第244話 やはり、時には重症化するんだよ

昨日の新聞報道では、「インフルエンザよりも死亡リスクの低いオミクロン株」という記事が出ていた。高齢者の死亡率に焦点が当たっていて、60代の方のオミクロン株の死亡率は0.00%(都道府県は忘れたが、3つの県をサンプルとしていると記載)となっていた。


ただ、死亡リスクが0.00%(おそらく小数点第3位くらいに数字が出てくると思うので、いわゆる「ゼロ」ではないことに注意)だとしても、重症化し、集中治療が必要となる患者さんは「ゼロ」ではなかったと記憶している。


そして、今現在、当院でも若年で中等症Ⅱレベルの患者さんを抱えていて、冷や冷やしている状態である。


50代の患者さんで、気管切開、胃瘻造設を受け、他院の訪問診療を受けておられる方。家族の都合で一時的に在宅での療養ができないため、一時的に期間を定めて入院を受け入れた方である。残念なことに院内クラスターで感染したようで、発症後から高熱、低酸素血症が続いている。


昨日の日勤帯終了時に、当直医へ引継ぎのため、居残りをしていた先生が保健所へ連絡、転院が必要であり調整を依頼していた。当直帯にさらに低酸素血症が進行し、当直医が再度保健所へ連絡。翌朝(つまり今朝)に同じ市内のO病院に転送、という事が決まった。私が出勤した時点では、朝のバイタルサイン(意識状態、血圧、脈拍数、体温、呼吸回数(と酸素飽和度))を保健所に報告し、保健所から、O病院への転送時刻の連絡があり、それに従って転院、というところまで段取りが決まっていた。事前情報としてはおそらくAM10時ころ転院だろう、とのことであり、救急車に医師の同乗が必要とのこと、本日のフリーの医師は私、とのことで私が同乗することとなった。


お尻に大きな仕事が待ち構えていると、どうも落ち着かない。10時を過ぎたころに病棟に確認に行ったが、まだ保健所からの連絡はない、とのこと。モヤモヤしながら待つ。


10:30頃、窓口となっている病棟師長に保健所から連絡が入り、「O病院の都合で受け入れが不可能となった。再度病院を調整するので待ってほしい」とのことだった。あらら、私の出勤時には、朝一番で転送、という事になっていたのだが、大どんでん返しだ。まだ転院に時間がかかる、となれば、患者さんの現状評価も必要だろう、と思い、PPEをつけて患者さんの部屋を訪室。意識はしっかりしており、発語はないがこちらの言う事はわかっている様子。熱感は結構強い。胸部聴診では副雑音は目立たない(喀痰の吸引処置直後だったからかもしれないが)。頻拍だが血圧は維持されている。


受け入れ先が「無理」と言われればこちらとしては待たざるを得ない。前日診断がついた後から抗ウイルス薬のラゲブリオが開始されており、そちらとアセトアミノフェンで何とかしのがざるを得ない。


11:30過ぎに、再度保健所から連絡。同じ市内のM病院が受け入れることになったとのこと。こちらの医師の同乗が必要、13時以降の受け入れだが、救急隊との調整を行なっており、救急隊の調整がつき次第再度連絡する、とのことだった。


この患者さんの主治医は、今日は午前訪問診療、午後は時間外外来担当とやはり手が離せず、予定通りフリーの私が救急車に同乗することになった。しばらくして連絡。13:15に救急隊がこちらに来る、と決定した。


そんなわけで、今、転院の時間を待っているところである。こちらを出発するときにはPPEをつけて救急車に乗るが、向こうの病院で、私がつけているPPEを廃棄してもいいのだろうか?とか、そんなことを気にしながら待機中である。

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