2023年 7月

第533話 こういう「株主優待」はとてもうれしい。

前回、わずかながらお小遣いで「株式投資」のまねごとをしている、と書いた。株式を保有する目的も、「配当の多い株式を持つことで、銀行よりは『利回りが良い』状態にしたい」ということで、売買益を稼いで、なんてことは考えていない、と書いた。


丁度コロナショックで株式が世界的に「ガターッ!」と落ちたときに、「株を買うなら今だ!」と思って株を始めようとしたのだが、ネット証券に口座を持とうと申し込んで、実際に口座が開設されるまでに6週間ぐらいかかり、狙っていた株式がその間に値上がりをしてしまったことは少し悔やまれる。その他にも、悔やむような失敗はいくつもしている。


後期研修医時代、新婚ホヤホヤの先輩がいた。ぱっと見は遊び人風だが、お金については堅実で、結婚までにずいぶんと貯金をされていたそうだ。院内の看護師さんと結婚されたのだが、確かに清楚な雰囲気の看護師さんだったが、実は「超」お嬢様で、一般の人とは金銭感覚がずいぶんずれていたそうだ。たしかあの頃、私の家は、借り上げ社宅に住まわせてもらい、食費も妻が頑張って、夫婦二人+チビちゃん二人で、3万ちょっとだったと記憶しているが、先輩が「食費、月に10万かかってた…」と少し落ち込んでいたのを覚えている。おいしい食事だったそうだが、今後、子供をもって、ということを考えるとどうしよう、と少し不安になったそうだ。その奥様が「株式投資」に手を出し、先生の貯金が数百万円単位でなくなったらしく、「もう、株はじゅうぶんだよ…」とがっくり肩を落としていたことを覚えている。


帳簿上は赤字になっても、株を売らなければその赤字は確定しないので、基本的に購入した株は長期保有のつもりである。ところが、往々にしてその禁を破り、その禁を破った株について、手放したことを後悔することが多い。


某金属会社。その金属では世界のトップシェアを持っていたが、コロナ禍で、航空機の製造がほとんど止まってしまったため、私でも手が届くぐらいに大暴落。いつかあがるだろう、と1年半ほど保有していたが、株価は上がらず、配当も出ず、「う~ん」と考えていた。そのころたまたま目をつけていた株式があったので、金属会社の株を売ってお金を作り、新たに株を購入した。ところが、株を売って2週間後にウクライナ問題が勃発。金属会社の株は高騰し、現在は、私が売却した値段の4倍近くになっている。そういうような株がいくつもある。「逃した魚は大きい」というべきか、「別れた後で後悔する」というべきか、素人がへっぽこでしていることなので、そんなことは日常茶飯事、なのだろう。


元プロ棋士の方が、「株主優待」で生活をしている、なんて話題になったが、氏の株式資産は4億円ほどあるらしい。それほどの株式を保有しなければ、「株主優待で生活」は無理なのだろう。ということもあり、あまり「株主優待」については期待していない(株主優待のない株式を保有しているのがほとんど)。今年度限りとなったが、某銀行の株主優待は、「その銀行に500万円以上の定期預金をすれば、株主優待として、一般の利息に加えてさらに0.3%(いや、0.1%だったかもしれない)の追加の利息を付ける、というものだった。一言で言って「あほか、そんな金、あるわけないやろ!」である。ということで、私にとっては「株主優待」は「有名無実」のものだった。


閑話休題。明治時代に入り、「電気」というものが人々の生活にやってきた。ご存じの方も多いと思うが、日本で最初にできた水力発電所は、京都市内にある「蹴上発電所」である。ここで作られた電力を使って、日本で初めての路面電車が京都市内に走り始めた。残念なことに京都市営の路面電車は昭和50年代に廃止され、私も父に連れられて1度乗ったことがあるような淡い記憶しかないのだが、この「蹴上発電所」は今でも現役で発電している。


「水力発電」と言えば「ダム」とセットのイメージがあるが、蹴上発電所に「ダム」はない。というのも、これも明治時代につくられた「琵琶湖」の水をダイレクトに「京都市内」に持ってくる「琵琶湖疎水」の水を使っているからである。電車であれ、自動車であれ、京都市内から琵琶湖まで行くには、京都東山と逢坂山を抜けていかなければならないので、高低差がピンとこないのだが、琵琶湖の水面の高さと、京都市内のいわゆる「洛中」と呼ばれる地域との高低差は30~40m程度あるそうだ。


琵琶湖疎水はごくなだらかな傾斜をつけて、琵琶湖から山科を抜けて京都東山の縁となる「蹴上」まで持ってこられる。ここで流れは分けられて、一つは南禅寺の水路を抜けて、「哲学の小道」の流れとなって、京都市の北側に流れていく。もう一つは、この蹴上で、水を落とし、岡崎の辺りから鴨川のそばまで流れていき、そこから鴨川に沿って流れ、伏見の辺りで鴨川(宇治川?)に合流する、という流れである。


蹴上発電所はこの高低差を使って発電をしている。かつては琵琶湖疎水は「水運」のかなめでもあったので、この「蹴上」には「インクライン」と呼ばれる、「船を下の水路から上に引き上げる」ための線路付き荷台があり、その当時は大活躍していたそうである。今は設備だけが残り、桜の名所となっている。


さてさて、先日、私が株を持っている「関西電力」から配当金の報告と、株主総会の結果についての封書が届いた。それは置いておいて、その封筒にとても素敵な株主優待がついていた。


「当社の株を100株以上、3年以上保有している方に対して、抽選で『蹴上発電所』見学ツアーを行なう」というものであった。


まだ京阪電車の京津線の路面電車が三条通を通って、キッツイ坂道を登ったところに「蹴上」の停留所があった小学生のころから、「蹴上発電所」の趣のある建物を見ながら、「今も現役なのかな?中の見学会とか、してないのかな?」と思っていた場所である。


大慌てで抽選に申し込んだ。見学会は平日だが、仕事よりも見学会が大切だ。もし抽選にあたれば、山のように残っている有給休暇を使わせてもらう!


抽選結果は8月に出るそうだが、楽しみである。このような「株主優待」は大歓迎である。これまで、関西電力は「株主優待がない」と思っていたので、思わぬ「優待」にうれしくなった次第である。


ちなみに、「岡崎」から流れる疎水、流れを追って散策すると、途中でレンガ造りの小さな発電所があったりして、レトロ感があり、いい雰囲気である。京都の町は、そういうちょっとしたところに歴史を感じさせるからいいんだよなぁ。

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