第418話 助けるの、難しいよね

沖縄県宮古島で行われたトライアスロン大会で、スイム中に60代男性が心肺停止状態となり、搬送先の病院で死亡が確認された、とのニュースがあった。


4/16 午前7:40頃、大会役員がスイム中の男性の異変に気付き、水上バイクで陸に挙げたが、その時点で心肺停止状態だったそうである。


いつ、だれが、どんな状況でCPA(心肺停止)になるかなんて予想がつかない。CPA患者さんの対応は、研修医時代のERで、たくさん経験したが、圧倒的に「予想できない状態」で発症したものが多かったように記憶している。


水泳の授業中、プールの端まで泳ぎ着いて、普通にプールから上がってきたと思ったら、急にプールサイドで崩れ落ちるように倒れ、CPAで搬送されてきた高校生。パートの仕事での昼休み、「道具を片付けてから休憩室に行くから」と一人作業場に残り、「片付けするには遅いなぁ」と10分後に同僚が作業場を覗くと、CPAとなって倒れていた40代の女性。親子で事業をしていて、「親父、先に降りて、車を回しておくよ」と息子さんが先に車を取りに行き、しばらく待っても父親がおりてこないので、事務所に見に行ったところ、CPAで倒れていた60代の方、などなど。数え上げればきりがない。


正直なところ、スイムでCPAとなれば、蘇生は難しい。CPAとなった人をその場で心臓マッサージ、なんてことはできない(まずその人を船なり何なり、硬い床のある所に引き上げなければならない)。AEDがあっても、全身が塩水で濡れていれば、前胸部をしっかり拭いて水分を取り除かないと、放出された電気は体表面の海水を通って、心臓には十分な電気エネルギーがかからない。


そういう意味でも、命は儚くて、いつ終わりを迎えるのか分からない。


亡くなられた方のご家族の心痛には言葉が出ないが、ご本人は希望して参加した大会で、おそらくそれほど苦しむこともなく旅立たれたのだろうと思われる。それほど苦しまずに旅立たれたのなら、それはそれで悪くはないのかもしれない、と思ったりした。

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