良い)」
結局レイアは、魔神であるエデンの悪行を心配し、俺達に同行する事になった今後の冒険にもついてくるのだろうか・・・
だとしたら不安だ・・・大丈夫かこのパーティー、と思う俺だった。
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