第5話「凡人騎士と冒険者の塔(40F飛んで100F)」

単なる魔神メイドのゴリ押しでなく連携を覚えた俺達は、

中ボスの待つ40Fへなんなく辿り着いた。

40Fの番人は大魔術師だ、しかもアンデッドの。


「ほう、魔術師の死霊か」


エデンは興味深そうに番人を見る。

いや、正確に言えばその番人の持っている杖だ。

その杖には今まで倒された冒険者達の魂が封じ込まれている。


「よし、今度も妾から行くぞ!フルアーマーモード!」


今度は最初から全身鎧のモードのメイル。

突撃して魔術師に攻撃するが、彼女の攻撃は敵をすり抜けてしまう。


「なっ!」


当然である、相手はアンデッド、つまり幽霊なのだ。

魔法か魔法の武器でなければ攻撃は通らない。

そう魔法の武器なら通じるのである。


「でやあああああああああああああ!!」


メイルの後ろに隠れていた俺は魔術師に一太刀加えた。

その武器はエデンに出して貰ったブルーノヴァ、魔法の武器である。


ギャアアアアアアアアアアア!


魔術師は俺の攻撃で息絶えた。

さあ次は41Fだ、俺とメイルは先の扉へと進ん―


「そうやって死んだフリをして背後から攻撃するんだろう?」


エデンは杖を拾うとその精神エネルギーを吸収する。

杖から拷問でもされた様な魔術師の断末魔が聞こえる。

杖が魔術師の本体だったのか、杖の輝きはどんどん失われていく。

ようやくエネルギーを搾り取るのが終わると杖は砕け散った。


「よし、死んだか…いや既に死んでいたな」


エデンは驚く俺達を尻目に今度こそ本当に41Fへと進んだ。



41Fからは出てくる魔物の強さも段違いになってくる。

エデンの力があれば楽勝だが、メイルと俺と言う足手まといを抱えてどこまで進めるのか疑問が脳裏をよぎった。


「ご主人様よ、面倒だ。頂上まで一気にいくぞ」


「え、ちょっ待って―」


エデンは手を天井にかざすとそこから魔方陣が出て天を貫く光が放たれた。

結果天井に大穴が開いた。

次の番人いるフロアもその次も貫通し頂上まで大穴が続いている。

大穴からは太陽の日差しが差し込んでいる。


「さあいくぞ、チビ姫、ご主人様」


エデンはメイルと俺を抱えると浮遊魔法を唱え一気に頂上へと飛んだ。

そして屋上へとたどり着くと頂上の100Fの番人が立ち塞がっていた。

赤い鱗のドラゴン種、レッドドラゴンだ。


「よく来たな冒険者達ヨ」


人語を操るドラゴン、かなり高位で老齢のドラゴンだ。

ドラゴンは年を重ねる程強く、そして賢くなる。

ただしテレパシーでなく人語を直接喋るという事は、

老齢のドラゴンとは言っても若手の方だろう。


「命乞いは好かン、死んでもらうゾ」


レッドドラゴンは空を飛ぶとこちらに炎を吐いてくる。


「下がっていろ、チビ姫、ご主人様」


エデンは手をかざすと魔術障壁を張り俺達を守護った(まもった)

次にエデンは浮遊魔法を唱えると、レッドドラゴンに立ち向かう。


「ククク、貴様、魔神ガ人間如きニ仕えていルノカ?」


ドラゴンはエデンに対しにたりと笑みをこぼす。

人間に仕える下級の魔神程度に思ったのだろう。

しかしその態度が特級の魔神であるエデンの逆鱗に触れた。


「トカゲ野郎、余程死にたいらしいな!」


激高したエデンは詠唱を始める。


「魔の王の力よ、我が拳に顕現せよ!!!」


エデンの拳に同調した巨大な魔力の拳が現れる。

その拳はレッドドラゴンの巨体を吹き飛ばした。


「50Fまででいいと言ったのに…」


エデンの奔放ぷりにちょっと引いたメイルであった。





エデンは凡人騎士クロウとドワーフの姫のメイルを地上に降ろすと、

少し離れて瀕死のレッドドラゴンに迫った。


「ドラゴンよ、竜の炎には魔法の装備を破壊する力があるらしいな」


「キ、貴様何ヲ―」


「むんっ!」


ドラゴンの火の源である心臓に手を突っ込むエデン。

通常なら火傷どころか一瞬で全身が灰塵と化すが、魔力で身体を防御しているエデンには通じない。

竜の心臓は破壊の瞬間一気に超高温に達したが指輪はびくともしなかった。

そしてレッドドラゴンは絶命した。


「ちっ、やっぱり駄目だったか…」


未だ手にはまっている指輪を見て落胆するエデン。

この呪いの指輪を破壊する方法を見つけなければ。

人間の寿命が短いとはいえ、人間如きに顎で使われる屈辱は許せない。

指輪を破壊したらいつか絶対復讐してやると心に誓ったエデンであった。


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