第237話 またもや院内クラスターか?(多分そうだろう)

COVID-19 第8波と思われる感染者数の増加は、当初「東高西低」と言われていて、報道で騒がれているほど、現場感覚では増えていない印象だったが、この1週間で、ずいぶん状況が変わったように感じている。とうとう関西にも、そして私たちの周辺にも流行の波がやってきたなぁ、と感じている。


一時は、少し空きが出ていた発熱外来も今は予約がぎっしり埋まり、検査をすればことごとく陽性(先週は時に陰性の人もいたのだが)。そして、スタッフにも感染者が急激に増加している。職場のICT(Infection Control Team:感染制御チーム)の中心となる薬剤課の課長が、息子さんから感染し、発症してしまった。どうしても、医療従事者は「病院」という「感染を持ち込みたくない」場所で勤務すると同時に、一個人として、感染の流行している「一般社会」で一市民として生活せざるを得ない。なので、医療従事者は頑張って感染リスクの低い生活を行なっているのだが、付随する家族が家庭に感染を持ち込んできたら如何ともし難い。


そんなわけで、スタッフがどんどんと家族を介したと思われる感染で休業を余儀なくされていると同時に、家族との面会もなく、外出もしていない長期入院中の患者さんがCOVID-19を発症した。当然のことながら、COVID-19は人から人へ感染していくわけで、その患者さんの感染ルートはどう考えてもスタッフから、と考えざるを得ない。一人が感染した、ということは、その病棟で複数の患者さんが感染している、と考えるべきである。いわゆる院内クラスターが起きている、と考えるべきであろう。


昨日は土曜日だったが、ICTメンバーでいろいろ会議を行なっていたようである。


困ったなぁ。その病棟で、老衰で最期の時を過ごしている患者さんを担当していて、一昨日ご家族に「時間の制限はありますが、希望があれば、面会してもらう時間を作ります。最期の時を穏やかなようにする努力をして、診ていきますね」と説明したばかりだ。その病棟の面会を完全に止めてしまわれると、ご家族に大変申し訳ないのだが…。

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