第268話 悩む…。
私が育った家は、6軒長屋の一つだった。長屋ではあるが、持ち家であり、法律的な立て付けは、「区分所有」という、分譲マンションと同じ扱いになるようである。急な階段がついていて、2階に6畳の部屋が2つ、1階は4畳半の部屋、風呂とトイレ(それぞれ独立している)、そして台所、という家だった。小さな家だが、実父が住宅ローンを頑張って払い、手に入れた家である。私が2歳の時に引越しした、と聞いているので、もう築半世紀程度になるか?
私が26歳の時に、医学部進学のため自宅を離れてからは再びそこで暮らすことはなかったが、数年前まで弟夫婦が暮らしていた。実父が亡くなったため相続、という形で今は母が所有しているが、現在は誰も住んでいない状態となっている。
誰も住まない家は、痛みが早いと言われている。それに、高度成長期の終わり、1970年代前半という中途半端な時代に建てられた、しかも長屋である。もういい加減寿命でもある。
隣家が角家となっているのだが、隣家が家を手放す、ということで、うちの実家もどうしようか、という話になった。2件連棟で処分すれば、ある程度の広さの土地となるので不動産屋さんにとっても、新築を立てるなど活用のしようがあるが、別々に手放すと、そのような思い切ったことはできず、土地活用の幅は一気に狭まり、土地の価値も下がってしまう。
家の所有者は母なので、母が何とかすべきなのだが、両親とも別県に暮らしており、実家に一番近いのが私なので、七面倒くさい仕事を急に私に投げてきた。放っておくわけにもいかず、今日は朝から動き始めた。
子供のころから隣家でお世話になった人は、ちょうど我が家から実家に行く道の途中あたりに引っ越されたそうで、途中で待ち合わせをして、実家に戻った。
名代とはいえ、私の持ち物ではないものをすべて私の思い通りにするわけにもいかない。私の実父が購入した家なので、話の筋としては、配偶者であった母、血を引く息子である私と、私のすぐ下の弟(私は3人兄弟の一番上になるが、私、真ん中の弟は私の父の、そして末弟は母と継父の子供である)が権利を有することとなる。
言った言わないの問題が出るのは嫌だったのだが、ありがたいことに今は、スマートフォンのスピーカーモードで、この場にいなくても不動産屋さんからの説明や、母、弟の疑問を直接その場で伝えることができる。なので、弟、母に連絡し、話し合いの時間は一緒にいてもらうようにし、スマホで状況を聞いてもらうようにした。
隣家の方は、引っ越しをされたので家もずいぶん片付いていたが、我が家は片付けも不十分であり、私がどうこう出来るものも多くはなかった。
不動産屋さんとの話し合いで、弟、母の確認を取り、実家の売却方向で話を進めることになった。自宅に置いてあったビートルズのレコードも持って帰ってきた(レコードプレイヤーはないが(泣))。あとは、母と弟に必要なものを持って帰ってもらうだけだが、これは苦労しそうである。悩ましいなぁ…。
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