第184話 J.S.バッハの「リュート組曲 BWV1006a」

高校時代に所属していたクラシックギター部では、ギター合奏の曲として、伝統的に(ただ、明確な理由はないが)バロック時代の曲が選ばれることが多かった。あとは文化祭用の曲としてはポップスなどを演奏していた。


そんなわけで、私はビートルズとサイモン&ガーファンクルをこよなく愛するおっさんであるが、同時に、バロック時代の音楽も好きである。バロック時代の楽器も好きで、通奏低音としてチェンバロ(ハープシコード)が使われているが、その音も好きだ。パイプオルガンも好きだ。バロック時代はアルビノーニ→ヴィヴァルディという華やかなヴェネチア楽派と、スカルラッティなど、少し重厚さのあるローマ楽派があり、バロック音楽の集大成として、J.S.バッハがバロック時代のトリを取っている印象を持っている。


バッハの作品すべてを聞いたことがあるわけではないが、総じてパイプオルガン曲は好きである。有名な「トッカータとフーガ ニ短調」は、その技巧と合わせて、繰り返し聞いている曲である。オーケストラで演奏されることもあるが、やはりこの曲はパイプオルガンでないと、この曲の良さは伝わらないように思っている。「オルガン小曲集」も佳曲が多い。


バイオリン協奏曲もいい感じだと思う。「イタリア協奏曲」だったか?昔チェンバロで演奏されていて、すごくいい感じだったことも記憶している(当時は高校生だったので、高くてCDを買うお金がなかった。購入するCDの序列はビートルズ>サイモン&ガーファンクル>その他)。


ブランデンブルク協奏曲は、輸入CD(価格1000円、消費税なしの時代)で購入した。ブランデンブルク協奏曲第3番第一楽章は引退直前のコンクール(6月にあり、このコンクールで3年生は引退、となる)の出場曲としてクラブでギター合奏をした。この曲もいい曲だが、個人的にはブランデンブルク協奏曲は第5番と第6番が好きである。ブランデンブルク協奏曲の並びは作曲順ではないようで、一番最初に作曲されたのが第6番(なので、バロック時代の古楽器で演奏されている)、一番最後に作曲されたのが第5番(バロック時代の「合奏協奏曲」から、現代につながる「独奏協奏曲」への変化が感じられる)だそうである。

確かに第5番の非常に整理されたスッキリした美しさが好きだし、第6番の何となくモコモコッとした雰囲気は、第5番より古さを感じさせるが、それはそれで好きである。


ずいぶん脱線してしまった。先日、YouTubeをザッピングしていたら、たまたまバッハの「リュート組曲 ホ長調 BWV1006a」をバロックリュートで演奏している動画を見かけた。24分ほどの画像だったが、聞き惚れてしまった。バッハらしい「対位法」と、彼独特の作曲の癖なのだろうか、不協和音の少し混じった切なくてモヤモヤしている旋律から、青空に飛び出すように視界が広がる主題が現れる、というバッハらしい曲目だった。


リュートとギターはルーツは全く異なるのだが、弦楽器としてはパッと見、よく似ている。リュートの弦をどのように数えるのかはわからないので、ギターと同じように演奏時に下の方にある高音弦から、1弦、2弦と数えていくと、バロックリュートは1弦、2弦は1本の弦で、主旋律をひくのに用いられているが、3弦より下は複弦となり、オクターブ違いの2本の弦で成り立っているようである。低音部には共鳴弦(基本的に演奏には使わないが、自然に共鳴することで独自の響きを与える弦)が数本あり、そのような構造となっている。


バッハの曲はいずれも有名な曲なので、ヤマハの楽譜プリントのHPを見ると、やはりリュート組曲もギター譜として編曲された楽譜があり、YouTubeで検索すると、クラシックギター(ガットギター)で演奏されている動画も存在していた。


ギターは普通6弦で構成されており、クラシックギタリストの中にはその6弦+共鳴弦を用いたギターを使う奏者もおられる(ナルシソ・イエペス(「禁じられた遊び」などで有名)は4本の共鳴弦を持つ10弦ギターを弾いている)。一方、アコースティックギター(フォークギター)やエレキギターなど、近代、現代音楽でよく使われるギターには12弦ギターなるものが存在する。これは共鳴弦ではなく、複弦となっている。普通のギターの1弦~6弦のそれぞれの音を担当する弦を1コース~6コース、と呼ぶらしいが、1,2コースは同じ音で2本の弦を調律し、3~6コースはオクターブ違いで調弦する。12弦ギターで有名なのは「ホテル・カリフォルニア」のイントロのアルペジオや「天国の階段」でも使われている。ビートルズも使っているし、S&Gの「エミリー・エミリー」のイントロも美しい。


リュートの調弦が、オクターブ違いの複弦で調律されているので、クラシックギターではなく、12弦ギターでこの曲を弾けば、より原曲に近い印象になるのではないかなぁ?と思った。無理をすれば私のお小遣い貯金で12弦ギターを買えないわけではないが、それよりもいま、ベースギター&ベースアンプを買おうかどうか悩み中であること、腰を落ち着けて練習する時間もないことを考えると、う~ん、と思い留まってしまう。


美しい曲なので弾いてみたい、あまり誰も考えていない12弦ギターでの演奏を試してみたい、と思いながら少し悶々としている。

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