第118話 ついこの前のことじゃないか…。

子供のころから時々は見ていたのだが、「笑点」を熱心に見るようになったのは、医学生のころからだっただろうか?5代目円楽師匠が司会をしていたころからだと記憶している。5代目円楽師匠が司会をしていた時は歌丸師匠と楽太郎師匠がやりあっているのを見たり、お二人ともひねりの効いた良い回答をされていたので、楽しんでみていたことを覚えている。


5代目円楽師匠が司会を引退され、歌丸師匠が回答者から司会者に移られ、回答者のレベルが下がったのは明確だったが、司会の歌丸師匠と6代目円楽師匠の掛け合いは(隣通しに座っていた時よりは減ったにせよ)楽しませてもらった。歌丸師匠の代わりの回答者として、昇太師匠が入ってこられた。しかし、歌丸師匠と昇太師匠のキャラの違いなのか、ひねりの効いた「うまい!」という回答は明らかに少なくなったのは残念だった。


こん平師匠の代わりに入られたたい平師匠は、たい平師匠の芸達者もあり、芸風は異なれど、たい平師匠が十分にこん平師匠の代わりをしっかり努められている。


歌丸師匠も年齢と病気には勝てず、司会を勇退することになった。次の司会者が誰になるのか、というのが少し盛り上がったが、「円楽師匠を司会にする」というのは悪手だと思っていた。円楽師匠が司会になってしまえば、思わず「うまい!」と声をあげてしまう回答者がいなくなってしまうからだ。なので、昇太師匠を司会にしたのは、「笑点」スタッフのGood Jobだと思った。


歌丸師匠の司会勇退から少し経ったころだったか、円楽師匠が歌丸師匠のお見舞いに行くのを、笑点の前半で流していた。円楽師匠の歌丸師匠への敬愛の思いは画面から伝わってきたのを覚えている。


歌丸師匠が旅立たれ、一周忌の放送、「笑点らしく、笑って歌丸師匠を偲びましょう」という事で第3問が行われ、会場は笑いに包まれたが、最後の最後で円楽師匠が「やい、じじい!早すぎるんだよっ!」と声を上げ、目を潤ませて俯かれたシーンを今でも覚えている。本当についこの前のことだと思っている。


佳人薄命とでもいうのか、そのあと、円楽師匠に数々の病魔が襲ってきた。闘病生活は大変だったと思う。神様は意地悪なもので、円楽師匠より10歳くらい年上の木久扇師匠に、喉頭がんを乗り越え、大腿骨頚部骨折を乗り越えて(どちらも命取りになったり、寝たきりになったりする大病)笑点の舞台に戻ってくることをお許しになったのに、円楽師匠には、笑点の舞台に戻ることをお許しにならなかった。


6代目円楽を継いだのはこの前のことじゃないか。「じじい!早すぎるんだよっ!」と言ったのはこの前のことじゃないか。


6代目円楽師匠のご冥福を心からお祈り申し上げるとともに、円楽師匠のおっしゃられた言葉をそのままお返ししたい。


「やい、じじい!早すぎるんだよっ!」

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