第619話 小学校低学年か?
我が家の高校1年生の次男である。かろうじて宿題はするが、基本的に勉強をしない。なんとなれば、まだ小学生の頃の方が勉強をしていた印象である。
いくら「勉強をしよう」と言っても動かないので、一計を案じた、というか、自らの身を削ることにした。
比較的簡単な数学問題集を購入し、毎日数問ずつ出題する。私自身にも同じ問題を用意し、息子と一緒に机を並べて解くことにした。お父さんが問題を用意してくれて、横で同じ問題を解く、という事であれば、さすがに断れまい。
という事で、それを始めて、1か月ほどか。山のように問題を出しても嫌がるだけなので、出版社を忘れてしまったが、「数学Ⅰ・A 基礎問題精講」という問題集を買ってきた。このシリーズでおそらく一番古いのは「英語標準問題精講」、私が受験生時代には「原の英標」と略していたものだ。最近のものを立ち読みしたが、私たちのころとは英文がほとんど入れ替わっていて、もちろん著者も変わっていた。時代を感じた次第である。
閑話休題。数学でこのシリーズは「入門問題精講」「基礎問題精講」「標準問題精講」となっていた。「入門問題精講」はものすごく丁寧に考え方、解説がついていたが、これは「自分で勉強する人用」であった。横で一緒に問題を解く、というスタイルには合わない。「標準問題精講」のレベルまで持ち上げてほしいのだが、あまり難しいとやる気を失ってしまうのは目に見えている。というわけで、「基礎問題」を選択した。
私も頑張っているので、何とか次男も頑張ってくれている。地頭や処理能力は次男君の方が速いので、計算問題の羅列、などでは、あっという間に終わらせてしまう。そういうところは、「頭がいいんだなぁ」と思うのだが、如何せん、答案の書き方、論理的な思考、そういったところが弱いので、ツッコミどころ満載である。
「あんた、答えがあっていても、途中式とか、考え方をきっちり書かなければ、点数ないよ」と言いながら丸付けをしつつ、自分も正しく解けていることにホッとしている。
次男君はもうすぐ中間試験なので、「三角比」の分からない問題を聞いてきた。一つは「三角形の2辺の長さと挟まれた角がわかっている問題で、残りの一片の長さと、わからない二つの角の大きさを求める問題」で、これは余弦定理で残りの一辺を出し、正弦定理で角の大きさを出す、という問題だった。
「これは辺の長さと、角の大きさがわかってるやろ。だから余弦定理で…、ほら、残りの一辺が出たやん。そしたら、正弦定理で…、ここの角が出たやん。最初の角と、ここの角がわかったから、後は180度から引いて、ほら、解けたやん」
驚く次男君。
次の問題は、三角形ABCのそれぞれの角のsinが整数比になっている問題だった。
「こっちは、三角形の角度のsinの値の比がこうなってるんやろ。ほんなら、正弦定理で…ほら、辺の長さの比になったやん。ほんなら、三角形がこう書けるやろ。ほんで、一番大きい角のcosを出すから、今度は余弦定理で…、ほら、解けたやん!」
「父、すごいなぁ」
「使う道具がわかってるんやから、うまいこと使って答えに近づくようにするねん」
と偉そうなことを言いながら、ドキドキしながら問題を解いた。どちらもちゃんと解けてホッとした。高校1年生の時の私なら、解けなかっただろうなぁ、と思いながら、そんなことはおくびにも出さずにしらばっくれた(笑)。
ただ、私が一緒に解かないと勉強しない、なんて、「やってることは小学校低学年か!」と思わなくはない今日この頃である。
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