第136話 私の「プチCOVID-19騒動」

木曜日の朝、起床すると長男君が「父、のどを見てほしい」と声をかけてきた(ちなみに子供たちの私に対する呼称は「父」「お父さん」「父ちゃん」とバリエーションがある)。前日の夜からのどが痛かったらしい。舌圧子代わりにティースプーンで舌を押さえ、咽頭後壁、口蓋扁桃を含め、ざっと視認する。特に扁桃腫大はなく、咽頭発赤も見られなかった。


「特に腫れてはないよ」と伝えながら、「まずいことになってきた」と思った。長男君は通学のため、片道1時間半、電車に乗っている。長時間、電車に乗っていること、学校生活を送っていることはCOVID-19のリスクである。ただ、現時点で検査をするのも簡単ではない。発熱はなかった。現時点では診断は困難と考え、原則としてマスクを外さず登校は可(試験前ということもあり)と伝え、私も通常通り出勤した。私は仕事中は、医局ではサージカルマスク、病棟、外来、訪問診療ではフェイスシールド+N95マスクをつけており、こまめに手洗い、アルコールによる手指消毒を行っているので、仮に私が無症候性の感染者としても、周囲への感染をきたすことはないと判断した。


仕事から帰宅し、長男も帰宅。長男に体調を聞くと「のどが痛い。鼻水が出る。咳が出る。熱っぽいが熱はない」とのことだった。長男には食事以外はサージカルマスクを着けてもらい、生活をした。我が家は子供部屋がなく(長男も次男も「部屋はいらない。リビングで勉強する」というので(言わせているわけではない))、寝るまで家族みんなでリビングで過ごしている。そんなわけで、仮に誰かが無意識にCOVID-19を家に持ち込んだら、家族総倒れとなってしまう。私がCOVID-19に感染した時は、明らかに暴露されたタイミングが分かったので、その日から私自身が隔離生活に入ったので、他の家族に移すことがなかった。


金曜日の朝、長男は「少し熱っぽい」と言い始めた。これは本当にCOVID-19を検査しなければならない。次男は無症状なので診断が確定するまでは、と思い通学を許可。妻に検査キット購入をお願いした。私も出勤したが、翌日は土曜日で私が休むと診療体制がぐちゃぐちゃになってしまう。ということで、感染対策委員会に相談。仮に長男が陽性であった場合の診療体制、ワクチン体制を組み立ててもらった。金曜日も私は通常運転。ただ、金曜日は外来などの仕事が少ない日だったので、基本的におとなしくしていた。


金曜日、帰宅すると同時に長男の抗原検査を行う。結果は……、「陰性」。

大急ぎで職場の感染対策委員長の先生に結果を報告。長男にはこれまで通り食事以外はマスクをつけるように伝えた。発症から48時間以上たってからの抗原検査であり、「陰性」の結果は信頼できるものだと考えた。


そんなわけで、土曜日も私は通常業務。誰かに迷惑をかけることなく済んでよかっ

た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る