第644話 地に足のついた人、つかない人

今、広島県の「安芸高田市」が熱い!というと、宣伝文句のように聞こえるが、実際に「安芸高田市」は全国から注目を集めている。というのも、市長である石丸 伸二氏の活動に全国の多くの人が、「良きにつけ」「悪しきにつけ」注目しているからである。


氏の生まれ育った町は、現在「平成の大合併」を経て「安芸高田市」になっている。という事で「安芸高田市」の出身といっても差し支えなかろう。地元の高校から京都大学を経て、三菱UFJ銀行に入行、ニューヨークで9か国を担当する投資アナリストとして活躍されていた。いわゆる「河合事件」における贈収賄で、市長、市議が送検され、「市の危機」に陥ったことで、いわば「義憤」にかられたのかもしれない。自分の生まれ故郷を守る思いで市長選に立候補、当選された。


氏のスマートさは選挙公約にも表れている。スローガンとして「世界で一番住みたいと思えるまち」を掲げ、そのための具体策として、「政治再建」「都市計画」「産業創出」を提案した。そしてそれぞれ、実際に行動を起こしている。もちろんそれぞれが4年程度で完成するものではなく、いずれもその途上ではあるが、氏の思いと行動力は、例えば「ふるさと納税」の納税額などで評価されており、それを抜きにしても、財政の健全化への道筋をつけている。


氏の言動は、たくさんのYouTube動画にupされており、時に質疑応答に際して「冷たい」という印象を受けないわけではないが、極めて筋が通っている。また、市開催のイベントにも積極的に参加しており、そこでは議会での厳しい表情とは異なる、優しい笑顔の市長が、市民とともにイベントを楽しんでいる(もちろん、市開催のイベントなので総責任者は「市長」なのだが)。


氏の政治再建が、議会にどれだけの脅威となっているかは、一つの事例を見れば十分である。「市長の不信任案否決、問責決議案可決」という事実である。「議会」が「これは市長として信任に値しない」と判断すれば、「不信任案を提出、可決」すればよい。「市長不信任案」が可決されると、10日以内に「市長の辞職」または「議会の解散、総選挙」を行なわなければならないのである。一方、「問責決議案」には、何の法的拘束力もない。市長はこの状態を「議員が自分の議席を守ることに汲々としている」と批判したが、全くもってその通りである。市長に文句はつける。でも不信任案を通してしまうと、自分の議席が危ないかもしれない。そのような思惑が丸見えである。


石丸市長は次の市長選について、出馬するか否かを表明していない。もうすぐ任期が終わるので、そういう点でも、興味深いところではあるが、今回氏を取り上げたのは、選挙公約に「具体性」があり、それを実際に「具現化」しつつある、という点である。


その一方で、有名人の市会議員として、先日千葉県八街市の市議に当選した後藤 祐樹氏も話題になった。今回市会議員となられ、その公約が「X」に投稿されたが、これがよく分からない。


<以下引用>

【俺の公約】1回しか言いません。

何一つ街のために成果をあげられない議員ばかりですが、

俺は4年の中で成果を一つもあげられない場合は二度と立候補しません。

成果もあげられずいつまでも議員の席にしがみついているなんて恥ずかしくて出来ません。

その時は八街市民に謝罪します。

今の議員は選挙の時に良い事ばかり言って何十年も議員やって成果の1つもあげられない議員ばかり。


お金の為に議員になりたかった訳でもなく、

単純に街を良くしたいだけ。

それができないのであればいつまでも議員の席に座る必要もなければ辞退して有望な人材に席を譲るべきですよね?


組織票、利権、そんなものの塊で世の中の政治が成り立っている現状に辟易する。


今まで変わらなかった八街市を変えて欲しい気持ちで投票してくれた市民の方達の為にも、

他の議員と同じ事をしていたら永遠にこの街は変わらない。


闘う事が大切。


だからこそ無所属であり、

誰にも縛られず言いたい事を言うし、

大きな力には立ち向かうのみ‼️

<引用ここまで>


言葉の威勢はいいが、「具体性」が無いように思われる。「成果」って具体的に何だろう?「成果を上げる」って具体的にどういうことだろうか?


「単純に街を良くしたいだけ」とあるが、「街を良くする」とは具体的に何を指すのだろうか?彼の中で「良い街」とはどんな街なのだろうか?それを明確に言語化し、支援者たち、市民と共有しなければ、実現はおぼつかないのではないのだろうか?明確な目的地を決めなければ、いくら走り続けてもそれは単なる「迷走」ではないのだろうか?


「何一つ成果をあげられない議員ばかり」と述べているが、これも、「成果」という言葉が明確化されていないため、単なる「個人の感想」の域を出ない。本当に

「何一つ成果をあげられない議員ばかり」なのだろうか?


石丸市長は「批判」ということについて、「どこの」「どういう点」がおかしいのか、ということが「批判」であって、これが明確でない限り正統な「批判」とは言えない、と明言している。


私たち市民が持つ権利を「議員」や「首長」に付託しているわけで、そういう点で、石丸市長と、後藤議員の「考えの深さ」の違いが際立っている。石丸氏は今年41歳、後藤氏は37歳とのこと。年齢の近い政治家であり、今後の動向が気になるところである。

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